彼女が連れてきたお気に入りの場所。そこは人気の無い緑が生い茂った芝生の上にある一つの小屋。


「私のお気に入りの場所なんだ。」


は小屋のドアを開けた。小屋の中に有る物にエドは驚きを隠せなかった。


「これは・・・・!!」


エドの目の前にあったのは人体錬成の為の錬成陣。その周りにあるのは血痕。


「やっぱりエドでも解かるんだ・・・」


の顔はさっきよりも冷静で冷たい目をしていた。


「お前・・・まさか・・・・」


「此処で人体練成をしたんだけど・・・失敗した。んで、左腕と右足を持ってかれた。」


序章四『過去の過ち』


は淡々と語った。人体練成をした理由を。エドは黙って聞くしか出来なかった。自分と同じ、只純粋にもう一度あの笑顔に会いたかっただけ。彼女は言い終わるとその場に腰を降ろし、膝を抱えて俯いた。


「お前も同じなんだな・・・」


此処まで話されたら、彼も全てを話す事を決めた。


「俺も、お前と同じように母親の人体練成を試みた。やっぱり失敗に終った。」


顔を上げ、は立っているエドの横顔を見つめた。彼は前を見たままだった。


「俺は、代償に左足と、一緒に練成をしていた弟を持っていかれた。」


彼は徐に自分の右腕を押さえた。


「その後すぐに、部屋の中にあった鎧に、弟の魂を練成した。変わりに右腕を・・・・」


彼の横顔は悲しげで、だが、その目には決意が満ちていた。


「その日から決めたんだ。弟を必ず元の身体に戻すって。だから軍に入った。」


「私は・・・あの日、助けてくれた人の役に立つために軍に入った。」


「大佐の為にか?」


エドは座るの視線を落とした。


「うん。血みどろの私を抱えて、病院まで運んでくれたんだもん。」


言い終わると彼女は腰を上げ、横に居るエドを見つめた。


「もう出ようか・・・?何か寒くなってきたし・・・」


「あ・・・あぁ。」


彼の戸惑う顔に、微笑を零した。初めて見た彼女の笑みに、エドもつられて口の端を上げた。




その後、エドは列車に乗ってリゼンブールに戻って行った。また会う約束をし・・・・




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