気持ちはつたわる


「大佐、居るか?」


執務室のドアが開いた。 ドアの外に居たのは『鋼の錬金術師』エドワード・エルリックと、その弟、アルファンスだ。


「あ!エド!」


エドを見るなり飛び付くように彼に抱きついたのは、大佐の妹、・マスタング少佐だ。彼女も国家錬金術師だ。二の名を『風の錬金術師』。彼等のやり取りを見て、嫉妬の焔を燃やすのは、東方司令部の大佐、『焔の錬金術師』ロイ・マスタングだった。


!鋼は私に用があって会いに来たのだ!それ以上、鋼に近づくな!って、私は何を・・・?)


どうやらロイは、妹のに嫉妬をしたらしい。だが、ロイはその事に気付かず、混乱している。一旦深呼吸をし、冷静さを取り戻した。


少佐、鋼は私に用があるみたいだ。そのくらいにしたらどうだ?」


思っていた事と大して変わり無い事を口にするロイ。


「解かりました〜〜〜・・・」


「大佐、正しくはに用があるんだけど・・・少し借りていいか?」


エドの言葉にロイの思考が停止した。理解するのに数秒の時間が掛かった。


「だが、少佐は仕事中・・・」


「別に構いませんよ。少佐は自分の仕事を終えていますから。」


ロイの言葉に割って入ったリザ・ホークアイ中尉。


「じゃぁ、大佐。すぐ戻りますので。」


「あ・・・あぁ。言って来い。」


エドとが出て行った後、ロイの仕事は何一つ片付かなかった。




「エド、私に用って何?」


司令部にある中庭で、エドとは座って話していた。


「なぁ、。大佐ってさ・・・・」


「お兄ちゃんがどうかした?」


プライベートの内容ではロイの事を『お兄ちゃん』と呼ぶ


「大佐って、ちゃんと付き合ってる奴っているのかな・・・?」


その言葉だけでエドの気持ちを理解した


「もしかして、エドってお兄ちゃんの事・・・」


「んなわけねぇだろ!!大佐の事好きだなんて断じて・・・・!!」


大慌てでの言葉を否定するエド。


「んなに隠さなくたって良いよ。てか、その慌て様見ただけで解かるし。」


エドの顔は真っ赤になっていた。バツの悪そうな顔で彼は話を続けた。


「変・・・なのかな・・・?やっぱり。男好きになるなんて・・・」


「そんな事無いよ。好きになった相手がたまたま男だったて事でしょう?」


は真剣な顔でエドに話し掛けた。彼も真剣にの話を聞いた。


「好きならちゃんと気持ち伝えないと駄目だよ?」


「だけどよ・・・・」


「そんな暗いのエドらしくないよ?何時もなら、『当たって砕けろ!!』のエドが。」


何とかエドを何時も通りにしようと、は考えた。


「あ!そうだ!」


「何だ?」


何か思いついたようには声をあげた。


「私に良い案があるの。あのね・・・・」


はその提案をエドに話した。


「でも・・・・それって・・・」


「良いから、私に任せて。」


そう言うとは走って中庭を出て行った。


「あ、。兄さんとの話は終ったの?」


「うん。アルにも手伝って貰いたいんだけど・・・」


「何を?」


はエドに話した事をそのままアルに告げた。


「兄さんも遂に決心したんだ。」


「そうなんだ。だからエドの方宜しくね。私はお兄ちゃんの方をどうにかするから。」


「解かったよ。。」


アルはそのまま中庭に走って行った。も執務室に走って行った。




「お兄ちゃん!」


「マスタング少佐、仕事場では大佐と呼べと・・・・」


「いいからちょっと来て!」


はロイの腕を引っ張り、誰も使っていないであろう仮眠室に向った。


「何だ?一体・・・こんな所に連れて来て・・・」


「お兄ちゃん、エドの事好き?」


唐突にそんな事を聞かれ、少し戸惑うロイ。


「何故私にそんな事を聞くんだ?」


「好きじゃないの?」


真剣な表情のにロイは鼻で笑うように言った。


「確かに、部下としての思いはあるが、好きという気持ちは・・・」


「じゃぁ、私がエドと付き合っても何も言わないね?」


誘導尋問の如く、はロイに言った。


「それは・・・」


「お兄ちゃん・・・素直になりなよ・・・私の前までそんな嘘が通じると思ってるの?まったく・・・」


呆れ顔の。ロイは溜め息を付くと近くのベッドに腰を降ろし話し始めた。


「お前には敵わないな・・・・」


「何年妹やってると思ってるの?お兄ちゃんの行動見てたら解かるよ・・・私がエドに抱きついたらそれを剥がそうと必死だもん。」


ロイは何時も通りに冷静に言っているはずが、にはまったく効果が無かったらしい。


「この気持ちを好きと言い表していいものか・・・・私自身も解からないのだよ・・・・・」


俯き顔なりながらロイは話した。


「鋼の事を考えると、何故か他の事が手につかなくなったりして・・・」


「やっぱり・・・恋だね・・・」


腕組をし、壁に寄り掛かりながらはロイに言った。


「お兄ちゃん、このままの関係で良いの?エドに『好き』って気持ち伝えないままで良いの?」


「だが、鋼は男だし・・・私だって・・・」


「何時もの自信満々な大佐はどうした?伝えないで後悔するのお兄ちゃんだよ?」


妹の心配はロイに伝わったのか、彼はベットから立ち上がり部屋を出ようとした。


「お兄ちゃん?何処いくの?」


「鋼に会いに行く。私の気持ちを伝える。」


ドアノブに手を掛けようとした所で、によってドアを塞がれた。


・・・」


「行く必要なんて無いよ。エド。」


この部屋には誰も居ないはずなのに、彼女はエドの名を呼んだ。の声が聞こえたのか、窓際のベッドの隙間からエドが出てきた。


「鋼の・・・!!」


「大佐・・・今の言葉本当か?」


真っ直ぐにロイを見つめるエド。ロイは少しずつ彼に近づいた。


「本当だ。私は鋼の事が好きなんだ。」


「大佐・・・・」


は自分が邪魔と感じたのか、静かに仮眠室から出て行った。ドアの前ではアルが立っていた。


「アル、見張りご苦労様。」


アルの肩を叩くと、アルはの方を向いた。


「どう?上手くいった?」


「バッチリ。後は二人の問題だからね・・・」


「まったく・・・世話が焼ける兄さんだよ。」


「お互い大変ね。手のかかる兄を持つと。」


二人は笑いながら少し話をした。


「あ〜あ・・・私もエドの事狙ってたのに・・・」


「そうだったの?」


「まぁ、いいや。大佐の仕事が片付かなくなると、こっちまで残業になるし。」


兄の為に身を引いてやったというような感じで彼女は言った。


「アル、デートしよっか?」


「え!!」


突然のの申し出に慌てるアル。


「なぁに?私じゃ嫌?」


上目使いでアルを見つめる


「そんな事ないよ!!」


アルは照れを隠すため次の言葉を捜そうと唸っていた。そんな彼の行動を見ていたは、アルの手を取った。


「さぁ、早く行こう。ねV」


そのままアルはに引き摺られるように司令部を後にした。




同じ日に二組のカップルが誕生した。遠距離恋愛なんて何のその。何時までもお幸せにw




FIN