第四章『戦闘開始!』


エド達は裏路地に逃げ込み、取り敢えずはスカーを足止めをした。


「これで大丈夫だね。」


「だな。」


そう安心した三人だが、次の瞬間アルが錬成した壁が粉々に砕け散った。


「マジかよ・・・」


逃げ出す三人。だが、スカーが物を壊し、彼等を足止めした。


「・・・冗談だろ・・・?」


スカーとエド達の距離が縮まる。


「あんた何者だ?なんで俺達を狙う?」


「貴様等『創る者』が居れば『壊す者』いると言うことだ。」


訳のわからない事を言われ、三人は顔をしかめた。エドは両手を合わせ、手近にあったパイプに手を伸ばした。


「やるしかねぇ・・・てか」


エドの掴んだパイプが剣に変形し、アルは体術の構えをした。は腰に掛けていた銃に手を伸ばし、弾丸を確認した。


「いい度胸だ。」


暗い闇の中、スカーの微笑が不気味に見えた。


「いくぞ!!」


エドの掛け声と共に三人はスカーに襲い掛かった。


「だが、遅い!」


スカーはアルの懐に入り、鎧を破壊した。


「アル!!」


アルが破壊された事に気が立ったのか、エドは叫びながらスカーに襲い掛かった。


「遅いと言っている。」


スカーがエドの腕を掴んだ瞬間、青白い光が放たれた。エドはその反動で、転んでしまった。


、援護頼む。」


「言われなくてもやるって。」


「兄さん!駄目だよ・・・逃げたほうが・・・」


「馬鹿野郎。お前を置いて逃げられるか!!」


「同感。」


は右手に銃を握ったまま、エドに言った。彼は立ち上がり、コートと手袋を投げ捨てた。
エドは機械鎧を剣に変形させ、再度スカーに向った。


「まずは鬱陶しい右腕から破壊させてもらう。」


エドはスカーに右腕をとられ、青白い光と共に、右腕が粉々に砕け散った。


「エド!!!・・・の野郎!!!」


はスカーに向って銃弾を発砲した。全ての銃弾がかわされ、肉弾戦に突入。軍服の上着が邪魔だったのか、は徐に脱ぎ、投げ捨てた。


「貴様も機械鎧か。」


「だからなんだよ。言っとくけど、殺すよ。あんた。」


の目は鋭く、エド達は身震いをした。


「せい!!!」


の攻撃を紙一重でかわすスカー。攻撃が喰らわず、は焦った。少し幅をあけるように、彼女は後ろに下がった。そして両手を合わし、風を起こすように手をクルクルと回した。そうすると、彼女の髪が靡き始めた。


「俺の錬金術、喰らっとけ!!」


彼女が片手を伸ばすと、風はそのままスカーに向った。切り裂くような刃に変わり。も錬成の反動で所々掠り傷を負った。機械鎧の右足が露になった。


「まだまだいくぞ!!」


に取り巻いた風は止む事無く、そのままスカーに襲い掛かった。だが、彼も紙一重で彼女の攻撃をかわした。


「うりゃ!!」


地面に両手を付き、下から蹴り上げるような感じにスカーの顔面を狙った。だが、その攻撃はかわされ、右足をつかまれた。そして青白い光と共にの右足がバラバラに破壊された。


「っく・・・!!」


「錬成されるのも厄介だ・・・その腕も破壊させてもらう・・・」


スカーはの左腕に手を伸ばし、エドと同じように破壊した。


!!!」


エドとアルの叫び声が裏路地に木霊した。


「神に祈る間をやろう・・・」


スカーはの近くに歩み寄り、右手をかざした。


「・・・神様なんて信じてねぇ・・・」


「そうか・・・」


「それと・・・エドとアルは逃がしてくれ・・・・」


は俯きながらスカーに言った。


「何言ってんだよ!!」


「そうだよ!!!!」


「これ以上・・・大切な人を無くしたくないんだ・・・」


はエドとアルに力無く微笑んだ。


・・・」


「殺すならさっさとしろ・・・」


「先に言っておく。鋼の錬金術師は殺す。だが、もう一人は生かしておく。」


「出来れば二人ともがよかったな・・・」


「やめろ・・・やめろ・・・やめろ!!!」


――ドン!!


エドの叫びと共に一つの銃声が鳴り響いた。振り向いた先に居たのはロイだった。


「そこまでだ。」


「お兄ちゃん・・・」


「危ないところだったな。鋼の、。」


彼女達の振り向いた先には、東方司令部の面々がいた。


「大佐!こいつは・・・」


「その男は一連の国家錬金術殺しの容疑者・・・
だったが、この状況から見て、確実になった。
タッカー邸の殺害事件も貴様の犯行だな?」


ロイのその言葉を聞いたエドはスカーを睨みつけた。


「・・・錬金術師とは元来あるべき姿の物を、異形の物へと変形する者・・・
それすなわち万物の創造主たる神への冒涜。
我は神の代行者として裁きをくだす者なり!」


「それが解からない。
世の中に錬金術師は数多いるが、国家資格を持つ者ばかりを狙うというのはどういう事だ?」


「・・・どうあっても邪魔をすると言うのならば、貴様も排除する。」


「面白い。」


ロイはリザに向かい銃を投げた。


「マスタング大佐!」


「お前達は手を出すな。」


そう言って、発火布をつける。


「マスタング・・・
国家錬金術師の?」


「いかにも!
『焔の錬金術師』ロイ・マスタングだ。!」


「神の道に背きし者が裁きを受けに自ら出向いてくるとは・・・
今日はなんと佳き日よ!!」


「私を焔の錬金術師と知ってもなお、戦いを挑むか!!
愚か者め!!」


指を擦ろうと、ロイは手を前に出した。


「ちょ・・・馬鹿兄貴!!待てコラ!!!」


は指輪をしている右手を水溜りの中に入れた。
リザもの行動に何か気付いたのか、ロイを足払いした。


「おうっ!?」


間一髪でスカーの攻撃を避ける(?)ロイ。
次の瞬間、リザは銃を取り出し、スカー目掛けて発砲した。
そして、の錬成した水に押される。


「いきなり何をするんだ君は!!」


こけたロイはリザを見上げながら叫んだ。


「雨の日は無能なんですから下がっててください。大佐!!」


「まったく・・・解かってやってんかのか?馬鹿兄貴。」


「あ、そうか。こう湿ってちゃ火花出せないもんな。」


皆から貶され、ロイはいじけた。
体制を立て直したスカーは叫んだ。


「わざわざ出向いて来た上に焔が出せないとは好都合この上ない。
国家錬金術師!そして我が使命を邪魔する者!
この場の全員滅ぼす!!」


「やってみるがよい。」


スカーの後ろに、大きな影が近付き、攻撃をした。


「新手か・・・!!」


「ふぅーむ・・・我輩の一撃をかわすとはやりおる、やりおる。」


出てきた新手に周りの顔が少し強張った。


「国家に仇なす不届き者よ。
この場の全員を滅ぼす・・・と言ったな。笑止!!ならばまず!!この我輩を倒して見せよ!!
この『豪腕の錬金術師』アレックス・ルイ・アームストロングを!!」


背後では建物がくづれる音。
なおも、無能と言われた事に対し落ち込むロイ。


「・・・少佐・・・やっぱり強いと言うか・・・なんというか・・・」


呆れ顔でアームストロングの戦いを見る


「少佐!余り市街を破壊せんで下さい!!!」


ハボックはアームストロングに向って叫んだ。


「何を言う!!
破壊の裏に想像あり!創造の裏に破壊あり!!破壊と創造は表裏一体!!
壊して創る、これすなわち大宇宙の法則なり!!!」


上着を投げ捨てるアームストロング。


「・・・何故脱ぐ?」


「て言うか、なんて無茶な錬金術・・・」


呆れた感じでアームストロングを見る面々。勿論スカーも例外じゃない。


「なぁに・・・同じ錬金術師なら無茶とは思わんさ。
そうだろう?スカーよ。」


「錬金術師・・・奴も錬金術師と言うのか!?」


「やっぱりそうか・・・」


エドは納得したように呟いた。


「錬金術の錬成課程は大きく分けて『理解』『分解』『再構築』の三つ。」


「なるほど。つまり奴は二番目の『分解』の課程で錬成を止めていると言う事か。」


「自分も錬金術師って・・・じゃぁ、奴の言う神の道に自ら背いてるじゃないですか!」


話を理解したハボックはロイに向って叫んだ。


「ああ・・
しかも狙うのは決まって国家資格を持つ者と言うのは一体・・・?」


そこが理解できず、ロイは頭を抱えた。


「ハボック・・・取り合えずの護衛をしろ。
あの状態で巻き添えになったら大変だ。」


「解かりました。」


「兄貴、俺は大丈夫だ!
てか、ハボック少尉!!私に近付くな!!」


「何言ってるんスか・・・」


の忠告を無視し、ハボックはの方に走った。


「って!!!」


何かにはじかれたようにハボックは転んだ。


「だから来るなと忠告したのに・・・」


溜め息を吐きながらは言った。


「一体何スか・・・?」


「水の壁だ。
この状態じゃ動けないから防御しているんだ。水の錬成は私の得意分野だからな。」


そう言ったの右手は常に水溜りの中にあった。


「なるほど・・・」


納得したのか、ハボックはと少し距離を置いて立った。
他の物も、スカーの隙を伺うように銃を構えた。


――ドン!!ドン!!ドン!!


リザはライフルの標準をスカーに向け、銃弾を発砲した。


「やったか!?」


「早いですね。一発掠っただけです。」


サングラスが落ちたスカーの目に、皆が驚いた。


「褐色の肌に赤目の・・・!!」


「イシュバールの民か・・・!!」


スカーを見ていたロイの顔が強張った。
周りの皆も同じような複雑な顔をしていた。


「・・・やはり、この人数相手では分が悪い。」


「おっと!この包囲から逃れられると思っているのかね。」


スカーの周りには憲兵が囲んでいた。
彼はそれに目もくれず、右手を地面に当てた。次の瞬間、地面が分解され、スカーは逃げ出した。


「あ・・・野郎、地下水道に!!」


「追うなよ。」


「追いませんよ。あんな危ない奴。」


ハボックは銃をしまった。


「やっと終ったか・・・」


そう言って。は右手を持ち上げた。


「お?やっと終ったか?」


路地の隙間からヒューズが顔を出した。


「ヒューズ中佐・・・今まで何処に?」


「物陰に隠れてた。」


親指を立て、キッパリと言い切るヒューズ。


「お前なぁ、援護とかしろよ。」


「そうですよ!!私、こんな状態なんですよ!!」


「煩るせぇ!!俺みたいな一般人をお前等みたいなデタラメ人間の万国ビックリショーに巻き込むんじゃねぇ!!」

ロイとの言葉など無視し、ヒューズは周りの憲兵に指示を出した。



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