「ジャン・・・」
彼奴の目は驚いた様に目を見開いた。当たり前だった。俺も同じように驚きを示しているのだから。
「久・・・ぶりね・・・」
「あぁ・・・そうだ・・・な・・・」
今度に会ったら言おうと思ってた事が一杯あった。でも、何故か頭の中は真っ白で、思考回路がショートしている。
「私・・・ね・・・今度ここの勤務になるんだ・・・」
本日2度目の驚き。"ここの勤務"・・・それは中央司令部を指しているからだ。
「そう・・・なんだ・・・」
ぎこちない会話。話が先に進まなくて俺は苛立っていた。今すぐにでも抱き締めたい・・・だが、今の俺にはそんな資格は無い。
「ジャン・・・今暇かな?」
「ん?まぁ・・・暇っつたら暇だな。」
「じゃぁ、少し話さない?家で良ければ・・・・」
俯き顔でが言った。俺はどう反応して言いか解からず頭を掻いた。
「嫌なら良いよ。じゃぁね。」
がそのまま去ろうとした。俺は思わず彼女の手を掴んでいた。
「ジャン・・・?」
手を掴んだものの何を話して良いのか解からなかった。
「俺も話したい事があるんだ・・・」
思わずこんな事を口に出していた。
司令部から程近いのアパート。家の中は広く、昔と同じような温かさがあった。
「ごめんね。引っ越して来たばかりだから片付けてないんだ。」
「いや。別に平気。」
俺はリビングにあるソファーに腰を降ろした。俺の特等席。
「コーヒーでいい?」
「何でもいい。」
はキッチンに向かい、コーヒーを煎れはじめた。
「はい、どうぞ。」
間もなく、俺の前にコーヒーカップが置かれた。
「サンキュ。」
一口飲んだ。は何時もは俺の隣に座るはずなのに、敢えて真正面に座った。当たり前と言えば当たり前だけど・・・
「そういや、俺に話って何だ?」
の家に呼ばれたのは話があるからだった事を思い出し、彼女に聞いた。
「ジャンと久しぶりに会えたからお茶でもと・・・」
は苦笑しながら自分の前髪を触った。
「本気で言ってるのか?」
の癖。場が悪かったり嘘を付くと必ず自分の前髪を触る事だった。
「嘘付いても見え見えなんだよ。お前のその癖、わかってるからな。」
「・・・実は・・・ね・・・」
は俯いたまま話し始めた。
「来月の頭に軍の収集が掛かったんだ・・・」
「え・・・?」
「戦争・・・だって・・・」
一瞬俺の頭の中は真っ白になった。が戦争に?確かに銃の腕前はホークアイ中尉と同じくらいだ。武術だって・・・
「中央に移動になったから、ジャンに逢えるかなって思って・・・別れたのに変だよね・・・逢いたいって思っちゃって・・・」
の目に涙がたまっていた。
「・・・」
「それと、もう一つ知らせがあったの・・・」
今にも泣きそうな顔を上げ、笑顔を作り俺を見た。
「私ね・・・今月まだアレが来てないんだ・・・」
「へ?」
アレが来てない?マジですか?
「さっき病院に行って来た・・・5週目だって・・・」
俺は困惑した表情をした。はそれを見て苦笑した。
「大丈夫。ちゃんと堕ろすから。」
『堕ろす』その言葉は聞きたくなかった。愛しいとの子供・・・別れ話を切り出したのは俺だ。そんな風に言う権利は無い。
「は本当にそれで良いのか?」
思わずこんな事を口にしてしまった。俯いたまま、何も話さない。
「・・・?」
「・・・・・・たく・・・・・・・ない・・・・」
「え?」
「堕ろしたくない!!だってジャンとの子供だもん・・・でも・・・一人で育てる勇気がないの・・・・」
は泣き出してしまった。俺はの傍に行き、そっと抱き締めた。
「ジャン・・・?」
「・・・悪かった。」
「何でジャンが謝るの?」
「全部俺が悪いんだ・・・」
俺は別れた後に思っていた事を全部の話した。
「俺、自信が無かったんだ・・・俺が中央に異動になったらお前と遠恋になるだろう?それが凄く不安で・・・・」
「ジャン・・・」
「でも俺、凄く後悔した。お前と別れて・・・だから今日逢えた事凄く嬉しい・・・」
本当は別れたくなかった。それをに伝えた。
「・・・結婚しないか・・・?」
「え・・・?」
抱き締めていた腕を少し緩めると、不思議そうな顔でが覗いていた。
「今、軍に結婚の話と子供の話をすれば・・・収集は無くなる。だから・・・」
「ジャン・・・」
「俺は、お前が戦争に行くのは嫌だ。だから・・・」
「ありがとう。」
の腕が背中に回り、俺を力強く抱き締めた。
「それは・・・返事として受け取ってもいいのか?」
「うん・・・宜しくお願いします。」
俺の胸に顔を埋めてはそう言ってくれた。
「・・・上向け。」
「何?」
上を向いたの顎を掴み、俺はキスをした。
「ジャン・・・///」
顔を真っ赤にさせるがとても愛しくて、俺はまた抱き締めた。
「絶対離さない・・・何があっても・・・」
「うん・・・」
俺は何があってもだけは離さない。絶対に。
Fin
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