今でも鮮明に覚えている。彼女の・・・の最期を・・・
同じ戦場に居たを守りきれなかった。いや・・・私は彼女に守られた・・・そして、彼女は私の代わりに死んでいった・・・
倒れたを私は抱えていた。そして彼女は私に最後の言葉を掛けた。
「ロイ・・・大丈夫だった・・・?」
は、泣いている私の頬に手を添えた。
「泣かないで・・・ロイ・・・」
「・・・・すまなかった・・・私は・・・」
泣いて謝る私に、は微笑んだ。
「この身が朽ちても・・・ずっと貴方の傍に居るからね・・・私、貴方と逢えてよかった・・・」
弱々しい彼女の声は今にも消えそうだった・・・
「ロイ・・・ありがとう・・・私を愛してくれて・・・ありがとう・・・」
言い終わると私の頬に触れていた彼女の手が、重力に従って地面に落ちて行った。
私は泣くしか出来なかった・・・どんなに悔やんでも、君の笑顔は戻ってこない・・・
私は、笑顔で眠る彼女に最後のキスを送った。
何度、人体練成を考えた事か・・・だが、考えるたびにの声がした。『そんな事しちゃ駄目だよ。』と・・・
何度目かの春を・・・彼女の誕生日を迎えた。
私は、セントラルにある墓地に足を運んだ。の好きな花束を抱えて。
『・大佐 銘・氷の錬金術師』そう記された墓石。私は足を止めしゃがみ込んだ。
「君は今日で二十歳になったんだな・・・出会った時はあんなに幼かったのに・・・」
手に持っていた花束を置き、私は君が眠るこの場所に話し掛けた。
「私も大佐の地位についた・・・君に追いついたよ。」
笑顔で話す私の目には、涙が浮かんでいた。
「・・・君はもう・・・私の傍に居ないんだな・・・」
そう、愛しき君は・・・此の世には居ない・・・もう、あの笑顔に出会える事も・・・
END
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