人造人間との戦いの後、入院したハボックから思わぬ事を言われた。
「・・・ジャン・・・今・・・何と・・・?」
「別れてくれって言ったんだ。」
「・・・・・・解かった。だがこれだけは言わせてくれ。」
ハボックから背を向け、ドアのほうに一歩踏み出した。
「浮気した事は気にしていない。仕様がないと思っている。お互い仕事が忙しいからな。
時間を作れなかった私が悪い。君は・・・治療に専念したまえ。」
そう言っては病室を出て行った。
「・・・?」
ドアの外に居たのはロイだった。彼女の悲しげな横顔を見つめていた。
「ハボック・・・と何かあったのか?」
「に・・・別れてくれと言いました・・・」
ハボックのその一言にロイは怒りを露にした。
ロイは彼の胸倉を勢いよく掴んだ。
「何故だ?!何故そんな事を言った!!」
「これ以上一緒にいても、俺は足手纏いになるだけです・・・俺は彼奴を守りたい。だから自分から手放したんです・・・」
ロイの目をじっと見詰め、淡々と話す。だが、ハボックの目は何処となく悲しいものだった。
「本当にこれでいいと思っているのか?!」
「自分でも解かってます!!でも・・・これしか方法が無いんですよ!!」
今にも泣きそうな悲痛な叫びに、ロイは胸倉を掴んでいた手を離した。
そして、を探す為病室を出ようとする。
「大佐・・・」
ドアノブに手を掛けようとした時、声を掛けられロイは振り返った。
「の事・・・宜しくお願いします・・・」
ロイは何も言わず病室を出て行った。
「・・・此処に居たのか・・・」
が居たのは病院の屋上。そこで、ハボックの愛用していた煙草をふかしていた。
「ロイ兄・・・どうしたのだ?大方少尉から私の事を聞いて探しに来たのだろう・・・」
他人のようにハボックの名を呼ぶ。
ロイの方を向かず、ずっと空を見上げる。
「・・・お前はこれで良いのか?ハボックと別れても・・・」
「良い訳無いだろう・・・だが、少尉が望んだ事だ・・・どうしようもない。」
「諦めが良すぎるな・・・」
頭を抱えながらの隣に行く。
「・・・何故こっちを向かない。」
「ロイ兄には関係の無い・・・っ!」
の言葉が終る前にロイは無理矢理顔を自分の方向に向けさせた。
「目が赤いな・・・泣いていたのだな。」
「煩い。ほっといてくれ。」
素っ気無い言葉と共にロイの手を振り解く。
「泣く位好きなのならば、もっと詰め寄ればいいだろう?『別れたくない』と・・・」
「どういう気持ちでジャンが私に別れを告げたか解かっている!!
だから・・・これ以上は良いんだ!!」
止めていた涙がまたの頬を濡らした。
「・・・だ・・・からっ・・・も・・・う・・・・良いん・・・だ・・・っ」
「・・・」
ロイは泣きじゃくるをそっと抱き締めた。
「自分に正直になれ。強がってないでハボックと本音で話せ。」
「・・・ロイ・・・兄・・・」
「君は上司である前にハボックの彼女だ。気が済むまで言い争って来い。」
「・・・うん。もう一度ジャンと話してくる。」
ロイから身体を離し、は涙を拭いた。そしてハボックの居る病室へと向った。
「世話の焼ける妹と部下だな・・・」
ロイの呟きは風に消えた。
病室の前には来たものの、どうやって話せばいいか迷う。
兎に角病室へ入ろうと、ドアを開けた。
「・・・・・・」
「少し・・・話がある・・・入ってもいいか?」
「あ・・・あぁ。」
今さっきの事を考え、ハボックは困惑していた。
「・・・一応聞いておく。何故私と別れたいんだ?」
「・・・・・・たくねぇから・・・」
「え?」
「足手纏いになんてなりたくねぇんだよ!!俺は・・・お前を守っていきたい・・・っ!!だけど、こんな身体じゃ自分の身を守る事も間々ならねぇ・・・っ!!だから・・・っ」
「ジャン・・・」
は微笑み、ハボックを抱き締めた。
「・・・?」
「私は守られるほど弱くは無い。君は自分の事を考えればいい。」
「でも・・・俺は・・・」
「私を守りたいと・・・私だって気持ちは一緒だ。大好きだからこそジャンを守りたい。」
「・・・俺は・・・」
ハボックの手がの背中に回された。
「やっぱり退役・・・するのか?」
「・・・あぁ。実家の方に戻ろうと思ってる。」
「それに関しては私は口を出さない。ジャンが決めた事だからな。」
「・・・俺の分まで大佐のフォロー・・・頼むな。」
「解かっている。ジャンは早く傷を癒せ。」
「勿論。・・・。さっきの言葉、訂正効くか?」
ハボックは顔を上げ、を見詰めた。
「さぁ、どうかな?」
「意地悪いな・・・」
「冗談だ。まぁ、強いて言うならば・・・『忘れた』とでも言っておこうか?」
「そうきたか・・・」
お互いの目を見詰め、笑いあう二人。
「ジャン・・・こっちが一段落ついたら、会いに行くからな。」
「楽しみにしてるからな。。」
「あぁ。」
お互いの傷を癒すように二人は深い、深いキスをした。
FIN
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