――あの人が東方に来て一ヶ月・・・
俺の瞳にはあの人しか映さない・・・――


26『欲望』


・マスタング・・・二十歳という若さで、中将まで上り詰めた国家錬金術師。そして、ロイの妹。そんな彼女に恋をしたハボック。


「将軍。今日はもう、お帰りになられたら・・・」


「私は大丈夫だ。心配をかけてすまないね。」


此処一週間、司令部に篭りっきりの。日中夜問わず、仕事をする彼女を労わり、リザは自宅に帰る事を進めたが、彼女に断られた。


「中尉。君はもう帰っても構わない。後は私とハボック少尉でどうにかする。」


「ですが・・・」


「女性が夜遅くに出歩くのは危険だ。今日は家に帰ってゆっくりしたまえ。」


「解かりました・・・では、お先に失礼します。」


リザは渋々帰り支度を始めた。


「ハボック少尉。」


「何スか?」


「将軍に温かいコーヒーと、仮眠を取らせてあげて・・・」


「解かりました。」


そう言い残すと、リザは執務室から出て行った。
彼女に言われた通りに温かいコーヒーを入れ、に差し出した。


「少しくらいは休憩したほうが良いんじゃ・・・」


「大丈夫だ・・・全く・・・忙しい時期に大佐は南方に出向いて・・・大総統も少しは考えてほしいな・・・」


上層部に提出する書類、予算の報告を東方で一番地位の高いがやっているのだ。
ロイと、大総統の話が出て、ハボックの眉間に少しだけ皺が寄った。


「一週間、まとも寝てないんすから・・・少しは休んでください。」


「私は平気だ。さっさと片付けなければ大総統の『ありがたいお話』を聞かされるはめになる・・・」


小一時間聞かされる、大総統の話はたまったものじゃないと、は溜め息を付きながら言った。


「でも・・・」


「・・・・解かった。一時間、仮眠を取ってくる。時間になったら起こしてくれ・・・」


「一時間とは言わず、もっと・・・」


「一時間だ。良いな。」


「・・・・はい。」


そう言うとは専用の仮眠室へと向った。


「ふぅ・・・・」


仮眠室へと入り、ベットに身を沈めた。そして間も無く、睡魔に襲われることとなった。
一方、執務室に一人っきりとなったハボックは。


「将軍は・・・俺の事眼中にないのか・・・」


兄であるロイと、大総統に少し嫉妬を覚えた。


「出来るなら・・・俺のモノにしたい・・・」


(例え・・・傷付ける事になろうとも・・・)


ハボックの中にある欲望の塊が、段々と大きさを増していった。
一時間後、ハボックはを起こすため、仮眠室へと向った。


「将軍、起きてください。時間になりましたよ。」


「ん〜〜〜・・・マース・・・もう少しだけ・・・寝かせて・・・くれ・・・」


その言葉で、ハボックの中の何かが切れる音がした。


・・・」


ハボックは寝ぼけているに多い被さるように抱き付いた。


「な・・・!!!ハボック少尉!!は、離れろ!!」


「嫌だ。」


そう言いながらハボックはの服に手をかけた。


「止めろ!!ハボック!!」


抵抗するの手を頭の上に一纏めにした。


「あんまり抵抗しないで下さい。手荒なマネはしたくないんすよ・・・」


軍服についている紐を外し、の手を縛った。


「こんな事が許されると思っているのか!!」


「煩い。」


「ふ・・・」


騒ぐの唇に自身の唇を当て、彼女の口を塞いだ。口内に舌を進入させた。


「う・・ふぅ・・・」


少し漏れる声が、更にハボックの理性を崩していった。唇を外し、彼はの顔を見た。


「ハ・・・ボック・・・」


顔を少し赤らめ、潤んだ瞳でハボックを見つめた。


「そんなに良かったか?俺のキスは?」


黒い笑みを浮べたまま、ハボックは手を服の中に入れた。


「ひゃ!!」


「ここ・・・こんなに立ってる。」


彼女の膨らみの頂きを指で転がした。


「や・・・めろ・・・」


「まだ抵抗するのか?」


首筋に吸い付き、自分のものだと言う証をつけながら、服を脱がし始めた。


「や・・・」


彼女の抵抗も虚しく、徐々に剥がされていく軍服。


「誰にも渡したくない・・・」


「ハボック・・・!!やめろ・・・!!」


の声を無視し、胸に顔を埋めた。片方の膨らみを口に含み、舌で頂きを刺激した。


「ふ・・・・ん・・・」


声を出さないよう、は自分の下唇を噛み締めた。そんな彼女の行動を見つつ、ハボックは軍服の下に手を伸ばした。


「止めろ!!これ以上は・・・・!!」


「嫌だ。」


一気に軍服と下着を取り去る。危険を感じたのか、彼女は足をばたつかせ、抵抗を始めた。


「本当に・・・これ以上は止めてくれ!!」


彼女の叫びを無視し、ばたつかせる両足を掴み、思いっきり広げた。当たり前の如く、そこは全く濡れていなかった。


「ハボック少尉・・・もう・・・お願いだから・・・・」


は、涙を流しながらハボックに訴えた。尚も彼女の言葉を無視し、昂ぶった己をの中へ押し込んだ。


「いっ・・・!!」


「きつ・・・」


ハボックは自身を動かし始めた。


「う・・・あ・・・」


の声が段々と甘い声に変わっていったのと同時に、最奥から流れる蜜で、自身を滑らかに動かせるようになった。


「気持ちよくなってきたか?」


「あ・・・や・・・ん!!」


淫らな音と声が室内に響き渡った。


「少・・・尉・・・もう・・・」


彼女の理性が崩れ、縋るような瞳でハボックを見つめた。その様子を見た彼は、旋律を早めた。


「あ・・・ん・・・はぁっ・・・!!」


・・・好きだ・・・」


「ハボ・・・ク・・・!!」


「っ!!!」


の達した時の締め付けにより、ハボックも熱を彼女の最奥に放った。




「ハボック少尉・・・覚悟は出来ているのか・・・?」


事情後、上半身だけを起こし、は言った。


「・・・はい・・・」


「何故、私にあんな事をした。簡潔に答えてもらおうか?」


「・・・好き・・・だから・・・です・・・」


途切れ途切れに答えるハボック。そんな彼の行動に大きな溜め息を吐いた。


「普通はやる前に告白するものではないのか?」


「・・・・」


ハボックは俯き、黙ってしまった。


「ハボック。」


ハボックの名を呼び、顔を上げた瞬間、彼の胸倉を掴んだ。


「っ!!」


「覚悟は・・・出来ているのだろう?」


睨み付けるような目でハボックの瞳を見る


「殴るなり、蹴るなりしてください・・・それで貴女の気が収まるなら・・・」


「私を見縊るな。そんな事はしない。」


「は?」


胸倉を掴んでいた手を引っ張り、顔を近づけた。次の瞬間、は触れるだけのキスを送った。


「し・・・将軍・・・?」


「全く・・・私の気持ちも聞いてもらいたいものだな・・・」


手を離し、頭を抱える


「それって・・・」


「私も君の事が好きだ。と言ったら信じて貰えるか?」


「でも・・・俺将軍に酷い事を・・・」


「順序は違えど、気持ちが伝わればそれでいいのではないのか?」


微笑みながらハボックを見つめる


「告白のし直しをしたければ、ちゃんと私に気持ちを伝えてくれ。ハボック。」


「貴女の事が好きです。将軍。」


頬を赤らめながらハボックは言った。


「ま、今回は水に流そう。だが、今度こんな事をしたなら・・・容赦はしないぞ。」


「はい。」


「それと、私の事はでいい。ただし、二人きりの時だけな。」


そう言うと、はハボックに抱き付いた。


・・・愛してる。」


「私もだ。ハボッ・・・いや、ジャンと呼んだ方が良いか・・・」


二人はそのまま抱き合い、睡眠をとった。




翌日、起きた


「ね・・・寝すぎた・・・」


「おはよう・・・


「おはよう。ジャン・・・って仕事がぁ!!!」


まだまだ山のように溜まっている仕事を思い出し、急いで服を着る


「って、貴様!!まだ寝るつもりなのか!!!」


朝の一発と言わんばかりにハボックに鉄拳をお見舞いする


「全く・・・」


そう言って部屋を出ようとする。扉を開けた瞬間、そこに立って居たのは、


「おはよう♪♪」


焔の大佐だった。(笑)


「兄貴・・・何時帰ってきてたんだ?」


「今戻って来たのだが・・・」


そう言ってロイは仮眠室の中を覗いた。そこには上半身裸のハボックが居た。


「ハボック・・・?」


「あ・・・いや・・・これには訳が・・・」


必死に弁解をしようとする


「ハボック・・・これはどう言う事か説明してもらおうか?」


人とは思えない形相を浮べ、仕舞いには発火布を手につけ、ハボックへ近付いて行くロイ。


「た・・・大佐・・・ι」


「どう言う事か説明しろ!!ハボック!!」


「私達、付き合いはじめた。以上。」


簡潔に理由を述べた


・・・それは本当なのか・・・?相手がハボックでも良いのか?」


「私が選んだ相手にケチをつけないで貰いたい。」


冷めた目でロイを見つめる


「・・・ハボック・・・後で私の所に来い。いいな?」


「は・・・はい・・・ι」


そう言い残すと、ロイは仮眠室から出て行った。


「こ・・・怖かった・・・」


「何かあったら私に言えばいい。倍返しにしてやる。」


そう言ったの顔は何処か楽しげな物だった。彼女に対しても恐怖感を抱くハボック。


「取り敢えず、私も仕事を終わらせなければ・・・」


「俺も後で手伝うから。」


「期待しないで待っている。」


そう言うとハボックの頬にキスをし、は部屋を出て行った。


「さ、俺もさっさと大佐の所にでも行って来るか・・・ι」


ハボックの怖い一日はまだ、始まったばかり。




FIN