第二一章『師匠の元へ・・・〜入れ違い〜』


ダブリスに着いたは重い足取りでカーティス家に足を運んだ。


「そういや・・・急いでて軍服のままだったんだよなぁ・・・」


師匠に怒られる・・・そう思いながら呼び鈴を鳴らした。


「・・・誰だ?」


「あ・・・です・・・」


イズミの声が聞こえ、控えめに言った。


「何だ、か。どうした?」


「いや・・・エルリックの馬鹿兄弟が此処に来てると思ったんですが・・・」


「あぁ。エドの方は査定がどうとか言って南方司令部に行ったぞ。」


イズミの言葉に溜め息を吐く


「彼奴・・・査定は忘れるなって毎回言ってるのに・・・」


「ところで。何故軍服なんだ?」


「えっと・・・急いで此処に来たもので・・・着替える暇が・・・」


額に汗をかきながらは苦笑した。


「まぁいい。早く上がれ。」


「はい。お言葉に甘えて・・・」


は一歩玄関に踏み出した。


。」


「はい?何ですか?」


急に呼び止められ、は振り返った。


「お前の事はエドから聞いた。」


「何を・・・?」


「人体錬成の事だ。」


イズミの言葉にビクッと肩を揺らす。


「・・・エドから・・・聞いたんですか・・・?」


「あぁ。・・・お前も頑張ったな。」


そう言っての頭を優しく撫でるイズミ。


「師匠・・・」


「本当に・・・師弟揃って・・・だな。」


「やっぱり・・・師匠も・・・」


「あぁ・・・内臓をね・・・あちこち持っていかれた。」


「そう・・・ですか・・・」


顔を俯け、は何も言えず居た。


・・・軍の狗になって良かったと思っているか?」


「え・・・?」


イズミの言葉に、は再び顔をあげた。


「どうなんだ?」


「・・・良かったと・・・思います。」


「どうしてだ?何時戦争に借り出されるかわからない・・・それでも軍の狗を続けるのか?」


「俺は!!」


そう叫んで、は下を向いた。


「俺は・・・人体錬成をした時・・・あそこで死ねば良かったって思っていました。
でも・・・禁忌を犯した俺でも・・・必要としてくれる人が居る・・・
俺を・・・助けてくれる人が居る・・・支えてくれる人が居る・・・
だから俺は・・・」


の頭の中には軍部の人達の顔が浮かんでいた。
は真っ直ぐにイズミの目を見た。


「だから俺は、その人達の為に役に立ちたいんです。
例え、俺の事を何と言う人が居ても、俺には沢山の大切な人が居る。
その人達を護りたいんです。」


そう言うと、は土下座をした。


「だから俺、もっと強くなりたいんです!!
大切な人を・・・エドとアル・・・兄貴を護れる位に強くなりたいんです!!
もう一度・・・俺を鍛えてください!!」


その目は、幼き頃見たの熱い目だった。
そんなにイズミは頭を撫でた。


「どいつもこいつも・・・似ているな。」


「え・・・?」


「エドとアルも、同じように土下座をしていたよ。
昔見た決意に溢れた目でね。」


「師匠・・・」


「さ、そんな所に座ってないで、着替えて店の手伝いしな!!
明日からみっちり修行するから、覚悟しな!!」


「は・・・はい!!」


は持っていたトランクを担ぎ、脱衣所に向った。


「師匠、ありがとうございます!!」


「礼は良いから、さっさと支度しな!!」


「はい!」


満面の笑みで、は店番をしたとか。




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