頑張れ。



「大佐!!やめてください!!」


今日も今日とで、司令室に悲鳴が響く。


「やっぱり君は抱き心地がいいなぁ・・・」


「まったりしてないで離してください!!」


ロイに抱きつかれ、真っ赤になりながら抵抗する少女。・ハボック軍曹。ジャン・ハボック少尉の妹。


「良いではないか。」


「よくないです!!!」


「大佐、そのぐらいにしないとに嫌われますよ?」


「ハボック少尉!!!」


助け舟と言わんばかりに、はハボックの後ろに隠れた。


「少尉〜〜〜・・・助けてください〜〜〜・・・」


「よしよし。泣くな泣くな。」


涙目になるをあやす様にハボックは頭を撫でた。


「っ!!何故私が駄目で、ハボックは平気なのだ!!」


「当たり前です!!少尉は私のお兄ちゃんなんだから!!
少尉!!お昼食べに行きましょう!!」


そう言うとはハボックの腕を掴んで食堂の方へ歩き出した。




――食堂。


「いい加減にしてもらいたいよ・・・大佐のセクハラ・・・」


「アレはアレでスキンシップ見たいなもんだろ?
ま、お前の場合は顔を赤くしながら拒否るから誤解もあるんだけどな・・・」


「どんな?」


「『お前が大佐の事が好き』ってやつ。知らなかったのか?」


その言葉を聞いて、の顔が一気に赤面した。


「私にはちゃんと好きな人が居るの!!」


「食堂で叫ぶな・・・」


更に赤面し、縮こまった。


「ジャン兄は知ってるでしょ・・・私の好きな人・・・」


「あぁ。豆大将だろ?」


「誰が米より小さいミジンコどチビか〜〜〜!!!」


食堂の入り口から全力で走ってくるエド。


「お、大将。居たのか?」


「今豆って言ったのハボック少尉だろ!?」


「正解。よく聞こえるなぁ〜〜〜。」


ワーワーギャーギャー騒ぐエドをある意味尊敬の眼差しで見つめるハボック。


「??どうしたんだ?」


真っ赤になりながら俯くにエドは話し掛けた。


「え・・・えっと・・・何でもないよ・・・。あ、わ・・・私・・・仕事あるから・・・戻るね。」


さっさと話して、は食堂から出て行った。


「・・・少尉・・・」


「あ?どうした?」


ハボックはお茶を飲もうと口に含んだ。


「俺って・・・に嫌われてるのか?」


エドの言葉にハボックはお茶を噴き出した。


「うわ!!少尉!何すんだよ!!」


「いや・・・んで、何で大将はそう言う風に思うんだ?」


はたから見たらの行動は、好きな人との接し方がわからず赤面する女の子。
それをエドがこういう風に取るのは、彼が恋愛に対し鈍感だからだろう。


「何か俺を避けてるみたいな・・・話し掛けてもすぐにどっかに行っちまうんだよなぁ・・・」


「・・・大将・・・もしかしての事好きなのか?」


ハボックの言葉に赤面するエド。


「いや・・・そんなんじゃ・・・」


(こりゃ・・・両思いなんだなぁ・・・よし、此処は一つ兄の俺が一肌脱ぎますか・・・)


こんな事を思いながらハボックは席を立ち上がった。


「大将、これから暇か?」


「いや、今から大佐の所に行って報告書提出しないと・・・」


「よし、んじゃ行きますか。」


エドの腕を引っ張り、強制的に司令室に連れ込んだ。




「只今戻りました〜〜〜。」


「大佐!!いい加減にしてください!!!」


ハボックがドアを開けた途端、中からの悲鳴にも似た叫びが聞こえた。


「いいではないか。」


「よく無いです!!私には好きな人が居るんですよ〜〜〜〜!!!」


その言葉にロイの動きが止まった。


「それは私の事か?」


「違うに決まってるじゃないですか!!兎に角、私に抱きつくのはやめてください!!!」


「嫌に決まっているだろう?」


そう言って、ロイは腕の力を強めた。


――プツン・・・


の中で何かの糸が切れた。


「まずい・・・大佐、早くから離れてください!!」


何か嫌な予感がしたのか、ハボックはロイに向って叫んだ。


「は?何でだ?」


意味がわからないと言うような表情をするロイ。
次の瞬間、はロイの腹部に肘内をかました。


「・・・大佐・・・私再三言いましたよね・・・?『やめてください』って・・・」


腹を抱え蹲るロイを見下ろす


「・・・・・・?」


「言 い ま し た よ ね ?」


言葉を切りながらは怒気を含め言った。


「は、はい!!」


の変わりように怯えるロイ。


「一応、誤解は解かないといけませんよね?
私の好きな人はエドワード君ですから。貴方の事は上司としか考えていません。」


「え・・・い・・・今・・・」


エドの声を聞き、は彼の方を向いた。


「え・・・エドワード君・・・」


さっき言った事を思い出し、は赤面した。


「いや・・・えっと・・・その・・・」


オドオドする


・・・頑張れ。」


ポンとの肩を叩くハボック。


「エドワード君・・・えっと・・・私・・・」


は俺の事嫌いじゃなかったんだ。」


「あ、当たり前です!!私は・・・貴方の事が・・・好き・・・です・・・」


彼女が言い終わると、エドはを抱き締めた。


「俺もお前の事が好きだ。付き合ってくれないか・・・?」


「・・・勿論です。」


「・・・場所を考えてくれないか・・・?」


蹲っていたロイが言葉を発した。


「べ・・・別に良いだろう!!」


真っ赤になりながらロイに噛み付くエド。


「良かったなぁ、。両思いで。」


「うん。」


瞳を涙で濡らしながらハボックに微笑を向ける。


「・・・・・・」


「何ですか?大佐?」


「・・・・・・今日は帰って良いぞ。」


「え・・・?」


「鋼のとデートでも楽しんで来いって言っているんだ。たまにしかこっちに来ないからな。」


「ありがとうございます!!」


満面の笑みで大佐に向かい敬礼をする




後日。


「大佐!!抱きつかないでって何回言ったらわかるんですか!!」


「いいではないか。やはり抱き心地がいいなぁ・・・は・・・」


「マッタリしないでください!!セクハラで訴えますよ!!!」


相変わらず抱き付き魔なロイと、日々格闘を繰り広げるだった。




FIN