『今日から私達は兄弟よ。』
訳が解からない。此処は何処なの?一体なんなの?
『貴女の名前はティア。『悲哀』よ。覚えておきなさい。』
は?私には『』って名前があるのよ?何か言いたいのに、声が出ない・・・なんで?
『君は『氷水の錬金術師』のDNAを元に作られたホムンクルス。』
私のDNA?じゃ、今此処に居る私は・・・?何者なの?
『お父様には逆らわない事。いいわね。』
解からない・・・解かりたくない・・・エド・・・助けてよ・・・
暫くしてホムンクルス全員が私の居た部屋から居なくなった。『逃げなくちゃ。』でも何処に?私は死んだ人間なのに・・・
そう思っていたら、不意に部屋のドアが開いた。
『へ〜〜・・・お前がティアか・・・俺は『強欲』のグリード。ティア、此処から逃げる気か?』
そう言われて私は首を横に振った。
『そうか・・・俺は此処から逃げるぜ。どうせなら女の一人でも連れて行こうと思ったんだけどな・・・じゃぁな。』
立ち去ろうとするグリードの服を衝動的に掴んだ。
『どうした?』
『・・・・私も・・・・連れてって』
それがホムンクルスになって初めて言った言葉だった。
グリードは思ったよりも優しい人だった。仲間思いで、心強くて。なんだかお兄ちゃんが出来たみたいで嬉しかった。
『グリ兄!!』
『その呼び方はやめろって言ってるだろう?ティア。』
『兄弟なんだから良いでしょう?』
なんだかんだ言っても、私の頭を優しく撫でてくれる。それが一番幸せだった。でも、ある日、グリ兄が言った。『魂の定着方法を聞き出すためにあるガキを捕まえる』って・・・
私にはわかった。それがアルだって事が。そして、アルは捕まってしまった。
『ティア?どうした?』
アルの居る部屋とは別の部屋で落ち込む私にグリ兄が声をかけた。
『アルには・・・会えない・・・私の事・・・知ってるから・・・』
生きていた頃の私とは違う私。外見は瓜二つだけど、銀色だった髪は真っ黒に染まり、左肩にはウロボロスの入れ墨。こんな姿、アルには見せたくない。
『お前は此処に居ていい。何か有ったら呼べばいいさ。』
『グリ兄・・・』
グリ兄の優しさに思わず涙が出てきた。
『泣くな。ティア。』
その優しさがなんだかエドと似てて・・・涙が止まらなかった。
その後、グリ兄はラースに見つかりお父様の所へ連れて行かれた。エドが来る前に『俺に何か有ったら迷わず逃げろ』って私に言った。何処に逃げればいいかなんて、私には解からない。気が付いたら何時の間にかラッシュバレーについていた・・・
『アル!!早くしろよ!!』
『待ってよ!兄さん!!』
駅の近くからエドとアルの声がして、私は衝動的に裏路地に見を潜めた。気が付かないで通り過ぎてくれる事を願いながら。
幸い、エド達には気付かれなかった。でも、私はどうやって生きていけば良いのか解からない・・・生きていたら、エドとアルと三人でこの街を訪れたのだろうなどと思っていたら急に涙が出てきた。
拭っても拭っても溢れてくる涙。どのくらい泣いたのか自分でも解からなかった。流れてくる涙を拭っていると、不意に肩を叩かれた。振り向いてみると、そこにはエドとアルが居た。
『・・・?』
私は走り去ろうと身体の方向を変えたが、エドの手によって阻止された。
『待てよ!!本当になのか?』
会いたかったけど、会いたくない人に出会っても、何故か私はエドに抱きついていた。そんな私の頭を優しく撫でてくれた。
私はエドとアルに全てを話した。でも、一緒に居るとエド達まで危険な目に遭う。だから私は気付かれないように二人から離れた。
それからどれくらいの時が経ったのだろう?
軍事国家が政治国家に変わり、それと同時に国も変わった。戦う必要がない国になった。そんな国になってから、私はまたエドと出逢った。
少し大人っぽくなったエドの右腕と左足は元に戻っていた。アルも、元に戻ったと聞かされた。
『今度は一緒に居れるよな?』
そんな彼の問いが苦しかった。私は歳を取らない。後何百年も生きる身体になってしまった。それでもエドは私を受け入れてくれた。
そして、エドは私より先に死んでった・・・武装軍団によって・・・
私はエドに最後の言葉を掛けた。
『私を見つけてくれてありがとう。今度は私が見つけるから』っと・・・
『必ず見つけろよ。』
彼らしい笑顔で言ってくれた。
それから私は旅をしている。何処にいるか解からない、彼を探す為に。
私を育ててくれたグリ兄と一緒に。
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