後にも先にも


テニス部の部室の前で佇む一人の少女がいた。

「あれ?。何やっとるんや?」

 と呼ばれた少女は声のする方に顔を向けた。

「忍足…ちょっと跡部君の事待ってるんだけど…」

「あぁ、跡部ならさっき帰ったで。
何か急いでるみたいやったな。」

「そう…」

 忍足の言葉を聞き、は俯いてしまった。

「何なら俺と一緒に帰らへんか?正門までやけど。」

「いいよ。じゃ、行こうか?」

 地面に置いていた荷物を手に取るとは忍足と共に歩きだした。

「んでな、その時の岳人の顔といったら…」

 を楽しくさせようと、忍足は部活であった話を彼女にした。
 彼女の表情もだんだんと明るくなり、最終的には声を出して笑っていた。

「あれ?正門の前におるのって…」

 忍足は正門に視線を向けた。そこに立っている一人の人影。

「跡部君?」

「おせぇんだよ。。」

「先帰ったんじゃないんか?跡部。」

「別にいいだろ。」

 忍足の事を邪魔にするかのように、跡部は睨み付けた。

「邪魔者は退散いたします。ほな、またな。」

 忍足の後ろ姿をぼーと見つめる
 それに苛立ったのか、跡部は彼女の腕を掴んだ。

「跡部君?」

「彼奴と居た方が楽しかったのかよ?」

 跡部の目は真剣にの目を見ていた。

「もしかして…嫉妬してるの?忍足に。」

「ばっ…違ぇよ!!ただ、何となく苛ついただけだ。」

 跡部は顔を真っ赤にさせながら目線をそらした。
 そんな彼を見て笑みを漏らした。

「何が可笑しい?」

「いや…跡部君が可愛いなぁって…
ちょっと思っちゃった。」

「俺様が可愛いわけねぇだろう。」

 彼は冷静にきっぱりと言い切った。

「寧ろ可愛いのは俺様より、お前の方だと思うな。」

「え?///」

 赤面状態で跡部を見つめる

「そんなに照れるな。俺まで照れてくるだろ///」

「跡部君…」

「それと、君付けはそろそろヤメロ。なんか鬱陶しい。」

 再び横を向いてしまった跡部。
 彼の顔は耳まで赤くなっていた。

「それじゃぁ…跡部…」

「何で名字なんだよ。
普通、名前で呼ぶだろ…」

「え…でも…」

 戸惑うに跡部は更に言葉を足した。

「俺様が良いって言ってんだ。素直に従っとけ。」

「わかったよ……景吾…」

「よし。合格だ。んじゃ、帰るぞ。」

「あ、待ってよ。」

 先に歩いて行ってしまう跡部を追い掛けるようには走りだした。

「ほら、早くしろ。」

 そう言って彼は手を差し出した。

「うん。」

 は跡部の手を取り、同じ歩幅で歩きだした。

「こんなに本気になったのは、後にも先にもお前しか居ねぇからな。
しっかり責任取れよ?。」


FIN