年に一度の査定の日。慌しく東方司令部を駆け回る一人の少女が居た。彼女の名は・マスタング。東方司令部、ロイ・マスタングの妹だ。


「お兄ちゃん!どうしよう!レポートが!!」


「そんなの私が知るわけ無いだろう?自分でどうにかしろ。」


ワテワテとレポート用紙にペンを走らす。彼女も国家錬金術師なのだ。二つ名は『風』。
2年前、エドワード・エルリックが国家資格を取った同じ年の受験者。彼女もまた、真理を見た者の一人だ。


序章一『約束』


彼女が10歳の時の話だ。父親を事故で亡くし、彼女は人体錬成を思いついた。もちろん、ロイには黙って。
幼い時からロイと錬金術の研究をしていたは大部分を理解していた。そして彼女は、13歳の時に人体錬成をした。誰にも見つからないような場所で。だが、錬成は失敗に終った。その代価として彼女は右足と左手を持っていかれた。ロイが異変に気付き、を助けなければ今ごろは命も無かっただろう。
彼女の無くなった足と腕は自由に動けるよう機械鎧にした。そして、15歳の時に国家錬金術師の資格を取った。今は少佐の地位に着き、ロイの手伝いをしている。




ふと思い出しとようにロイは口を開いた。


。そう言えば今日辺りに鋼のが来るそうだ。」


「え?」


鋼のと言う言葉に反応して、は顔を上げた。


「お兄ちゃん、それ本当?」


「嘘をついてどうする?」


の顔が一気に明るくなり、ペンを走らす手も更に早くなった。


「そんなに急いで書くと間違えるぞ。」


ロイの言葉も耳に入らないのか、無我夢中でレポート用紙と睨めっこ。


(エドとの約束・・・今日だから・・・・早くレポート終らせなきゃ。)


彼女とエドとの約束・・・・




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序章2