全てを話そう。彼奴等に。
でも・・・どうやって・・・?


第八章『言わなくちゃ』




観世が居なくなってから、俺は必死でどうやって言い出そうか、イメージトレーニング。
神の力を取り戻したし、俺が妖怪になる事もない。
って・・・彼奴等この事知ってんのか?
千の妖怪の血を浴びたら妖怪になるって・・・
知ってたとしても、如何にもならないとか考えてねぇだろうな?


・・・まだ起きてたんですか?」


そう、思考を巡らせてると八戒が部屋に入ってきた。


「あ・・・あぁ・・・何となく・・・」


って、今目見られたらヤバイ!!
八戒の方は向かずに、窓の外でも見てよう。
てか、グラサンねぇか?(ねぇって。)


「・・・、僕の話少し聞いてくれませんか?」


「何?」


顔は窓の外を向いたまま俺は聞いた。


「とても言い難い事なんですが・・・
これから先、妖怪が現れても戦いに加わらないで下さい。」


は?


「何で?」


八戒の言葉に思わず顔を向けようとするが、必死で抑える。


「千の妖怪の血を浴びると妖怪になるという話があるんですよ・・・」


やっぱり八戒、知ってたんだ。


「それはただの言い伝えじゃないんですよ。
実際・・・僕は千の妖怪を殺し、妖怪になりました。」


「八戒が・・・?」


八戒が妖怪だって事は知ってた。けど・・・何で・・・?


「僕は昔、大切な人を失いました。
百眼魔王という妖怪に囚われ、その子供を孕んでしまったんですよ。」


八戒はポツリ、ポツリと語り始めた。


「僕は我を忘れて、妖怪を殺しました。
ようやく会えた時には・・・彼女は・・・僕の前で自害しました・・・」


・・・妖怪の子供を身篭り、愛する人の元に戻れないから・・・か・・・


「その後も僕は妖怪を殺しつづけました。
妖怪だけじゃないです。彼女を妖怪に突き出した、人間も。」


それだけ、八戒はその人の事を愛していたんだな。
俺は、ベッドから立ち上がり、八戒の頭をそっと抱き締めた。


・・・?」


「ん・・・何となく。辛そうだったから。」


勿論、八戒と目を合わせないように。


「僕はもう、大丈夫なんですよ。
あの三人が居ましたからね。」


そう言って、八戒は俺から見を剥がした。


には妖怪になってもらいたくないんです。
僕だけじゃない。三蔵達もですよ。」


「大丈夫。」


俺がそう言うと、八戒は俺の事を見上げた。
八戒に向けて、俺は目を細めて微笑んだ。


「俺は大丈夫。妖怪にならないから。」


どう話そうかなんて考えてる暇なんてない。
俺の事心配してくれる人が居るんだ。
だったらこの事、さっさと伝えないと。


・・・その目・・・」


細めた目を開けると、八戒が驚いた表情をした。
当たり前か。


「八戒、三蔵達まだ起きてる?」


「え・・・えぇ。多分起きてると思いますよ・・・」


八戒の言葉を聞いて、俺は部屋のドアへと向った。


「八戒も。皆に話さなきゃいけない事があるから。」


そう言って、俺と八戒は三蔵達の部屋へと足を向けた。




部屋のドアを開けると、中から煙草の香りがした。
ハイライトと、マルボロの匂い。


「皆に話したいことがある。」


真っ直ぐに見据えて、俺は言った。
勿論、俺の目の色に驚く三人。
その事は今は後回し。



言って受け入れて貰えなかったら、俺は心を閉ざすだけ。
そう思い、俺は話し始めた。






ノックも無しに、が俺達の部屋に入ってきた。


「皆に話したいことがある。」


俺等を真っ直ぐに見据えて言う
それよりも、俺等はの目の色が違う事に驚いた。


・・・その目・・・」


「ん。その話は後。」


悟空の言葉を即座に切り、は備え付けの椅子に腰を掛けた。


「取り敢えず一言。俺は妖怪にはならない。」


突然言い出した言葉に、俺等は訳が解からなかった。


「どう言う事か説明しろ。。」


「解かってる。そう焦んなよ。三蔵。」


は自分のポケットから煙草を取り出して、ゆっくりと火を点けた。


「俺は、神の血を引く人間なんだ。」


神の血を引く人間?
どう言う事だよ。


「俺の前世は、神・・・まぁ天上界の人間って事。
俺はこの目の色、金晴眼の所為で不浄の輩と罵られてたんだ。
不浄の輩の所為か、俺は幼い時から戦闘の訓練を積んで来た。
訓練を積んで、誰にも負けなくなったある日、俺は闘神の命を受けた。」


「闘神って・・・?」


解からない単語が出てきた為、悟空はに聞いた。
口には出さないけど、俺も解かってない。


「天上界は無殺生を基本としていたんだ。
それでも、天上界・・・もしくは天帝に害があるとみなされたら、闘神太子を使って相手を殺す事が出来る。
言わば、戦う為だけの人形。
俺は心を閉ざし、くだらない任務を遂行していたんだ。」


そう言うと、は紫煙をゆっくり吐き出した。


「でも、そんなある日、俺は一人の子供に出会った。
俺と同じ目ぇした幼い子供。なのに、足枷と手枷がついてた。
それだけ、天上界にとって危険な子供だって事だったんだ。
でも、その子供のお陰で、俺は少しずつ変わる事が出来た。
ちらほらと笑う事も出来た。
ま、俺の笑顔見て驚いてた奴も居たけどな。
笑わない、本当に人形のような奴だったから。」


苦笑を浮べる


「信頼できる仲間も出来た。
幸せだった。本当に。
でも、幸せって長くは続かなかった。
・・・ある日俺は、罪人に荷担した者として、殺された。
他の仲間も・・・同じように・・・
でも・・・」


そう、言葉を切ると、は悟空を見つめた。


「俺と最初に出会った幼い子供は殺される事なく、下界に幽閉されたんだ。」


そっと、悟空に微笑んだ。


「何で、お前は前世の記憶なんざあるんだ?」


「前世の記憶なきゃ、俺は妖怪になってた。
神の力が無い俺は、只の人間でしかない。」


そう言ったは、少し悲しげな顔をしていた。


「本当は・・・こんな記憶・・・いらなかった・・・
辛い事、思い出しすぎて・・・
最初は信じられなかった。
でも、だんだんと『あぁ、これは俺なんだ』って思えてきた。
だから、全てを受け入れなければいけない・・・」


の辛い表情。俺は見ていられなくなった。


「こんな俺でも・・・まだ傍に居て良いか・・・?
お前等と一緒に・・・旅続けてても良いか・・・?」


すっごく不安げな顔で俺等を見る
てか、答なんて一つしかない。


「勿論。良いに決まってるだろう?」


俺は笑顔での頭を撫でた。


「悟浄・・・」


「手前ぇが何者なのかなんか関係ねぇ。
手前ぇは手前ぇだろ?」


三蔵の口の端が少し上がっているように見えるのは俺だけか?


「そうそう。俺はともっと一緒に居たい!!」


「そうですよ。
じゃなければ、が妖怪になる事を恐れる訳ないじゃないですか。」


「皆・・・ありがとう・・・
俺・・・此処に居ても・・・良いんだな・・・」


「さっきからそう言ってるだろう?」


「あり・・・が・・・とう・・・っ」


の初めて見る涙に少し戸惑いながらも、俺は頭を撫でた。


「俺・・・昔・・・から・・・この目の色と髪の色でっ・・・周りから否定され続けたんだ・・・っ
だから・・・こうやって仲間が出来たのが・・・凄く・・・嬉しい・・・っ」


嗚咽を抑えながら俺等に話そうとする
は涙を拭いて、顔をあげた。


「皆・・・ありがとう・・・」


今までに見たことの無いような笑顔では笑った。


「それと・・・ごめんな・・・」


急には謝った。


「何に対しての謝罪だよ・・・ι」


俺等は訳が解からずに居た。


「俺・・・さ・・・異世界から来ただろ・・・?
だからさ・・・何時かは別れるから、自分の事話さなくてもいいって思ってたんだ。
でも、もう元の世界・・・俺が居た世界には帰れないからさ。」


「は?」


「俺が神の力を取り戻した時点で、帰れなくなったのは決定したんだ。
俺はずっと、此処に居る。
この世界で生きる。そう決めたんだ。
これで、心置きなく旅を楽しめる!!」


そう言って元気良く椅子から立ち上がる
・・・さっきまで泣いてたよな?


「本当、最初に出来た仲間がお前らで良かったよ。」


そう言ってまた微笑んでくれた。


「っと・・・俺は部屋に帰って寝るな。
何か疲れた・・・」


そう言ってはドアの方に向った。


「・・・これからも宜しくな。
んじゃ、おやすみ。」


笑顔では部屋の扉を閉めた。


「・・・俺等も寝ますか・・・」


そう言って俺は自分のベッドの方へと足を伸ばした。


「悟浄。」


「ん?」


八戒に呼ばれ、俺は振り返った。


「今日は僕がこの部屋で寝ます。」


「・・・はい?」


八戒さん?今何とおっしゃいました?


「今日は僕がこの部屋で寝ます。
何か異存はありますか?」


ニッコリ笑顔で言われ、俺は何も言えなくなった。


「・・・無いです。」


既にお手上げモードの俺。


「ほら、さっさとの所に行ったらどうです?」


「・・・さんきゅ。」


それだけ言うと、俺は部屋から出て行った。




、入るぞ〜〜。」


中に入ったら、窓際で月を見上げているの姿が目に入った。


「あ、悟浄。どうした?」


「ん・・・何か八戒に追い出された。」


「・・・此処で寝るのか?」


「そう言う事。」


そう言うと、俺はベッドに腰を降ろした。


「八戒に感謝しなきゃな・・・」


「あ?何か言ったか?」


「何も。」


そう笑顔で返されたら、俺は何も言えません。


「んじゃ、どうせなら俺の話でも聞くか?
俺の過去話でもさ。」


備え付けの椅子に腰を掛けながらは言った。


「俺の事話しておきたいからさ。」


始めて、俺はの過去の話を聞くこととなった。




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