観世が居なくなってから、俺は必死でどうやって言い出そうか、イメージトレーニング。
神の力を取り戻したし、俺が妖怪になる事もない。
って・・・彼奴等この事知ってんのか?
千の妖怪の血を浴びたら妖怪になるって・・・
知ってたとしても、如何にもならないとか考えてねぇだろうな?
「・・・まだ起きてたんですか?」
そう、思考を巡らせてると八戒が部屋に入ってきた。
「あ・・・あぁ・・・何となく・・・」
って、今目見られたらヤバイ!!
八戒の方は向かずに、窓の外でも見てよう。
てか、グラサンねぇか?(ねぇって。)
「・・・、僕の話少し聞いてくれませんか?」
「何?」
顔は窓の外を向いたまま俺は聞いた。
「とても言い難い事なんですが・・・
これから先、妖怪が現れても戦いに加わらないで下さい。」
は?
「何で?」
八戒の言葉に思わず顔を向けようとするが、必死で抑える。
「千の妖怪の血を浴びると妖怪になるという話があるんですよ・・・」
やっぱり八戒、知ってたんだ。
「それはただの言い伝えじゃないんですよ。
実際・・・僕は千の妖怪を殺し、妖怪になりました。」
「八戒が・・・?」
八戒が妖怪だって事は知ってた。けど・・・何で・・・?
「僕は昔、大切な人を失いました。
百眼魔王という妖怪に囚われ、その子供を孕んでしまったんですよ。」
八戒はポツリ、ポツリと語り始めた。
「僕は我を忘れて、妖怪を殺しました。
ようやく会えた時には・・・彼女は・・・僕の前で自害しました・・・」
・・・妖怪の子供を身篭り、愛する人の元に戻れないから・・・か・・・
「その後も僕は妖怪を殺しつづけました。
妖怪だけじゃないです。彼女を妖怪に突き出した、人間も。」
それだけ、八戒はその人の事を愛していたんだな。
俺は、ベッドから立ち上がり、八戒の頭をそっと抱き締めた。
「・・・?」
「ん・・・何となく。辛そうだったから。」
勿論、八戒と目を合わせないように。
「僕はもう、大丈夫なんですよ。
あの三人が居ましたからね。」
そう言って、八戒は俺から見を剥がした。
「には妖怪になってもらいたくないんです。
僕だけじゃない。三蔵達もですよ。」
「大丈夫。」
俺がそう言うと、八戒は俺の事を見上げた。
八戒に向けて、俺は目を細めて微笑んだ。
「俺は大丈夫。妖怪にならないから。」
どう話そうかなんて考えてる暇なんてない。
俺の事心配してくれる人が居るんだ。
だったらこの事、さっさと伝えないと。
「・・・その目・・・」
細めた目を開けると、八戒が驚いた表情をした。
当たり前か。
「八戒、三蔵達まだ起きてる?」
「え・・・えぇ。多分起きてると思いますよ・・・」
八戒の言葉を聞いて、俺は部屋のドアへと向った。
「八戒も。皆に話さなきゃいけない事があるから。」
そう言って、俺と八戒は三蔵達の部屋へと足を向けた。
部屋のドアを開けると、中から煙草の香りがした。
ハイライトと、マルボロの匂い。
「皆に話したいことがある。」
真っ直ぐに見据えて、俺は言った。
勿論、俺の目の色に驚く三人。
その事は今は後回し。
言って受け入れて貰えなかったら、俺は心を閉ざすだけ。
そう思い、俺は話し始めた。
ノックも無しに、が俺達の部屋に入ってきた。
「皆に話したいことがある。」
俺等を真っ直ぐに見据えて言う。
それよりも、俺等はの目の色が違う事に驚いた。
「・・・その目・・・」
「ん。その話は後。」
悟空の言葉を即座に切り、は備え付けの椅子に腰を掛けた。
「取り敢えず一言。俺は妖怪にはならない。」
突然言い出した言葉に、俺等は訳が解からなかった。
「どう言う事か説明しろ。。」
「解かってる。そう焦んなよ。三蔵。」
は自分のポケットから煙草を取り出して、ゆっくりと火を点けた。
「俺は、神の血を引く人間なんだ。」
神の血を引く人間?
どう言う事だよ。
「俺の前世は、神・・・まぁ天上界の人間って事。
俺はこの目の色、金晴眼の所為で不浄の輩と罵られてたんだ。
不浄の輩の所為か、俺は幼い時から戦闘の訓練を積んで来た。
訓練を積んで、誰にも負けなくなったある日、俺は闘神の命を受けた。」
「闘神って・・・?」
解からない単語が出てきた為、悟空はに聞いた。
口には出さないけど、俺も解かってない。
「天上界は無殺生を基本としていたんだ。
それでも、天上界・・・もしくは天帝に害があるとみなされたら、闘神太子を使って相手を殺す事が出来る。
言わば、戦う為だけの人形。
俺は心を閉ざし、くだらない任務を遂行していたんだ。」
そう言うと、は紫煙をゆっくり吐き出した。
「でも、そんなある日、俺は一人の子供に出会った。
俺と同じ目ぇした幼い子供。なのに、足枷と手枷がついてた。
それだけ、天上界にとって危険な子供だって事だったんだ。
でも、その子供のお陰で、俺は少しずつ変わる事が出来た。
ちらほらと笑う事も出来た。
ま、俺の笑顔見て驚いてた奴も居たけどな。
笑わない、本当に人形のような奴だったから。」
苦笑を浮べる。
「信頼できる仲間も出来た。
幸せだった。本当に。
でも、幸せって長くは続かなかった。
・・・ある日俺は、罪人に荷担した者として、殺された。
他の仲間も・・・同じように・・・
でも・・・」
そう、言葉を切ると、は悟空を見つめた。
「俺と最初に出会った幼い子供は殺される事なく、下界に幽閉されたんだ。」
そっと、悟空に微笑んだ。
「何で、お前は前世の記憶なんざあるんだ?」
「前世の記憶なきゃ、俺は妖怪になってた。
神の力が無い俺は、只の人間でしかない。」
そう言ったは、少し悲しげな顔をしていた。
「本当は・・・こんな記憶・・・いらなかった・・・
辛い事、思い出しすぎて・・・
最初は信じられなかった。
でも、だんだんと『あぁ、これは俺なんだ』って思えてきた。
だから、全てを受け入れなければいけない・・・」
の辛い表情。俺は見ていられなくなった。
「こんな俺でも・・・まだ傍に居て良いか・・・?
お前等と一緒に・・・旅続けてても良いか・・・?」
すっごく不安げな顔で俺等を見る。
てか、答なんて一つしかない。
「勿論。良いに決まってるだろう?」
俺は笑顔での頭を撫でた。
「悟浄・・・」
「手前ぇが何者なのかなんか関係ねぇ。
手前ぇは手前ぇだろ?」
三蔵の口の端が少し上がっているように見えるのは俺だけか?
「そうそう。俺はともっと一緒に居たい!!」
「そうですよ。
じゃなければ、が妖怪になる事を恐れる訳ないじゃないですか。」
「皆・・・ありがとう・・・
俺・・・此処に居ても・・・良いんだな・・・」
「さっきからそう言ってるだろう?」
「あり・・・が・・・とう・・・っ」
の初めて見る涙に少し戸惑いながらも、俺は頭を撫でた。
「俺・・・昔・・・から・・・この目の色と髪の色でっ・・・周りから否定され続けたんだ・・・っ
だから・・・こうやって仲間が出来たのが・・・凄く・・・嬉しい・・・っ」
嗚咽を抑えながら俺等に話そうとする。
は涙を拭いて、顔をあげた。
「皆・・・ありがとう・・・」
今までに見たことの無いような笑顔では笑った。
「それと・・・ごめんな・・・」
急には謝った。
「何に対しての謝罪だよ・・・ι」
俺等は訳が解からずに居た。
「俺・・・さ・・・異世界から来ただろ・・・?
だからさ・・・何時かは別れるから、自分の事話さなくてもいいって思ってたんだ。
でも、もう元の世界・・・俺が居た世界には帰れないからさ。」
「は?」
「俺が神の力を取り戻した時点で、帰れなくなったのは決定したんだ。
俺はずっと、此処に居る。
この世界で生きる。そう決めたんだ。
これで、心置きなく旅を楽しめる!!」
そう言って元気良く椅子から立ち上がる。
・・・さっきまで泣いてたよな?
「本当、最初に出来た仲間がお前らで良かったよ。」
そう言ってまた微笑んでくれた。
「っと・・・俺は部屋に帰って寝るな。
何か疲れた・・・」
そう言ってはドアの方に向った。
「・・・これからも宜しくな。
んじゃ、おやすみ。」
笑顔では部屋の扉を閉めた。
「・・・俺等も寝ますか・・・」
そう言って俺は自分のベッドの方へと足を伸ばした。
「悟浄。」
「ん?」
八戒に呼ばれ、俺は振り返った。
「今日は僕がこの部屋で寝ます。」
「・・・はい?」
八戒さん?今何とおっしゃいました?
「今日は僕がこの部屋で寝ます。
何か異存はありますか?」
ニッコリ笑顔で言われ、俺は何も言えなくなった。
「・・・無いです。」
既にお手上げモードの俺。
「ほら、さっさとの所に行ったらどうです?」
「・・・さんきゅ。」
それだけ言うと、俺は部屋から出て行った。
「、入るぞ〜〜。」
中に入ったら、窓際で月を見上げているの姿が目に入った。
「あ、悟浄。どうした?」
「ん・・・何か八戒に追い出された。」
「・・・此処で寝るのか?」
「そう言う事。」
そう言うと、俺はベッドに腰を降ろした。
「八戒に感謝しなきゃな・・・」
「あ?何か言ったか?」
「何も。」
そう笑顔で返されたら、俺は何も言えません。
「んじゃ、どうせなら俺の話でも聞くか?
俺の過去話でもさ。」
備え付けの椅子に腰を掛けながらは言った。
「俺の事話しておきたいからさ。」
始めて、俺はの過去の話を聞くこととなった。
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