『別れよう。』





理解できなかった。




今、私は何を聞いた?




ジャン・・・ちゃんと説明してくれないか・・・?


27『傷跡』


人造人間との戦いの後、入院したハボックから思わぬ事を言われた


「・・・ジャン・・・今・・・何と・・・?」


「別れてくれって言ったんだ。」


「・・・・・・解かった。だがこれだけは言わせてくれ。」


ハボックから背を向け、ドアのほうに一歩踏み出した。


「浮気した事は気にしていない。仕様がないと思っている。お互い仕事が忙しいからな。
時間を作れなかった私が悪い。君は・・・治療に専念したまえ。」


そう言っては病室を出て行った。


・・・?」


ドアの外に居たのはロイだった。彼女の悲しげな横顔を見つめていた。


「ハボック・・・と何かあったのか?」


に・・・別れてくれと言いました・・・」


ハボックのその一言にロイは怒りを露にした。
ロイは彼の胸倉を勢いよく掴んだ。


「何故だ?!何故そんな事を言った!!」


「これ以上一緒にいても、俺は足手纏いになるだけです・・・俺は彼奴を守りたい。だから自分から手放したんです・・・」


ロイの目をじっと見詰め、淡々と話す。だが、ハボックの目は何処となく悲しいものだった。


「本当にこれでいいと思っているのか?!」


「自分でも解かってます!!でも・・・これしか方法が無いんですよ!!」


今にも泣きそうな悲痛な叫びに、ロイは胸倉を掴んでいた手を離した。
そして、を探す為病室を出ようとする。


「大佐・・・」


ドアノブに手を掛けようとした時、声を掛けられロイは振り返った。


の事・・・宜しくお願いします・・・」


ロイは何も言わず病室を出て行った。




・・・此処に居たのか・・・」


が居たのは病院の屋上。そこで、ハボックの愛用していた煙草をふかしていた。


「ロイ兄・・・どうしたのだ?大方少尉から私の事を聞いて探しに来たのだろう・・・」


他人のようにハボックの名を呼ぶ
ロイの方を向かず、ずっと空を見上げる。


「・・・お前はこれで良いのか?ハボックと別れても・・・」


「良い訳無いだろう・・・だが、少尉が望んだ事だ・・・どうしようもない。」


「諦めが良すぎるな・・・」


頭を抱えながらの隣に行く。


・・・何故こっちを向かない。」


「ロイ兄には関係の無い・・・っ!」


の言葉が終る前にロイは無理矢理顔を自分の方向に向けさせた。


「目が赤いな・・・泣いていたのだな。」


「煩い。ほっといてくれ。」


素っ気無い言葉と共にロイの手を振り解く。


「泣く位好きなのならば、もっと詰め寄ればいいだろう?『別れたくない』と・・・」


「どういう気持ちでジャンが私に別れを告げたか解かっている!!
だから・・・これ以上は良いんだ!!」


止めていた涙がまたの頬を濡らした。


「・・・だ・・・からっ・・・も・・・う・・・・良いん・・・だ・・・っ」


・・・」


ロイは泣きじゃくるをそっと抱き締めた。


「自分に正直になれ。強がってないでハボックと本音で話せ。」


「・・・ロイ・・・兄・・・」


「君は上司である前にハボックの彼女だ。気が済むまで言い争って来い。」


「・・・うん。もう一度ジャンと話してくる。」


ロイから身体を離し、は涙を拭いた。そしてハボックの居る病室へと向った。


「世話の焼ける妹と部下だな・・・」


ロイの呟きは風に消えた。




病室の前には来たものの、どうやって話せばいいか迷う
兎に角病室へ入ろうと、ドアを開けた。


「・・・・・・」


「少し・・・話がある・・・入ってもいいか?」


「あ・・・あぁ。」


今さっきの事を考え、ハボックは困惑していた。


「・・・一応聞いておく。何故私と別れたいんだ?」


「・・・・・・たくねぇから・・・」


「え?」


「足手纏いになんてなりたくねぇんだよ!!俺は・・・お前を守っていきたい・・・っ!!だけど、こんな身体じゃ自分の身を守る事も間々ならねぇ・・・っ!!だから・・・っ」


「ジャン・・・」


は微笑み、ハボックを抱き締めた。


・・・?」


「私は守られるほど弱くは無い。君は自分の事を考えればいい。」


「でも・・・俺は・・・」


「私を守りたいと・・・私だって気持ちは一緒だ。大好きだからこそジャンを守りたい。」


・・・俺は・・・」


ハボックの手がの背中に回された。


「やっぱり退役・・・するのか?」


「・・・あぁ。実家の方に戻ろうと思ってる。」


「それに関しては私は口を出さない。ジャンが決めた事だからな。」


・・・俺の分まで大佐のフォロー・・・頼むな。」


「解かっている。ジャンは早く傷を癒せ。」


「勿論。・・・。さっきの言葉、訂正効くか?」


ハボックは顔を上げ、を見詰めた。


「さぁ、どうかな?」


「意地悪いな・・・」


「冗談だ。まぁ、強いて言うならば・・・『忘れた』とでも言っておこうか?」


「そうきたか・・・」


お互いの目を見詰め、笑いあう二人。


「ジャン・・・こっちが一段落ついたら、会いに行くからな。」


「楽しみにしてるからな。。」


「あぁ。」


お互いの傷を癒すように二人は深い、深いキスをした。




FIN