――今でも忘れていない・・・あの日の事を・・・
今でも夢に見る・・・あの日の事を・・・――


18『夢のあと』


ロイが夢に見たのはイシュバール殲滅戦の時の事。
泣き叫ぶ人。逃げ惑う人。無抵抗の人。罪無き人々を殺した自分。
自分の焔で焼いた。


「・・・夢・・・」


夢から覚め、ロイはベットから起き上がった。
額に張り付く髪を手で退け、汗でびっしょりになったシャツを脱ぎ捨てた。


「・・・シャワーでも浴びてくるか・・・」


変えのシャツを手に持ち、バスルームへ向った。




シャワーを浴び、リビングで寛ぐ。


「まだ3時か・・・」


リビングに置いてある時計を眺め、ソファーに腰を降ろした。


「私はこの手で、何千という人の数を殺した・・・」


右手を天井に翳しながら呟いた。


「この罪は何時までも消える事は無い・・・」


「お兄ちゃん?何してるんだ?」


・・・」


リビングの扉の向こうにはが立っていた。


もこんな時間に何しているんだ?」


「俺は喉が渇いたから水飲みに来たの。」


そう言ったの額とシャツが汗に濡れたいた。


「悪い夢でも見たのか?」


「やっぱりわかった?もう汗べとべと。シャワーでも浴びようかな・・・?


お兄ちゃんも何か嫌な夢でも見たみたいだね。髪濡れてるって事は・・・シャワー浴びた後?」


「まぁな・・・」


冷蔵庫の中からペットボトルを出し、は中身をいっきに喉に押し込んだ。


「お兄ちゃんはどんな夢?」


「どんなって・・・殲滅戦の時の事さ・・・は?」


「俺は・・・父さんと母さんが死んだ時の事。
あの時の事は今でも鮮明に思い出せる・・・」


手に持っていたペットボトルを冷蔵庫の中に戻し、ロイの隣に腰をかけた。


「俺あの時の記憶曖昧だけど、この事だけはしっかり覚えてる。」


「私もだ。」


「お兄ちゃんが非番の日で、久しぶりに家族四人で出かけたんだよね・・・」


「そうだな・・・中央広場に行った途端、銃撃戦が始まったんだよな・・・
軍人でもいざって時に役に立たないものだよ・・・」


「その上、両親を殺した奴等を殺して、株を上げちゃうんだもな・・・皮肉なもんだよ・・・」


両親が打たれた後、ロイは錬金術で焼死体を作った。


「しかも、で人体錬成をするしな。」


「はははは。失敗に終ったけどね。でも、それでよかった気がする。」


少し悲しげな表情を浮べ、は俯いた。


「お兄ちゃんもあんまり考えこんじゃ駄目だぞ?」


「わかっている・・・」


「さてと・・・俺はシャワーでも浴びて寝るかな・・・」


・・・」


立ち上がった時に、ロイはの腕を掴んだ。


「どうしたの?お兄ちゃん?」


が振り向いたと同時に、彼女の腰に腕を回し抱き締めた。


「お兄ちゃん?」


「少しだけ・・・このままでいさせてくれ・・・」


「・・・汗臭いけど・・・いいよ。」


ロイの頭を優しく撫でる


「もう・・・軍の命令だろうがなんだろうが、罪の無い人を殺すのは沢山だ・・・」


「だから上に行くんだろ?」


「あぁ。大総統になってこの国のあり方を変える。絶対に。」


「俺はしっかり下からサポートするから。上だけを目指してね。お兄ちゃん。」


何の返事も無い事を不審に思い、身体を少しだけ離しロイの顔を見る。


「・・・寝てるのかよ・・・ι起きろよ、ロイ兄。」


揺さぶっても起きないロイに溜め息を吐く。


「仕方ない・・・部屋まで運ぶか・・・」


ロイを背中におぶって、は彼の部屋に運んだ。


「全く・・・並みの人よりも力あるっても、流石に重いや・・・」


ベットに横にさせ、は呟いた。


「・・・今度は良い夢見なよ。ロイ兄。」


ベットから腰を上げようとした時、の視界がぶれた。


「へ?」


目の前に広がったのはロイの着ていたシャツの色。


「・・・マジですか〜〜〜?」


しっかりと抱き締められて身動きが取れない


「・・・馬鹿兄貴・・・
・・・お互い、良い夢が見れると良いな。」


目を瞑りながらは呟いた。




おまけ

朝。


「・・・は?」


自分の腕の中で眠っているを見詰め、ロイが呟いた。


「えっと・・・私は何を?」


昨夜の事をまったく覚えていないロイ。


「zzzzZZZZ・・・」


慌ててるロイを横目に、は夢の世界に居た。




FIN