序章二『桜の木の下で』


二年間、国家試験を終えたは、セントラルの街中を一人歩いていた。
の目の前に見えた公園。彼女はそこの中央にある一本の桜の木を見上げた。


「『錬金術師よ、大衆の為にあれ』か・・・」


彼女も幼い頃は人の役に立ちたい、その一心で錬金術を学んできた。だが、彼女の今の気持ちは違っていた。


「私は只一人・・・こんな私を助けてくれたお兄ちゃんの役に立ちたい。それだけ・・・」




―それだけなのに・・・何でこんなに苦しいんだろう・・・?―




何時の間にか、彼女の頬を一筋の涙が流れてた。彼女は涙を拭い、また木を見つめた。


どの位の時間が経ったのだろうか。ふと後ろを振り向くと、綺麗な金髪の少年が立っていた。彼もまた、この桜の木を見上げていた。とても哀しげな表情で。


は少年の横を通り過ぎ、公園の入り口に立った。振り返り少年の方を見ると、そこには少年の姿は無かった。また何処かで会うだろう。そんな言葉を残し、はその場を去った。


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