俺が目を覚ますと、そこには観世音菩薩が居た。

第七章『神の力』


「・・・まだ居たのかよ。」

俺は嫌そうにそう言った。


「お前が眠ってから1分も経ってねぇよ。」


俺敵には何時間も向こうに(夢の中?)に居たような気が・・・


「・・・全て思い出したか?」


「あぁ・・・が話してくれた。」


俺の前世・・・この髪と瞳がお前の所為なんて俺は思ってねぇから・・・


「っと・・・観世音、から伝言。」


「あ?何だ?」


「『約束、守ってくれてありがとう』だとよ。」


ちょっと着色。
俺の言葉との言葉を合わしただけだけど・・・


「そうか・・・」


哀しそうな観世音の顔。
・・・こいつの悲しい顔も嫌だ。
俺は直感的にそう思った。


「観世音・・・いや、観世。
俺、これからどうすれば良いんだ?」


何となく観世と呼んでみたくなった。
俺がそう呼んだら、驚いた様に目を見開いた。
・・・気分悪!!


「俺が元の世界に戻れない事は解かった。
どう足掻いたって、もう戻れねぇんだろ?」


観世の行為が見つかったら、絶対罰せられる。
それだけは嫌だ。


「戻りてぇなら、今すぐにでも送るぞ。」


「別に、あの世界に未練は無い。」


此処で死んだって別に良いし。


「これ以上、他世界行き来して、それが上にバレたらお前が大変だろ。」


その発言にまた観世は目を丸くした。


「そこまで知ってたのか・・・」


「全部聞いた。
何で俺が此処に居るのかも、この髪と目の意味も。」


全て知った。
俺は人間であって人間じゃない。


「んで、お前はどうするんだ?」


「兎に角、神の力取り戻す。
それが先決だろ?」


そう言って俺は観世から貰った剣に・・・水萍すいひょうに手を伸ばした。


水萍すいひょう、目覚ましてくれるか?」


俺がそう言うと、剣の姿だった水萍すいひょうが、人形になった。って・・・


「何で軍服な訳?」


「私の勝手だ。」


うわ〜〜・・・元上司に対する第一声がそれですか?(元だけどな。)


「私の事も、思い出したのか?」


「じゃなきゃ、お前の名前呼ばねぇぞ?」


そう言って、俺は水萍すいひょうに微笑みかけた。


「本当に後悔はしないな。」


「しない。
俺は此処に居たい。彼奴等四人が好きだから。
それに・・・観世も好きだから。」


さっきまでは好きくなかったけど・・・
約束を守ってくれた奴まで嫌うほど、俺の心は狭くない。


「・・・解かった。」


そう言って、水萍すいひょうは俺の額に手を当てた。観世と同じように。
そう、観世を同じように俺の中に何かが入り込んできた。
それはさっきとは違い、温かい光だった。


「・・・水萍すいひょう。ありがとな。ずっと傍に居てくれて。
俺に神の力を戻してくれて。」


俺は微笑みながらそう言った。


「これが私の使命だ。」


「そっけねぇな。」


水萍すいひょうを見ながらケラケラ笑う俺。


「ちょっと良いか?」


「あ?何だよ観世?」


観世は俺の左耳を掴んで、何かを刺した。
刺したって・・・


「いってぇ!!」


「神通力の制御装置だ。」


神通力の制御装置?って、ピアスじゃん。


「今まであけてなかった綺麗な耳が・・・」


耳を擦っていると、観世に顎を掴まれた。


「こ・・・今度は何だよ?」


じっと見つめてくる観世の瞳。
てか、顔近すぎ・・・ι


「お前・・・目が・・・」


「目?」


俺は自分のバッグから手鏡を取り出した。


「・・・なんだよ・・・これ・・・」


鏡に映った俺の瞳は・・・
右目が金晴眼・・・左眼が・・・紅。
これも、神の血の所為なのか・・・?


「髪の色が変わってねぇから全然気が付かなかった・・・」


観世は溜め息混じりにそう言った。
ちょっとマテ。


「このピアス取ったら俺の髪色何になんだよ?」


「・・・碧。」


マジですか?
ま、の生まれ変わりだから当たり前っちゃあたり前?


「・・・金晴眼だけ残ったか。」


こればっかりは防ぎようがないのか、なんなのか・・・
俺はこれからこの目と向きあって行くんだな。


「別にいい。この色気に入ってるし。
紅も今じゃ俺のお気に入りだから。」


血の色だろうが何だろうが、これは俺の物なんだ。
金晴眼も。太陽を思わせる温かい色。
どっちも大切かも。


「取り敢えず・・・彼奴等に説明しなきゃな・・・」


面倒な事が一つ増えた気がした。
ま、話して受け入れてくれるかわかんねぇけど。


「俺は帰るぞ。」


「観世、帰るのか?」


「何時までも此処に居たって仕様がねぇだろ?」


確かに・・・


「生きろよ・・・。」


そう言って観世は帰って行った。


「・・・水萍すいひょう。お前はずっと人形保てるのか?」


「無理だ。」


だろうな。


「私は剣に魂を吹き込まれただけの物。
使命を果たせば、また剣に戻る。」


「もう、俺とは話せないのか?」


それは何か嫌だ。


「・・・今、私は必要ない。
お前には、仲間が居るのだろう?」


水萍すいひょう・・・」


「例え姿形が変わろうと、ずっと傍に居る。
私はそう約束したからな。」


「さんきゅ、水萍すいひょう。」


俺がそう言うと、微笑を浮べて水萍すいひょうは剣の姿に戻った。


「・・・傍に居てくれてありがとう。水萍すいひょう。」


剣を抱き締めながら俺は呟いた。



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