私がある組織のアジトに奇襲を掛ける前日、貴方は必死で私を止めた。
「止めるんだ!!少佐!!」
「そんな事言われても、もう決定した事です。早めに彼らを止めなければ、街の安全は保障できません!!」
此処数週間続いているテロ攻撃・・・軍人が目的らしいが、街の人たちも犠牲にした無差別殺人。
「だが・・・君が行かなくても・・・・」
「私も軍人です。大丈夫ですよ。ご心配無く。」
「・・・」
彼が私を呼ぶ名を変えた・・・この瞬間、私達は上司と部下の関係ではなく、恋人同士になれる。
「ロイ・・・本当に心配しないで。大丈夫だから。」
私はそう言いながらロイを抱きしめた。
「でも、私は心配だ・・・君が殺されるかもしれないと・・・・」
「じゃぁ、約束して。」
「約束?」
私は右手の小指をロイに差し出した。
「私が危なくなったら助けに来て。」
ロイの顔が少しだけ優しい微笑みに変わった。そして、自分の右手の小指を私の小指に絡めた。
「約束する。だが、も一つ約束してくれ。」
「何?」
首を傾げる私を、ロイは切ない顔で抱きしめた。
「絶対死ぬな。それが、私との約束だ。」
「勿論。こんな上司、置き去りにしてたまるもんですか。」
私は満面の笑みで答えた。ロイも安心したのか、奇襲の許可を出してくれた。
でも・・・その約束は守られる事が無かった・・・
思ったより敵が強くて、正直梃子摺った。私の身体には幾つもの傷。そして、足元には無数の死体。軍人と敵の屍・・・そして赤く染まる床・・・
「よお・・・軍人さんよ。もう終わりか?」
不適に笑うテロの頭。殺される!!そう悟った。
「女に銃を向けるのは趣味じゃねぇが・・・死んで貰う。」
銃弾が私に向けて放たれた。思わず目を瞑った。
「!!!」
ロイの叫び声が聞こえた。目を開けて見ると彼は私の前に居た。
「ロイ・・・・?」
血塗れで倒れるロイ。目の前が真っ白になった。無我夢中でロイの持っていた銃を取り、銃弾が無くなるまで敵に向かって打った。
蜂の巣とはこの事を言うのだろうか・・・血塗れになった男は、そのまま床に倒れた。
「ロイ!!!」
私は目の前で倒れているロイを抱き上げた。
「すまない・・・・助けに来るのが遅れてしまった・・・」
弱々しい彼の声・・・私は必死に首を振った。
「そんな事無いよ!!」
治療系の錬金術を少しだけ心得ていた私は、必死にロイの傷口を塞ごうと頑張った。徐々に塞がる傷口。
「・・・すまない・・・」
彼の声が凄く悲しげで、辛そうに聞こえた。
「私なら大丈夫だから。」
数分、私は錬金術を使った。彼の傷口は綺麗に塞ぐ事が出来たが、私の出血の量が激しすぎて、そのまま意識を手放した。
気が付いたらそこは真っ白な天井。恐らく病院だろう。
「気が付いたか?」
「ロイ・・・」
「まだ寝てろ。傷が痛むだろう?」
起き上がろうとする私を、彼は心配した。
「大丈夫。これぐらい。」
「全く・・・私の事ばかり心配しないで、自分の身体も心配してもらいたいな・・・」
溜め息混じりのロイの声。私は苦笑するしか出来なかった。そんな私を彼は優しく抱きしめてくれた。
「君が生きてて本当に良かった・・・」
「ロイ・・・」
「今度無茶な真似をしたら、今度は消し炭にするからな。」
本気なのか冗談なのか解からないロイの声。思わず笑ってしまった。
「じゃぁ、また無茶したらロイが助けに来てね。」
笑いながら私は言った。彼の顔の笑顔だった。
「その前に・・・私との約束を守って貰おうか?」
そう言うと、ロイはポケットから小さい箱を取り出した。その中に入っていたのは、綺麗な紫水晶の指輪。
「今回の事件の解決で、君は中佐になった。君との約束を果たす日だが・・・」
昔、ロイと約束をした事・・・『私が大佐になったら結婚しよう。』
その条件に、私は『じゃぁ、私が中佐になったらね』と付け加えた。
「・・・君の答えは?」
私は静かに頷いた。そして彼は私に優しいキスをくれた。
数ヵ月後、退院した私は彼との結婚式を挙げた。
FIN
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