敵を薙ぎ倒すイズミ。それをただ傍観するだけの。
「俺って・・・来た意味ねぇ・・・」
木箱の上に腰を掛けながらは呟いた。
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第二三章『取引』 |
「おいおいおいおい。
おねえさん、いきなりそりゃないでしょう。」
「あんたが責任者?
うちの者が世話になったね。」
締め上げていた男から身体を離すと、イズミはグリードの目の前に立った。
「連れて帰らせてもらうわ。」
「そいつはできねぇ相談だ。」
睨み合う両者にただオロオロとするアル。
はいまだ傍観中。
「あっそう。」
イズミの拳がグリードの左頬に入った。
「ほんとに何もかもいきなりだな。
指、イっちまったんじゃねぇの?」
グリードはイズミの手を払い除けた。
「センセイ!!」
「師匠!!」
引いたイズミの右拳からは血が流れていた。
「えらく変わった体してんのね。」
「まぁな。ちょっとやそっとじゃ傷一つつけられねぇぜ。」
パキパキと音を立てながらグリードの頬部分の黒味がひいていく。
「あ・・・!!」
「どうした?アル?」
アルが何か思い出したように声をあげた
「兄さん・・・兄さんは来てないんですか!?」
「まだ帰ってきてないけど・・・」
「あれ?兄貴は死んだって・・・」
「一言も言ってないよ。
センセイ!!この人人造人間なんです!!」
アルの叫んだ言葉にとイズミが一瞬無言になった。
「おまっ・・・いきなりバラすなよ。」
「なっ・・・何を言い出す・・・」
「だから!!」
イズミの言葉を切り、アルが叫んだ。
「僕達が元の体に戻るヒントを持ってるんですよ!!!!!
兄さんに知らせないと!!」
「・・・本当に人造人間?」
「アルが言うなら本当でしょうね・・・」
イズミと、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮べる。
「なんだよ。お前肉体を取り戻したいのか?
その身体、便利で良いじゃん。」
「いくない!!」
グリードの言葉に、声を荒げるアル。
「あぁ、そいつボコって秘密を吐かせりゃいいのね。」
「そうだけど・・・
うわーー!!センセイ!!怪我酷いよ!!
無理!!無理!!」
「そーだよ。
俺、女いたぶるの嫌だし。」
アル・イズミ・グリードのやり取りを少し遠目にみている。
「・・・師匠。」
「何だ?」
「俺がボコってもイイデスカ?」
「何で最後が片言なんだ?お前。」
「何となくです。」
ニッコリと微笑む。だが、その額には青筋が立っていた。
「・・・の前に、師匠はこれで手の手当てしてください。」
「あぁ・・・」
はハンカチをイズミに渡すと、グリードに向かい突進した。
機械鎧の右足で、グリードを蹴り倒そうとしたが、難なくかわされてしまった。
「っと。危ない姉ちゃんだな。」
「手前ぇはムカツク。
師匠に怪我させやがって・・・ただじゃおかねぇ!!」
イズミに怪我を負わせたグリードに対し、物凄く怒っている。
かわされても、はグリードに攻撃しつづけた。
「うりゃ!!」
――ガッ!!
「っ・・・!!」
が振り下ろした左腕が難なくグリードに捕まった。
ギリギリと締まる左腕を振り払おうと必死に力を込めるが、グリードの力の方が強く、振り払えずにいる。
「俺は鎧クンの魂の錬成とやらを知りたいだけだ。」
「それを知ってどうするんだよ?」
「こっちにも事情ってモンがあるんだよ。
つまり、俺はこいつ等に人造人間の製造方法を教える。
こいつの兄貴は俺に魂の錬成方法を教える。
ただそれだけの話だ。」
「・・・つまりは取引って事か?」
「等価交換だろ?」
「ざけた事抜かしてんじゃねぇよ。
本気で切り刻んでやろうか?」
「アル・・・?」
「お願い・・・やっと巡って来たチャンスなんだ・・・」
「・・・・・・・」
アルの言葉に、は俯き黙り込んだ。
「あんた、グリードって言ったっけ?」
を見ていたイズミが口を開いた。
「私等、錬金術師ってのは創り出す側の人間だから、
こういうのは好まないんだけど・・・
私の身内の者にもしもの事があったら、その時は遠慮無くぶっ壊す。」
怒りを込め、イズミは睨みつけながらグリードに言い放った。
「。帰るよ。」
「はい。師匠・・・」
はアルの事が気になるのか、後ろを振り向いた。
「!!」
「はい!!」
イズミに呼ばれ、は慌てて後を追った。
帰り際に夫婦喧嘩があった事はまた別の話・・・
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あとがき
やっと完成した・・・二三章・・・(汗
前回の更新から結構時間たってますね・・・(苦笑
いや・・・本気でどうしようか迷った章ですよ・・・
レイムちゃんの機械鎧を壊そうか、そのままにしようか・・・
結局はこのままなんですけどね・・・(汗
次回はどうしよう・・・
ちゃんとネタをまとめようかしら・・・(今更?
2006.04.07
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