君だけを見つめていた・・・我は貴方の事が・・・


「一色・・・?どうしたの?」


傍に駆け寄ってくるのは一人の少女。我と同じ妖怪の娘。


「いえ、何でもありませんよ。」


そう微笑むと、彼女は首を傾げた。


「一色、この頃元気ないよ?何かあったの?」


「大丈夫ですよ。貴女の笑顔を見ると心が癒されますし。」


そう言いながら少女の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


ずっと君だけを・・・


一昨日の雨の日、妖怪に襲われたであろう、彼女を見つけた。


『同族の争いも醜いですねぇ・・・』


そう思いながら、足者に転がる少女を見下ろした。我に気付いた彼女は顔を向けた。その瞳を見た瞬間、何かに襲われる感覚がした。


『生きたいですか?』


我の問い掛けに少女は頷いた。普段ならほおって置くのに何を血迷ったか、彼女を拾うことにした。




「一色。この花綺麗だね。」


そう言って手にとったのは真っ赤に染まった一輪の華。


「そうですね・・・でも、血の色ですね。」


「でも、綺麗でしょ?一色にあげる。」


差し出された華を受け取り、我は微笑んだ。


「ありがとう。」


微笑む我を見て、満面の笑みを浮べる彼女。何故か可愛いと思い、同時に壊してしまいたいと思った。




ずっとこの手の中に納めて居たい・・・そんな気持ちが我を支配した。


何時か彼女が我の手を離れて行きそうな、そんな感じがしていた・・・


・・・」


この時、我は初めて少女の名前を呼んだ。


「何?一色?」


微笑みながら振り向く彼女に我は爪を振り上げた。血に染まる少女。今まで見たことの無い美しさに笑みが漏れた。


「貴女を誰にも渡したくない・・・これでずっと一緒に居れますね・・・・・・」


もう、体温の無いを抱き締めながら呟いた。
我の呟きは貴女に届くのでしょうか?・・・




FIN