――エドと会ってから3ヶ月・・・連絡も何にも無いし・・・淋しいなぁ・・・――


14『逢いたい』


東方司令部の執務室。毎日のように繰り広げられるロイとの喧嘩。


「少しは煙草を控えろと何度も・・・」


「何度言いましたけど、私だけではなく、ハボック少尉にも言ったらどうですか!これはれっきとした男女差別です!!」


そんな二人のやり取りをボーっと見つめる一人の少女。大佐の妹、・マスタング少佐。


「いいなぁ・・・あの二人・・・」


「何が良いの?ちゃん?」


さっきまでロイと喧嘩をしていたが、の後ろから現れた。


「驚かさないで下さいよ・・・中佐・・・」


「あ、ごめんごめん。で、何が良いの?」


の顔が少し赤くなった。


「べ・・・別に何でも無いですよ・・・」


の仕草を見て、の顔が黒い笑みに変わった。


「何でもない訳無いでしょう?言いなよ。てか言え。」


半脅しと言っても過言ではない位のの迫力。その脅しには負けた。


「此処じゃぁちょっと・・・」


「じゃぁ場所変えましょ。大佐、ちゃんとティータイムに行って来ます。」


の肩に自分の腕を回し、後ろから降ってくる声など気にしないかの様に執務室から出て行った。




イーストシティにある、有名なカフェテラス。そこに軍服を纏った二人の女性が入ってきた。


「此処の席にしようか?」


そう言うと、は窓際の一番陽が当たる所に陣取った。席に着くとウェイターが注文を取りに来た。


「ホットコーヒー。ちゃんは何にする?」


「私はアイスレモンティーで。」


かしこまりました、とウェイターはお辞儀をし、厨房に戻って行った。


「で、一体何が良いの?」


中佐は何時もお兄ちゃんと居るから・・・」


暫くの沈黙。驚いた表情の


「もしかして・・・ちゃんってブラコン?」


超問題発言。(By,作者)


「ち・・・違います!!」


は立ち上がり否定をした。もちろん店内に響くような声で。店内は何事かと彼女達のテーブルを見ていた。は顔を赤くし、俯きながら腰を降ろす。


「じゃぁ何?」


「中佐は何時も恋人と居れて良いなって思ったんです・・・」


は(何時も間にか)運ばれてきたレモンティーを口に運びながら呟いた。


「あぁ・・・エド君は何時も旅に出てて会えないからね・・・」


もコーヒーを口に運びながら、片手で灰皿を自分の方に持ってきた。カップを置き、煙草を吸おうとした。


「あの・・・中佐・・・」


「ん?何?」


「私も一本良いですか・・・?」


控え気味には呟いた。その言葉にまた目を丸くする


ちゃんって・・・煙草吸うの?」


「はい・・・たまに・・・」


「まぁ、良いか・・・はい。どうぞ。」


ケースから一本煙草を取り出しに渡した。


「ありがとうございます。」


が口に咥えるのを確認すると、は煙草に火をつけてあげた。


「やっぱり、恋人と会えないと淋しいよね・・・」


「はい・・・電話も掛かって来ませんし・・・」


エドは、旅を始めてから一回も電話を掛けてきた事が無い。


「愛されてるか不安なんですよね・・・」


「確かにね・・・でも、ロイみたいに浮気癖が凄いのもどうかと思うけど。」


タラシの大佐。東方司令部ではそんな噂が充満している。


「それもそうですね。」


恋の話が段々と、日々の恋人に対する愚痴に変わっていった。


「もう、こんな時間だね・・・もうそろそろ戻ろうか?」


時計を見れば、司令部を出てから一時間はたっていた。灰皿も彼女達が吸った吸殻で山のようになっていた。


「そうですね。」


そう言うと、彼女達は店から領収書を貰い(司令部の名前で)、司令部へ帰っていった。




「只今戻りました。」


彼女達が執務室に入ってきたと同時にリザの声がした。


ちゃん。丁度良かった。貴女に電話よ。」


「電話?誰から?」


頭を傾げながら受話器を受け取った。


「もしもし?」


『あ、か?』


「エド!!」


突然の電話の相手に驚いた


『明日、報告書出しにそっちに向うから。』


「え?それだけの用件?」


『これだけじゃ悪ぃかよ?』


「いや・・・今まで電話掛けて来てくれた事一度も無かったから・・・」


『電話したぞ。イーストシティ行く度に。でも、何時も大佐が出るんだよな〜〜。「は今仕事で忙しいのだ。」とか言って・・・』


受話器を持ちながら横目でロイを睨む。『後で、切り刻んでやる』と、心に誓った。


「エド・・・明日はずっと一緒にいようね・・・」


『あぁ。じゃぁ、また明日な。』


「うん。じゃぁね。」


受話器を戻し、そのままロイの座る席まで殺気を立てて歩いた。


「お兄ちゃん・・・・」


誰にでも見えるような、赤い焔を身に纏いながら座るロイを見下ろした。


「な・・・何だ・・・?」


彼女の姿を見て怯えるロイ。


「エドから電話何回かあったみたいだね・・・」


「あ・・・あぁ・・・・ι」


彼は悟った。『殺される』と・・・


「覚悟は・・・出来てるよね・・・?」


彼女は両手を合わせた。


「はい・・・ι」




翌日。報告書を届に来たエドが見た物は、包帯だらけのロイの姿だった。
この一日を有効にエドと居られるでした。



FIN