運命なんて信じなかった。あの人と・・・ジャンと別れてから・・・でも、どうして?今目の前に居るのは、私の愛した・・・愛する人・・・
「ジャン・・・」
「・・・」
行きつけの喫茶店で偶然再会した。元々、軍人と一般人なんてあんまり会わないのに・・・
「偶然・・・だね・・・」
「あ・・・あぁ・・・」
歯切れの悪い会話・・・貴方は苛々してるみたい・・・頭を掻いてるもの・・・
「どうしてこんな所にいるの?」
先月の終わりに、私からジャンを振った。彼の足手まといになりたくなかったから。
「ん、ちょっと視察。街の見回りも俺等の仕事だから。」
そういうと、ジャンは私の前に座った。
「軍人さんがこんな所で油売ってて言い訳?」
「たまには休息も・・・な。今月入ってから休みが無いからな・・・」
このところ何かと物騒になって来たとジャンは話し始めた。普段は仕事の話なんてしないのに・・・
「ティアも気をつけろよ。この頃テロが頻繁に起きてる・・・」
やめて・・・
「お前も巻き込まれないように・・・」
やめて・・・
「お前がもし・・・」
「やめて!!」
私は勢いよく立ち上がった。
「・・・?」
「もう、私とジャンは他人でしょう?私の心配なんかしないで!!」
心配されるのがどれだけ嫌か・・・自分の身ぐらい、自分で守れるのに・・・何時もジャンは心配してるから・・・
「じゃぁね!!」
私はそのまま店の出口に向った。
心配してくれるのはいいの・・・でも、私の所為でジャンの足をひっぱてるのが嫌なの・・・
「あれ?此処って・・・」
何時の間にか私は自宅とは逆方向の裏路地にきてしまった。
「・・・ヤバ・・・」
早く出ようと後ろに足を伸ばそうとした。そしたら誰かに腕を掴まれる感触がした。
「お姉ちゃん・・・こんな所に一人で何してるの・・・?」
ニヤつきながら私に近寄ってくる男。それも三人・・・逃げようとしても後ろにもう一人居た為、逃げ道を塞がれた。
「俺達と遊ばない?良い事してさ。」
ぐいっと腕を引っ張られた。恐い・・・瞬間的にそう思った。頭に浮かんだのはジャンだった。
「ジャン!!」
思わず叫んでいた。
「そこで何してるのかな?」
裏路地の入り口にジャンが立っていた。
「ジャン・・・」
「ヤベ、軍人じゃん!!」
「逃げろ!!」
男達はジャンを見るなり逃げ出した。
「大丈夫か??」
「・・・かった・・・」
「え?」
「凄く恐かった・・・今まで自分の身ぐらい守れるって思ってたのに・・・何も出来なかった・・・・」
私は恐怖の余り泣いてしまった。そんな私をジャンは優しく抱き締めてくれた。
「泣くな・・・大丈夫だから。」
あやす様に私の背中をさすってくれた。それが嬉しくてまた泣き出した。
「ジャン・・・何で・・・私はジャンの事・・・」
「振った・・・そう言いたいのか?」
ジャンは私の方を掴んだ。じっと見てくるジャンの空色の瞳・・・
「俺はに好きな人とか、俺に愛想付かした。そう思ったから解かったって返事をしたんだ。でも、俺は今でもお前の事好きなんだ・・・」
「ジャン・・・ごめん・・・本当はね・・・・私も・・・好きだったよ・・・」
「じゃぁ、何で別れるなんて言い出したんだ?」
「私がジャンの足を引っ張ってるから・・・・迷惑だと・・・思ったから・・・」
涙を堪えながら必死に言葉を紡いだ。
「迷惑なんて思ってねぇよ・・・まったく・・・」
ジャンはまた優しく抱き締めてくれた。
「俺からもう一度言う。付き合ってくれ。」
「・・・・はい・・・」
耳元で囁くように私は返事を返した。
運命なんて無いと思ってた・・・でも、これだけは言える。
ジャン、好きだよ・・・何時までも・・・・ずっと・・・
FIN
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