ロイが夢に見たのはイシュバール殲滅戦の時の事。
泣き叫ぶ人。逃げ惑う人。無抵抗の人。罪無き人々を殺した自分。
自分の焔で焼いた。
「・・・夢・・・」
夢から覚め、ロイはベットから起き上がった。
額に張り付く髪を手で退け、汗でびっしょりになったシャツを脱ぎ捨てた。
「・・・シャワーでも浴びてくるか・・・」
変えのシャツを手に持ち、バスルームへ向った。
シャワーを浴び、リビングで寛ぐ。
「まだ3時か・・・」
リビングに置いてある時計を眺め、ソファーに腰を降ろした。
「私はこの手で、何千という人の数を殺した・・・」
右手を天井に翳しながら呟いた。
「この罪は何時までも消える事は無い・・・」
「お兄ちゃん?何してるんだ?」
「・・・」
リビングの扉の向こうにはが立っていた。
「もこんな時間に何しているんだ?」
「俺は喉が渇いたから水飲みに来たの。」
そう言ったの額とシャツが汗に濡れたいた。
「悪い夢でも見たのか?」
「やっぱりわかった?もう汗べとべと。シャワーでも浴びようかな・・・?
お兄ちゃんも何か嫌な夢でも見たみたいだね。髪濡れてるって事は・・・シャワー浴びた後?」
「まぁな・・・」
冷蔵庫の中からペットボトルを出し、は中身をいっきに喉に押し込んだ。
「お兄ちゃんはどんな夢?」
「どんなって・・・殲滅戦の時の事さ・・・は?」
「俺は・・・父さんと母さんが死んだ時の事。
あの時の事は今でも鮮明に思い出せる・・・」
手に持っていたペットボトルを冷蔵庫の中に戻し、ロイの隣に腰をかけた。
「俺あの時の記憶曖昧だけど、この事だけはしっかり覚えてる。」
「私もだ。」
「お兄ちゃんが非番の日で、久しぶりに家族四人で出かけたんだよね・・・」
「そうだな・・・中央広場に行った途端、銃撃戦が始まったんだよな・・・
軍人でもいざって時に役に立たないものだよ・・・」
「その上、両親を殺した奴等を殺して、株を上げちゃうんだもな・・・皮肉なもんだよ・・・」
両親が打たれた後、ロイは錬金術で焼死体を作った。
「しかも、はで人体錬成をするしな。」
「はははは。失敗に終ったけどね。でも、それでよかった気がする。」
少し悲しげな表情を浮べ、は俯いた。
「お兄ちゃんもあんまり考えこんじゃ駄目だぞ?」
「わかっている・・・」
「さてと・・・俺はシャワーでも浴びて寝るかな・・・」
「・・・」
立ち上がった時に、ロイはの腕を掴んだ。
「どうしたの?お兄ちゃん?」
が振り向いたと同時に、彼女の腰に腕を回し抱き締めた。
「お兄ちゃん?」
「少しだけ・・・このままでいさせてくれ・・・」
「・・・汗臭いけど・・・いいよ。」
ロイの頭を優しく撫でる。
「もう・・・軍の命令だろうがなんだろうが、罪の無い人を殺すのは沢山だ・・・」
「だから上に行くんだろ?」
「あぁ。大総統になってこの国のあり方を変える。絶対に。」
「俺はしっかり下からサポートするから。上だけを目指してね。お兄ちゃん。」
何の返事も無い事を不審に思い、身体を少しだけ離しロイの顔を見る。
「・・・寝てるのかよ・・・ι起きろよ、ロイ兄。」
揺さぶっても起きないロイに溜め息を吐く。
「仕方ない・・・部屋まで運ぶか・・・」
ロイを背中におぶって、は彼の部屋に運んだ。
「全く・・・並みの人よりも力あるっても、流石に重いや・・・」
ベットに横にさせ、は呟いた。
「・・・今度は良い夢見なよ。ロイ兄。」
ベットから腰を上げようとした時、の視界がぶれた。
「へ?」
目の前に広がったのはロイの着ていたシャツの色。
「・・・マジですか〜〜〜?」
しっかりと抱き締められて身動きが取れない。
「・・・馬鹿兄貴・・・
・・・お互い、良い夢が見れると良いな。」
目を瞑りながらは呟いた。
おまけ
朝。
「・・・は?」
自分の腕の中で眠っているを見詰め、ロイが呟いた。
「えっと・・・私は何を?」
昨夜の事をまったく覚えていないロイ。
「zzzzZZZZ・・・」
慌ててるロイを横目に、は夢の世界に居た。
FIN
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