冬に近付いて来た秋の午後。イーストシティも段々と寒くなって来た時の話。
「ホント、寒くなってきたね。」
ホットココアを啜りながらは呟いた。
「機械鎧の調子はどうなの?」
「ん?良好。って言いたい所なんだけど、寒くなると付け根が痛くなってくるんだよなぁ・・・」
右肩を擦りながらエドは呟いた。
「あんまり無茶な事はしないでよ?」
「わかってるって。の為にも程々に、な。」
ニッカと笑うエドに安心したのか、は彼の隣に腰を下ろし肩口に頭を乗せた。
「?」
「こうしてると暖かいでしょう?」
「そうだな。寒い時はくっついてる方が暖かいもんな。」
エドは彼女を膝の上に乗せ、後ろから抱きしめた。
「お前、体温高いな・・・熱でもあるんじゃないか?」
「え?そうかな?」
そう言って自分の額を触る。
「自分じゃ分からないや。」
「ちょっといいか?」
エドはの襟元から手を突っ込み、首筋を触った。
「ちょ・・・!!エド!?」
「熱い・・・やっぱり熱あるじゃねーかよ!!
服着替えて寝ろ!!」
そう叫ぶとエドはを抱えると、寝室に向かった。
「私なら大丈夫だっ・・・ムグッ」
の言葉を遮る様に、エドは体温計を彼女の口に入れた。
「大丈夫かどうかは体温測ってからな。」
暫くして、エドは体温計を見た。
「38.6℃・・・よく平気でいられたな・・・」
「そんなにあったんだ〜〜。」
間の抜けたの言葉に、エドは溜息を吐いた。
「軍部の方には俺が連絡しといてやるから、はゆっくり寝てろ。」
「うん。」
エドは冷たいタオルを彼女の額に乗せた。
数分後、は寝息を立てた。
「まったく・・・お前も無茶すんじゃねぇよ・・・」
エドはの頬を撫でながら呟いた。
数時間後、は目を覚ました。
「あれ?エド・・・?」
エドが見当たらず、ベッドから起き上がりキッチンの方へ向かおうとする。
「あれ、起きたんですか?」
ドアから顔を覗かせたのはアルだった。
「あれ?アル。何で此処に居るの?エドは?」
「僕はの看病を頼まれたんです。兄さんは、ちょっと用事があるみたいで司令部の方へ向かいました。」
「え?だって、報告書は昨日提出した筈でしょう?」
の言葉に下を向くアル。
「何かあったの?」
「実は・・・兄さんに口止めされていたんですが・・・軍部に連絡した所、運悪く大佐が出たらしくて・・・
の変わりに、仕事をすると言って・・・」
アルの言葉を聞いたはベッドから立ち上がった。
「ちょっと、さん!!まだ熱が・・・」
「アル、そこにある体温計取って。」
アルの言葉を遮るように、は言った。
「あ・・・はい。どうぞ。」
受け取った体温計を口に入れ、体温を測る。
「36.5℃・・・平熱に戻ってる。」
は傍に掛けてあった軍服に袖を通した。
「私は今から司令部に行くけど・・・アルはどうする?」
「熱が下がったからって、ダメですよ!!安静にしてなきゃ・・・」
「エドに仕事押し付けるなら、私は倒れても行くよ?」
の強い視線に負けたのか、アルは溜息をついた。
「分かりました。僕は宿の方に戻りますので・・・
くれぐれも無理をしないでくださいよ?」
「分かってる。」
笑顔でアルに返事をすると、は司令部まで全力で走って行った。
「大佐。」
息を切らし、が執務室に入ってきた。
「!!お前、何で・・・」
入って来たに驚くエド。何故か軍服着用。
「エドに仕事押し付けるくらいなら、私がやるよ。」
そう言ってはロイの座るディスクまで歩いた。
「大佐、熱が下がったので、この時間からでも職務に付かせて頂きます。」
「来た所悪いが、君は帰って休め。」
「は?」
疑問符を頭に浮かべながらはロイを見た。
「ついでに鋼のもつれて行ってくれ・・・
君のようにコーヒーの一つも入れてくれないし、私に煩くつっかかってくるのでな・・・」
「それは大佐が仕事しねぇのが悪いんだろう!!」
席から立ち上がり、エドは叫んだ。
「それに熱が下がったといっても、病み上がりだ。そんな君に無茶な事をさせたくない。
明日も休みにしておく。ゆっくり身体を休めなさい。」
「大佐・・・ありがとうございます。」
は感謝の意味を込めて、ロイに敬礼をした。
「じゃ、エド帰ろうか?」
「あぁ。
大佐、が居ないからって仕事サボるなよ?」
「分かっている。」
ロイの言葉を聞いた二人は、東方司令部を後にした。
「何か・・・少し熱いな・・・」
そう言うと、エドは軍服の一番上のボタンを外した。
「エド・・・ごめんね。私の所為で迷惑掛けちゃって・・・」
俯きながらはエドに謝った。
「別に良いって。俺だって一応軍属だし。
の役に立てたしさ。」
「ありがとう。エド。」
「お前こそ、熱が下がったからって全力で走って来たんだろう?
息切らしてたしさ。大丈夫なのか?」
エドは彼女の額に手を当てた。
「少し熱い・・・熱上がってきたな。
早く帰って寝ろ。」
「うん。
あ、エド。」
「何だ?」
「軍服・・・似合ってるよ。」
少し頬を赤らめながらは言った。
「そ・・・そうか?」
「うん。でも私はいつものエドの格好の方が好きだなぁ・・・
よく合うサイズがあったよね・・・」
「誰が軍服のサイズも合わない程の豆粒どチビかぁぁぁぁぁ!!!」
「そこまで言ってないから落ち着いて(汗)」
よく聞こえるなぁと呟きながら、はエドを宥めた。
「兎に角、ありがとね。エド。」
「もう無茶な事すんなよ?」
「エドもね。」
「分かってるって。」
こうして東方の夜は更けていった。
fin
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