「親父は、まだ小さい俺の事を殴ったりしてた。『お前は俺の子供じゃ無い』って。親父の暴力はお袋にも及んだ。」
俺は黙っての言葉を聞いた。
「ある日、親父は家を出て行った。俺はお袋の心配をしてた。
『大丈夫?』って・・・
でも、お袋は『お前さえ・・・お前さえ居なければ・・・』そう言って、何時も俺の事を罵って、殴ってた。
俺さえ居なければ、幸せな家庭だった。」
こいつも俺と同じ・・・この髪と目の色の所為で、親に罵られ続けたんだ・・・
「周りも俺の事を否定し続けた。
家ではお袋に殴られ、外に出れば周りから罵られ、そんな日が続いた。
暫く経った時、お袋が家に帰ってこなくなった。その辺の男とでてったって、後々知った。
唯一の身寄りであった、叔父さん夫婦に俺は引き取られたけど、そこでも陰口。
表向きは俺の事を受け入れたように見せかけて、裏では『何であんな子引き取ったんだ?』と言ってたし・・・
高校生になってからはすぐに家を出た。」
の表情が少しだけ、暗くなった気がした。
「でも、高校に入っても、周りからの否定は続いた。
俺を呼び出し、殴る先輩。ちっぽけなイジメを繰り返すクラスメイト。
全てどうでも良かったんだ。ダチも居たけど、それは表向きだけの付き合い。俺に同情して、付き合ってたやつ等だと思う。だから、俺は周りと距離を置いた。
素で接する子事の出来る人間なんて誰も居なかった。」
俺等と距離を置いてたのはそう言う事だったんだ・・・
「・・・毎日が退屈だったんだ。同じように苛められ、同じように罵られる。そんな繰り返しだった。
そんな時に観世が俺の目の前に現れた。それで、今此処に居る。
俺は此処に来たこと後悔はしてない。寧ろ、ありがたく思ってる。
『此処に居ていい』って言ってくれる奴居なかったからさ・・・
だからお前等と一緒に居られて凄く嬉しい。」
そこまで話し終えると、は再び、煙草を吸い始めた。
「・・・」
「何?」
心なしか、の表情が泣き顔に見えた。
俺は、を抱き締めた。
「悟浄・・・」
「・・・泣きたい時は泣けばいい。
その時は俺が胸、貸してやるよ。」
「泣くのなんて久しぶりなんだよ・・・
どんな状況でも俺・・・泣かなかったから・・・」
こいつは強がっているだけなんだ。
心の内は何時も泣いていたんだ。
「さんきゅ・・・悟浄・・・」
俺の背中に腕を回して、は泣き始めた。
「辛かった・・・この事話せる奴・・・誰も居なくて・・・」
泣き出したの背中を俺はゆっくしと擦った。
「俺でよかったら、聞いてやるよ。全部な。」
「悟浄・・・ありがとう・・・」
ふっと、の体の力が抜けた。
「!?」
取り敢えず支えていた俺の腕からは、規則正しいの寝息が聞こえた。
「・・・ま、これでもいいか。」
俺はそのまま、をベッドに寝かせた。
「たく・・・」
寝顔はガキだぜ・・・本当。
でも、まぁ・・・こいつがこの事話してくれたって事は・・・
「少しは期待しても良いのかもな・・・」
なんてな。
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