「此処がエドの故郷なんだ。」
エドの機械鎧の修理の為、リゼンブールに来た三人。
「兄さんはすぐに機械鎧壊すから・・・」
「一年に一回は整備しないといけないんだからしょうがないだろう!!」
と旅を始めてから早一年。彼女は初めてこの地に足を踏み入れた。
「でも、また機械鎧壊したってウィンリィが知ったら、スパナだよね。」
「ぅ・・・」
過去の経験を思い出したのか、エドは苦い顔をした。
「ウィンリィってどんな人なの?」
「どんなって言っても・・・
兎に角機械オタクで、暴力女で、可愛げの無い・・・」
「誰が可愛げのない機械オタクですって!!!」
叫び声と共にスパナが飛んできた。
「ぐわっ!!!」
「エド!!大丈夫!!」
「てめ!!ウィンリィ!!俺を殺す気か!?」
スパナが当たった頭を擦りながら、目の前に居る少女を睨んだ。
「大丈夫よ。手加減してるから。」
「大丈夫なものか!!!」
「エド・・・落ち着いて・・・」
治療系の錬金術を研究しているは、エドの傷口を治した。
「サンキュ。。
ホント、ウィンリィとは大違い。」
「エド・・・ι」
またスパナが飛んでくるなんて考えずに、言葉を発するエドには呆れた。
「煩いわね!!どうせ私は可愛げないわよ!!」
の予想は的中。本日二度目のスパナ攻撃。
そしてエドは屍となった。(笑)
「エド・・・一言多いのよ・・・」
呆れながらはまた治療を始めた。
一番大切なのは?
「へ〜〜〜。こんな馬鹿の彼女なんだ。」
ロックベル家についた四人は少し旅の話をしていた。
「でも、豆の彼女なんて大変でしょう?」
「誰がミジンコどチビか〜〜〜!!!」
「大人しくしてよ!!!」
機械鎧の整備をしているウィンリィに更に殴られ、項垂れるエド。
「何か良いですね。幼馴染って。」
「そうかな?エドはこんなんだから何時も大変よ?
来るたんびに機械鎧壊してるし。」
「今日は壊してねぇだろ。」
「珍しくね。」
ギャ〜ギャ〜と騒ぐ二人。そんな二人を見て、は悲しい顔をした。
「エド、ちゃんと背伸びてるんだ。」
「成長期だからな。」
「ん〜〜〜・・・足のほうは少し作り直さないと駄目だね・・・」
「どのくらい掛かる?」
「3日位かな?ま、暫くはスペアで我慢してよね。」
「ん。」
居たたまれなくなったのか、は席を立った。
「?」
「ちょっと、散歩してくるね。」
「え、一人で大丈夫なのか?」
「子供じゃないんだから大丈夫よ。」
出て行く背中を見つめるエド。
「・・・」
その夜、は眠れなくて、表に出ていた。
「星・・・綺麗・・・」
「やっぱりそう思う?」
後ろから声がし、は振り返った。
「ウィンリィさん・・・」
「ごめんね、驚かせちゃって。」
「いえ・・・」
の隣に腰を下ろす。
「ウィンリィさんはエドの事好きなんですか?」
「は?」
の突然な言葉にウィンリィは目を見開いた。
「いえ・・・なんだかエドと話してるウィンリィさん、とても優しい瞳してたので・・・」
「そんな事無いわよ。私達、ただの幼馴染だから。」
「本音を言ってください。」
真剣な眼差しでウィンリィを見る。
「・・・それを言ったところで何になるの?」
「それは・・・」
「ま、いっか。女同士だし。
確かにエドの事好きだよ。でも、今はさんが居るから・・・」
ウィンリィは俯き、悲しい顔をした。
「ウィンリィさん・・・」
「私の変わり・・・とは言わないから、エドの事大事にしてね。
彼奴、苦しい事は自分の中に溜め込むからさ。」
顔を上げたウィンリィの顔は、何か吹っ切れた様な表情だった。
「でも、エドはウィンリィさんの事も大切に思ってると思いますよ?」
「え?」
「じゃなゃ、あんなに優しい顔しないもん。」
ウィンリィと話している時のエドの顔を思い浮かべた。
「私と話してる時と何か違う・・・ううん。多分一緒。
大切な人を見つめる瞳。エドはそんな感じだった。」
「そう・・・かな?」
「多分ね。エドは貴女の事、大事に思ってる。
ちょっと悔しいけどね。」
苦笑交じりには言った。
「でも、エドの彼女はさんでしょう?
エドの目にはさん以外の女性は映ってないよ。」
「そう・・・だと・・・いいなぁ・・・」
「そうだって。
ほら、あれ。」
そう言って、ウィンリィは二階の窓を指差した。
「エド、さんの事心配してるみたいだから。
早く戻ったほうが良いんじゃないかな?」
「うん・・・そうだね。」
は立ち上がり、草を掃った。
「ウィンリィさん、色々話せて楽しかったですよ。」
「私も。おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
は家の中へと入っていった。
「エド?」
「ウィンリィと何話してたんだ?」
「大した事は話してないよ。」
その場を去ろうとするの腕を引き寄せ、抱き締めた。
「エド・・・?」
「彼奴に何言われたかしらねぇけど、俺の彼女はお前だから。
何があっても守るって決めたんだからな。」
「分かってるって。」
エドの背中にそっと腕を回す。
「でも、無茶はしないでね。
私だって国家錬金術師。自分の身は自分で守れる。」
「んな事わかってる。でも・・・」
エドは腕の力を強めた。
「俺は嫌なんだ・・・お前が傷付くのが・・・」
「エド・・・」
「だから守りたいんだ・・・」
は片手でエドの鼻を摘んだ。
「・・・?」
「私の言った事もちゃんとわかってよ・・・
私だってエドが傷付くのが嫌なの。だから一緒に旅をしてるんだよ?
守られるだけじゃ嫌なの。私もエドの事守りたいんだから・・・」
は再び、エドの背に腕を回した。
「分かってるって。」
三日後、エドの機械鎧の修理が終わり、ロックベル家を後にしようとした。
「さん!!」
家から数m離れた時にウィンリィが声をかけた。
「ウィンリィさん・・・」
「機械鎧壊したら、ボコボコにしても構わないからね!!」
「あはははは。」
苦笑を浮べる。
「それとエド!さん泣かせたら、只じゃおかないわよ!!」
「俺がを泣かす訳ないだろう!!」
その言葉を聞いたウィンリィは大きく手を振った。
「行ってらっしゃい!!」
「おう・・・」
エドは照れ臭そうにウィンリィに背を向け、片手を上げた。
「・・・さんの事、大切にしなよ・・・」
ウィンリィの呟きは誰にも聞こえなかった。
FIN