俺がセントラルに来た1ヶ月後、と偶然再会した。


23『ゴメン』


「ジャン・・・」


彼奴の目は驚いた様に目を見開いた。当たり前だった。俺も同じように驚きを示しているのだから。


「久・・・ぶりね・・・」


「あぁ・・・そうだ・・・な・・・」


今度に会ったら言おうと思ってた事が一杯あった。でも、何故か頭の中は真っ白で、思考回路がショートしている。


「私・・・ね・・・今度ここの勤務になるんだ・・・」


本日2度目の驚き。"ここの勤務"・・・それは中央司令部を指しているからだ。


「そう・・・なんだ・・・」


ぎこちない会話。話が先に進まなくて俺は苛立っていた。今すぐにでも抱き締めたい・・・だが、今の俺にはそんな資格は無い。


「ジャン・・・今暇かな?」


「ん?まぁ・・・暇っつたら暇だな。」


「じゃぁ、少し話さない?家で良ければ・・・・」


俯き顔でが言った。俺はどう反応して言いか解からず頭を掻いた。


「嫌なら良いよ。じゃぁね。」


がそのまま去ろうとした。俺は思わず彼女の手を掴んでいた。


「ジャン・・・?」


手を掴んだものの何を話して良いのか解からなかった。


「俺も話したい事があるんだ・・・」


思わずこんな事を口に出していた。




司令部から程近いのアパート。家の中は広く、昔と同じような温かさがあった。


「ごめんね。引っ越して来たばかりだから片付けてないんだ。」


「いや。別に平気。」


俺はリビングにあるソファーに腰を降ろした。俺の特等席。


「コーヒーでいい?」


「何でもいい。」


はキッチンに向かい、コーヒーを煎れはじめた。


「はい、どうぞ。」


間もなく、俺の前にコーヒーカップが置かれた。


「サンキュ。」


一口飲んだ。は何時もは俺の隣に座るはずなのに、敢えて真正面に座った。当たり前と言えば当たり前だけど・・・


「そういや、俺に話って何だ?」


の家に呼ばれたのは話があるからだった事を思い出し、彼女に聞いた。


「ジャンと久しぶりに会えたからお茶でもと・・・」


は苦笑しながら自分の前髪を触った。


「本気で言ってるのか?」


の癖。場が悪かったり嘘を付くと必ず自分の前髪を触る事だった。


「嘘付いても見え見えなんだよ。お前のその癖、わかってるからな。」


「・・・実は・・・ね・・・」


は俯いたまま話し始めた。


「来月の頭に軍の収集が掛かったんだ・・・」


「え・・・?」


「戦争・・・だって・・・」


一瞬俺の頭の中は真っ白になった。が戦争に?確かに銃の腕前はホークアイ中尉と同じくらいだ。武術だって・・・


「中央に移動になったから、ジャンに逢えるかなって思って・・・別れたのに変だよね・・・逢いたいって思っちゃって・・・」


の目に涙がたまっていた。


・・・」


「それと、もう一つ知らせがあったの・・・」


今にも泣きそうな顔を上げ、笑顔を作り俺を見た。


「私ね・・・今月まだアレが来てないんだ・・・」


「へ?」


アレが来てない?マジですか?


「さっき病院に行って来た・・・5週目だって・・・」


俺は困惑した表情をした。はそれを見て苦笑した。


「大丈夫。ちゃんと堕ろすから。」


『堕ろす』その言葉は聞きたくなかった。愛しいとの子供・・・別れ話を切り出したのは俺だ。そんな風に言う権利は無い。


は本当にそれで良いのか?」


思わずこんな事を口にしてしまった。俯いたまま、何も話さない


・・・?」


「・・・・・・たく・・・・・・・ない・・・・」


「え?」


「堕ろしたくない!!だってジャンとの子供だもん・・・でも・・・一人で育てる勇気がないの・・・・」


は泣き出してしまった。俺はの傍に行き、そっと抱き締めた。


「ジャン・・・?」


「・・・悪かった。」


「何でジャンが謝るの?」


「全部俺が悪いんだ・・・」


俺は別れた後に思っていた事を全部の話した。


「俺、自信が無かったんだ・・・俺が中央に異動になったらお前と遠恋になるだろう?それが凄く不安で・・・・」


「ジャン・・・」


「でも俺、凄く後悔した。お前と別れて・・・だから今日逢えた事凄く嬉しい・・・」


本当は別れたくなかった。それをに伝えた。


・・・結婚しないか・・・?」


「え・・・?」


抱き締めていた腕を少し緩めると、不思議そうな顔でが覗いていた。


「今、軍に結婚の話と子供の話をすれば・・・収集は無くなる。だから・・・」


「ジャン・・・」


「俺は、お前が戦争に行くのは嫌だ。だから・・・」


「ありがとう。」


の腕が背中に回り、俺を力強く抱き締めた。


「それは・・・返事として受け取ってもいいのか?」


「うん・・・宜しくお願いします。」


俺の胸に顔を埋めてはそう言ってくれた。


・・・上向け。」


「何?」


上を向いたの顎を掴み、俺はキスをした。


「ジャン・・・///」


顔を真っ赤にさせるがとても愛しくて、俺はまた抱き締めた。


「絶対離さない・・・何があっても・・・」


「うん・・・」



 俺は何があってもだけは離さない。絶対に。




Fin