無事にセントラルに着いたヒューズと


「やっとついた・・・」


「さっさと行くぞ。自宅にな。」


嬉しそうにの車椅子を押すヒューズ。


「え、軍法会議所に寄らなくていいの?」


「今日は直帰だ。」


早くエリシアに会いたいしな♪と呟きながら愛娘の写真にキスをするヒューズを、呆れ顔で見る


「あの、すみません。」


突然、後ろから声を掛けられ、振り返る二人。


「此処に行きたいんですけど・・・どうやって行けば良いのか解からなくて・・・」


話し掛けてくる一人の夫婦。の顔色が一瞬にして変わった。


「此処は・・・・って行けば良いですよ。?どうした。顔色が悪いぞ。」


?」


女性の眉が少し上がった。


「パパ・・・」


余計な事を・・・とブツブツいいながら、コートについているフードで顔を隠した。


と言ったな?」


「はい・・・そうですが・・・?」


女性はの顔を覗き込むように見た。それを必死で避ける


・マスタングだな?」


「いえ、私は・ヒューズです・・・」


額に冷や汗をかきながらどうにか逃げようとする


・・・(怒)」


「ごめんなさい・・・師匠ι」


勢いよく頭を下げる。次の瞬間、自由の利く右腕をつかまれ投げ飛ばされた。


「し・・・師匠ι」


「私に嘘を付くとはいい度胸じゃないか。。」


指を鳴らしながらジリジリと近付くの師匠。


「ご・・・ごめんなさいごめんなさい!!もう嘘付きませんから!!許してください!!!」


「問答無用!!」


「うぎゃ〜〜〜〜!!!」


最強乙女、死亡。(笑)


第六章『師匠』


「師匠って・・・もしかして、イズミ・カーティスさんか?」


「そうだが?」


「いや〜・・・此処で会ったのも何かの縁ですね。今日の宿は決まっているんですか?」


「いや・・・さっき着いたばかりだから・・・」


「じゃぁ是非家に来ませんか?宿代は要りませんよ!!」


「は・・・はぁ・・・」


ヒューズの気迫に押される最強主婦、イズミ。そして今日の宿はヒューズ家に決定。


「パパ・・・車椅子に乗っけて・・・動けない・・・」


「あぁ、悪い。忘れてた。」


「忘れんなよ・・・ι」


最強乙女からヘタレに改名。(笑)無事に車椅子に乗せてもらい、ヒューズ家へ向けて出発。


「ところで。何故車椅子に乗っているんだ?」


「え・・・いやぁ・・・東方でちょっとした事件があって・・・」


「ほう・・・それで、腕と足はどうした?」


いきなり無言になる。顔には困惑の表情があった。


・・・?」


「こいつの足と腕は・・・」


「パパ!!」


ヒューズが言おうとしたのをは阻止した。


?」


「私の腕と足は東部の内乱で巻き込まれて、失いました。師匠の所から帰ってすぐの事です。」


「そうか・・・」


「今は機械鎧にして軍に所属してます。勿論、兄の役に立つた為に。」


辛い表情で話すに、イズミはこれ以上何も言わなかった。
ヒューズとカーティス夫妻は喋っていたが、だけは家に着くまで無言のままだった。


「ただいま〜〜〜♪」


「パパ、お帰り。」


トテトテと歩いてくるのはヒューズの愛娘、エリシアだった。


「エリシアちゃ〜んvVただいまでちゅ〜〜vV」


「パパ、お髭がくすぐったい〜〜〜。」


エリシアの姿を見るなり、抱き付き頬擦りをするヒューズ。


「あ、お姉ちゃんだ!!」


ヒューズの腕から離れ、今度はの元にやってきた。


「エリシア、久しぶり。身長随分伸びたな。」


「うん。お姉ちゃん、何で車椅子なの?」


「ちょっとな・・・」


エリシアの無垢な質問に眉をひそめる


「あら、あなた。おかえりなさい。」


「ただいま。グレイシア。」


「グレイシアさん、お世話になります。」


「あら、ちゃん。また機械鎧の整備?」


「えぇ・・・まぁ・・・」


「もうそろそろ私も『ママ』って呼んでくれないかしら?」


「それはちょっと・・・ママにしては若いですし・・・」


苦笑気味のに対し、グレイシアは満面の笑み。


「あら、マースがパパなら私はママになるんじゃないかしら?」


「そうですけど・・・じゃぁ・・・お言葉に甘えさせていただきます。」


「是非そうしてね。」


「立ち話もなんだ。ささ、家の中へどうぞ。」


「では、お邪魔します。」


カーティス夫妻はヒューズの後をついていった。


「・・・ママ・・・」


「何?ちゃん?」


「やっぱり呼べませんよ・・・ι」


「徐々に・・・ね。さ、私たちも中へ入りましょう。」


の車椅子を押し、グレイシアとエリシアは家の中に入った。
リビングに着き、グレイシアの入れたコーヒー(は紅茶)を堪能していた。


「そんな幼い時に弟子入りしたんですか。」


「あぁ。確か9歳の時だったか・・・」


「いえ。無人島で誕生日を迎えましたから、正確には10歳です。」


「無人島・・・・」


の無人島発言に固まるヒューズ家。


「国家最年少で資格を取りたかったのに・・・彼奴にさき越されたし・・・」


「彼奴とは?」


「エドワード・エルリックですよ。」


「今はの彼氏だけどな。」


「パパ!!余計な事言わないの!!」


照れながら必死に叫ぶ


「エドワード・・・リゼンブールのエルリック兄弟か?」


「はい・・・そうですけど・・・お知り合いですか?」


「あの馬鹿弟子も国家資格を・・・」


「弟子って・・・・もしかして・・・」


「あぁ、もしかしてだ。」


「嫌な偶然だな・・・」


そう呟きながらは頭を抑えた。


「あ、パパ。そろそろ整備士の所に行って来るね。」


そう言いながら車椅子に付けていた松葉杖を手に取った。


「そんなに急がなくても明日でも良いだろう?護衛も必要だし・・・」


「早めに直したいんだ。早くエドと合流したいし。」


「お姉ちゃん出かけちゃうの?」


立ち上がるの足にしがみつくエリシア。


「すぐに戻ってくるから。」


「エリシアも行く〜〜!!」


「護衛の手配は明日できる。だから明日にしろ。これは上司命令だ。」


「職権乱用・・・でも、俺は行くよ。こんな所でモタモタしてられない。」


「じゃぁ、エリシアがお姉ちゃんの護衛になる!!ね、パパ駄目?」


エリシアの上目使いにヒューズは・・・


「今回だけだぞ・・・」


あっさりと身を引いた。(笑)


「でも、気をつけろよ。万全の身じゃないんだからな。何かあったら・・・」


「ちゃんと連絡する。大丈夫だって。昔っから過保護なんだから・・・パパは・・・」


行ってくると一言残し、とエリシアは出かけた。


「エリシア、離れるといけないから、コートの裾握っとけよ。」


「うん!!」


元気よく返事をするエリシアを微笑みながら見つめる。一緒に歩く事小五分。の整備士の所に着いた。


「こんにちは〜〜〜」


「お、ちゃん。久しぶりだね。今日は妹連れか?」


「こんにちは!!」


「こんにちは。お名前は?」


「エリシア!」


元気よく自分の名前を言うエリシア。


「じゃぁ、エリシアちゃんはおばさんと少し遊んでようか?お姉ちゃんはお話があるから。」


「うん。」


そう言うと、女性の後についていくエリシア。


「今回は派手にやったなぁ・・・」


「ごめんな、おじさん。丹精込めて作ってもらった機械鎧粉々にしちゃって・・・」


「いいって。気にする事ないって。」


「んで、早めに直して貰いたいんだけど・・・どのくらい掛かる?」


「そうだな・・・ま、一週間って所だな。」


「一週間・・・」


随分長いと感じ、は落ち込んだ表情をした。


「だが、ちゃんにぴったりなの俺が作っておいたから、すぐに装備できるぞ。」


「本当?」


「あぁ。その前に一応見てもらわないとな。」


そう言って店主が取り出したのは真新しい左腕と右足の機械鎧だった。は腕のパーツに手を伸ばし持ち上げた。


「軽い・・・」


「そうだろう?前回の1.5倍は軽くなっているんだ。強度もそれなりに上げてみたんだ。」


「さっすがおじさん。頼りになるね。」


「早速付けてみるか?」


「うん!!」


満面の笑顔では頷いた。


「っと・・・その前にサイズを確かめなきゃな。」


「そうだった・・・」


中の工房へ入り、は上着とズボンを脱いだ。


「サイズはピッタリだな。前の点検から身長伸びてないだろう?」


「それは言わないで・・・ι」


店主は腕まくりをし、接続に必要な器具を取り出した。


「さって・・・装着といきますか・・・」


「う・・・うん・・・」


装着時の痛みは大の大人でも悲鳴をあげるもの。だが、は歯を食いしばり、痛みに耐えた。


「よし。完了。どうだい?調子は?」


「前のよりも動きやすい。しかも軽いし。」


「ちゃんと手入れするんだぞ。」


「はーい。」


身支度をし、エリシアの所に向う


「お姉ちゃん、ご用時おわったの?」


「終ったよ。帰りは手繋いで帰れるぞ。」


「わーい」


店の店主に別れを告げ、達は店を後にした。


「エリシア、どこか寄っていこうか?」


「何処に?」


「そうだな・・・エリシアは何食べたい?」


「んっとね・・・パフェ!パフェ食べたい!!」


「よし。決まりだ!」


エリシアの手を引き、喫茶っ店に急ぐ二人。喫茶店は中央広場に面している所にあった。達は店の窓際に座った。


「えっと・・・ミニサイズのパフェ一つと・・・レモンティーとオレンジジュース。」


「かしこまりました。」


ウェイトレスはそう言うと厨房に戻って行った。間も無くすると、頼んでいた物が全てテーブルに運ばれてきた。


「いただきまーす。」


スプーンを片手に可愛らしく食べるエリシア。


「ほら、ほっぺたにクリームがついてるぞ。」


はエリシアの頬に付いたクリームを親指で拭い、自分の口元に持っていった。突如響いた悲鳴。は広場を見た。


「武装軍団か・・・」


そうが呟いた瞬間、一発の銃弾がエリシアに向けて発砲された。


「エリシア!!」


両手を合わせ、机をエリシアを守る盾のように錬成をした。


「エリシア、大丈夫か!!」


「う・・・うん・・・」


徐に立ち上がり、エリシアを抱きかかえた。そして近くのウェイトレスに話し掛けた。


「すみません。この子を少しだけお願いします。」


「お姉ちゃん?」


「すぐ戻ってくる。大丈夫。」


エリシアを安心させる為に笑顔を作り、彼女の頭を撫でた。そのまま店の出口に向った。


「ちょっと・・・何やってるのかな?武装軍団さん?」


大将と思われる人の後ろに立ち、は話し掛けた。男が振り向き、に銃口を合わせる。


「あのさぁ・・・こういう騒ぎ他でやってくれない?俺は楽しくエリシアとの時間を・・・」


の言葉を遮るように、一発の銃弾が放たれた。それを間一髪で左腕で受け止める。


「聞く耳持たないって?いい度胸じゃん。この風の錬金術師が纏めて相手してやるよ!!!!」


次々に男を薙ぎ倒す


「手前ぇ等にゃ錬金術なんて持ったいねぇんだよ!!!」


ものの数分で20居た軍団を全滅に追いやった。そこに中央の軍人がやってきた。


「マスタング少佐・・・ですか?」


「そうだ。後の処理はそちらに任せる。生憎こちらは有給を満喫している身でね。」


「は!解かりました!」


軍人は敬礼をし、はエリシアの所に向った。


「エリシア。ただいま。大丈夫だった?」


「うん。お姉ちゃん強いんだね。」


「まぁね。」


「エリシア!!大丈夫か!!」


「パパ・・・」


呼ばれたほうに顔を向けるとヒューズとイズミの姿があった。


「よかった・・・無事で・・・」


「まぁね。万全の状態じゃなかったらどうなってたか・・・」


苦笑混じりのの顔。


「あ!!」


「どうした!!」


「エリシアのパフェがぁ〜〜・・・」


机で錬成した時の衝撃で、エリシアが食べていたパフェが倒れてしまった。


「すみませーん。さっきと同じ奴とチョコレートパフェ追加で!!」


「か、かしこまりました!!」


大慌てで厨房に戻るウェイトレス。そして机を直すためは両手を合わせた。


「これでよし・・・と。」


イズミの顔色が変わった。


「師匠?どうしたんですか?」


「錬成陣無しで・・・」


「はい。そうですが・・・それが何か・・・?」


「いや・・・なんでも無い・・・」


頭に?マークを浮べる。イズミは未だに険しい表情をしていた。


「師匠も何か頼んで良いですよ。私の奢りで。」


「あぁ。そうさせて貰うとするか・・・」


イズミとヒューズは椅子に腰を掛け、オーダーをした。


「さぁ!じゃんじゃん食べちゃおう!!」


パフェが二つ先に届き、とエリシアは食べ始めた。




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