一応上司である、ロイの所に向かう為、東方司令部に足を踏み入れた。
「あ、エド。」
「・・・」
エドの彼女、を見て少しばかり心が和んだのか彼は微笑した。
「エドにも召集命令出たんだ。」
「もって・・・もしかしても・・・?」
何も言わずにはコクンと首を立てに振った。
「私は仕様がないよ。軍人だから・・・」
彼女の階級は大佐。そして国家錬金術師。二つ名は水火(すいか)。
文字通り、水と炎を扱う錬金術師。
「そっか・・・」
和んだのも束の間、エドは俯いてしまった。
「あ、ロイ・・・」
目の前から現れたのは上司であるロイ。
「水火の・・・鋼の・・・」
二人を見たロイの顔も少し悲しげだった。
「・・・今回の戦いの話をする・・・付いて来い。」
そう言って歩き出すロイの後ろを二人は付いていった。
「今回は割と小規模な戦いになるだろう。犠牲者もそれ程出ないと思う。
鋼のと水火のは二人で組んで貰う事となった。」
話し終わると、資料を二人に手渡した。
「鋼のは受付で軍服を貰う事。」
「分かった。」
ロイの言葉に頷くエド。
「それと・・・たとえ小規模は戦いといっても気を抜くな。そして、絶対に死ぬな。以上だ。」
ロイの話が終わり、二人は執務室を後にした。
「軍服・・・取りに行かなきゃね・・・」
「そうだな・・・」
二人は落ち込んだ表情をしたまま受付へ向った。
軍服を受け取り、エドとは彼女の家へと向った。
「そう言えば・・・アルは?」
「リゼンブールに置いて来た。」
「置いて来たって・・・(汗)」
戦争が始まる前の暫しの休息。
「・・・本当はエドが戦争に出なくても良いようにしたかったんだけどね・・・」
「別に・・・仕様がないだろう?」
「だけど・・・」
俯き、泣きそうな彼女をエドはそっと抱き締めた。
「んな顔すんなって。大佐も言ってただろう?犠牲者は出ないって。」
「でも、絶対とは言い切れない・・・」
「大丈夫だって。互いに守りあえば・・・な。」
そう言って笑顔を見せるエド。
「うん・・・絶対に死なないでね・・・」
「お前も・・・絶対に死ぬなよ・・・」
戦争なんて起きなければいい。そう思っていても刻一刻と時間が迫る。
戦場へ赴く当日、最終確認をし二人は持ち場へと付いた。
二人の持ち場は廃墟となった建物の中。この中に不穏分子が居る。
「こっちの方にはあまり来ないって言ってたね。」
「俺が戦争に出るのが始めてだからだろう?
何が起こるか分かんねぇし・・・気ぃ抜けねぇな・・・」
「うん・・・」
頷くとは銃弾の確認をした。
一歩、また一歩と建物の中へと足を進めて行く。
中に進むに連れ、二人の口数も段々と少なくなっていた。
「・・・誰か居る・・・」
誰かの気配を感じ取ったのか、は口を開いた。
「エド!伏せて!!!」
の声と同時に、銃弾が飛んできた。
何とか避けたエド。
「怪我してない?」
「あぁ。大丈夫だ。」
こうして会話をしている間にも銃弾が飛び交う。
「・・・どうする?」
「やんなきゃやられる。」
腰に掛けていた銃を取り出し、安全装置を外した。
「だろうな・・・」
エドの声を合図に、は敵に向って銃弾を放った。
数分の間、銃弾の音が聞こえなくなった。
「此処は終了。」
「・・・・・・・」
戦争という物を始めて経験したエドは何も言えず佇んでいた。
「エド・・・?大丈夫?」
「あ・・・あぁ。」
取り敢えずは返事を返したが、目の前の光景に嘔吐を感じた。
がエドの方を向いた時、彼の後ろに忍び寄る影に気付いた。
「エド!!危ない!!」
は衝動的にエドを引き寄せた。
反動で転んでしまったエドは、今まで自分が立っていた場所へ目線を向けた。
「・・・・?」
まるでスローモーションでも見ているかの如く、の身体が倒れていく。
「ーーーー!!」
倒れたを抱き上げ、エドは必死で身体を揺さぶった。
「おい!!!!しっかりしろ!!」
そうしている間にも、敵は一歩、また一歩と近付いてくる。
「お前も・・・軍属・・・その女と共に殺す。」
そう言って手に持っていた剣を振り下ろした。
エドはの持っていた銃を手に取り、全弾発砲した。
血みどろになって倒れる敵。それを見て終るとエドは再びを強く抱き締めた。
「・・・・・・」
うわ言のように彼女の名前を呼ぶ。
エドは何かの気配を感じ取ったのか、銃弾の補充をし気配のする方に標準を合わせた。
「鋼の!!」
出てきたのはロイだった。だが、エドは銃を発砲した。
「鋼の!!私だ!!」
物陰に隠れながら叫ぶロイ。それでも発砲し続けるエド。
「まったく・・・敵味方の区別もつかんのか・・・・」
呆れたように溜め息を吐くと、一瞬の隙を突いてエドの持っている銃を掴んだ。
「鋼の!!私だ!!分かるか?!」
「大・・・・佐・・・・」
ロイだと分かるとエドは持っていた銃を離した。
「一体どうしたのだ?!君がそこまで取り乱すとは・・・」
ロイは手を離し、視線を下に向けた。
「水火・・・の・・・?」
青い軍服が真っ赤に染まった彼女を見て、ロイは言葉を失った。
「守れ・・・なかった・・・逆に・・・俺・・・守られ・・・た・・・」
を強く抱き締める、涙を流すエド。
「エ・・・ド・・・」
抱き締めていたが意識を取り戻し、口を開いた。
「・・・」
「泣か・・・ないで・・・」
「水火の!これ以上は喋るな!!」
「ロイ・・・」
ロイの方を向き、は微笑んだ。
「ごめんね・・・約束・・・守れなかった・・・」
「水火の・・・」
「エド・・・」
再びエドの方を向き、彼の頬に手を当てた。
「 」
言い終わると、彼女の手は重力に従い、床に落ちた。
「・・・嘘・・・だろ・・・?・・・ーーーー!!」
エドは泣きじゃくりを強く抱き締める。ロイも、声を殺して泣いていた。
『貴方に出会えてよかった・・・』
FIN
|