――空が青いとは限らない。


例えば夕日で真っ赤に染まる空や、


夜の暗闇に飲まれる空。


それと…――


空が青いとは限らない


部活中、は空を見上げていた。

「部活中にサボるとは…お前らしくないな。」

屋上で寝転がって空を見上げていたの視界に手塚の顔が入った。

「ん…空が青いなぁって思ってさ。」

「そんなにグラウンドを走らされたいか?」

眉間に皺を寄せる手塚。
そんな手塚の眉間に指を置いた。

「そんなに怒るなって。
老けるぞ?」

楽しそうに笑う

「いいじゃん。こんなに天気が良いんだからさ。
たまにはサボりたくもなるよ?」

「……グラウンド10周。」

「酷いなぁ…
これでも一応は女なんだよ?」

尚も笑いながら手塚に詰め寄る。

「…女と見て言った。
実際は30周だな。」

「一応は甘く見てくれたんだ。」

「当たり前だ。
お前だって調子の悪い時だってあるだろう?」

そう言って手塚はの横に腰を下ろした。

「調子悪くないけど?」

「なら何故、朝練の時ずっと部室に居たんだ?
それと、体育の時間も居なかったらしいな。」

「英二から聞いたのか?」

「不二もだ。
あいつ等、心配してたぞ。」

「そっか…」

は再び寝転がり、空を見上げた。

「ちょっと、嫌な事あってな…
気が滅入ってたんだ。」

「嫌なこと…?」

「大した事じゃないから気にはすんな。」

微笑みながらは言った。
が、その笑顔は悲しいものだった。

…無理はするな。」

の頭を撫で、手塚はドアの方へ足を向けた。

「手塚…?」

「今日は帰って休め。
明日からは本調子で来い。いいな。」

「……うん。」

の返事を聞くと、手塚はゆっくりとドアを閉めた。

「…もう少し、俺達を頼っても良いんじゃないのか…?
。」

そう言い残し、手塚は部活へと戻った。


「手塚…ありがとな。」

撫でられた頭を抑えながら、コートに向かう手塚の後姿をはずっと見ていた。

「今日は空が綺麗だな。」






――真っ青で目が痛くなるくらいに…――


Fin