はアームストロングと共に、ウィンリィを迎えに来ていた。


「ところで少佐。ウィンリィという女性はどんな方なんだ?」


エドからあまり話を聞いていないので少佐に尋ねる事にした。


「そうですね・・・我輩はいい人だと思います。」


「もっと具体的な事は言えないのか?例えば『綺麗で美しい』とか・・・」


やはり思考は兄譲り。


「・・・!!」


はある一点を見て、固まった。


「中佐、どうなさいました。」


「いや・・・見てはいけない者を見たような・・・」


「・・・?」


頭の中に疑問符を浮べるアームストロング。


「ま、気付いて居ないようだからいいが・・・」


「アームストロング少佐!!」


一人の少女が人込みを掻き分け、二人に近付いてきた。


「ああ、ウィンリィ殿。
リゼンブールではお世話になりましたな。」


「いえいえ、エルリックの馬鹿兄弟がお世話になりました。
ところで少佐。隣の方は?」


「貴女がウィンリィさんですか。いや、可愛い女性だ。」


爽やかな笑みを浮べ、はウィンリィに近付いた。


「私は・マスタング。地位は中佐だ。」


「あ、この前の電話の方ですか?」


「はい。以前は家の馬鹿兄貴が失礼な事を・・・」


「気にしないで下さい。
・・・それにしてもエドの奴、こんな所まで呼び出しておいて迎えにも来ないなんて!」


ウィンリィの言葉を聞いたは苦笑を漏らした。


「仕方ないですよ。今は動けない状態ですから。」


「それなんですけど、『動けない』ってどう言う事ですか?
あいつ何も言わないんですもの。」


「いやまぁ、なんと言いましょうか・・・
ちと入院してましてな」


「入院!?」


アームストロングの言葉に驚いたのか、ウィンリィは声を荒げた。」


「そう・・・あいつとうとう犯罪起こして少年院に・・・」


妙に納得し、ウィンリィは溜め息を吐いた。


「その院ではありません。」


すかさずツッコミを入れるアームストロング。


「エドは病院の方に入院してます・・・」


「え・・・病院・・・・?」


「兎に角、エドのところに向いましょう。」


そう言って、は先に歩き出した。


第十四章『幼馴染 〜シスコン再び〜』


「そんな!!」


ベッドで横たわる包帯だらけエドを見て、ウィンリィは絶句した。


「・・・・・・こんな大怪我で入院してるなんて聞いてないよ!!」


「いや・・・本来はこの怪我の半分以下だったのだが・・・」


エドは弱々しく言葉を発した。


「怪我をした事が少佐にバレ、熱い抱擁を喰らった結果・・・なんだよな。」


「そう言うわけだ。」


エドは起こり気味に言った。は呆れたのか、溜め息を吐き壁に寄り掛かっていた。


「もー、びっくりさせないでよ。」


「俺に言うな、俺に!!
くそ・・・おかげで入院が長引いちまった。」


「鍛え方が足りんのだ。」


「全くだ。」


「少佐と一緒にしないで下さい!!
それにさんまで!!」


「あれぐらいでくたばるなんて、まだまだ鍛錬が足りない証拠。」


又もや溜め息を吐く


はアレに絶えられるのかよ・・・?」


「まぁな。」


にやりと微笑んだ
エドは何も言わず、余分な包帯を解いた。


「それにしても・・・少佐の分を差し引いたって酷い怪我じゃない・・・」


「大した事ねぇよ。こんなのすぐ治る怪我だ。」


何も言わないウィンリィに不安を感じたのか、エドは彼女の方を向いた。


「?なんだよ?」


「・・・機械鎧が壊れたせいで怪我したのかな・・・
私がきちんと整備してなかったから・・・」


俯き、自分を責めるウィンリィ。
周りの皆はエドを見た。


「べ、別にウィンリィのせいじゃねぇよ。
大体壊れたのは俺が無茶な使い方をしたからで!お前の整備は何時も通り完璧だったしな。」


自分のせいで皆から睨まれるのが耐えられなくなったのか、エドは必死で弁解を始めた。


「それに腕が壊れてたから余計な怪我しなくて済んだってのもあるしよ!!
気にすんなよ!なっ!!」


「そうね!私のせいじゃないわね!んじゃ早速出張整備料金の話だけど!」


そう言ったウィンリィの手には算盤が握られ、目は輝いていた。


「うむ!腕の怪我もさっさと治して早く元気なエドワード・エルリックに戻ってもらわねば!!
その為には栄養と休養をしっかり取ることだ!」


「解かってるよ!」


「・・・・牛乳残してる・・・」


ウィンリィの言葉に身体を強張らせるエド。
そして暫くの間。


「・・・・牛乳嫌い・・・」


出てきた一言がこれだった。


「そんな事言ってるからあんたいつまで経っても豆なのよう!!」


「煩るせぇ!!!こんな牛から分泌された白濁色の汁なんぞ飲めるかーー!!!」


「我儘だぞ!エドワード・エルリック!!」


言い争いを始める三人。
急にアルが立ち上がった。


「アル?」


の言葉に返事を返さず、アルはそのまま病室を出て行った。


「・・・私も少し席を外す。後の事はよろしく頼む。」


「あ、っはい。」


もアルの後を追うように病室を出て行った。




「アル。」


「・・・。」


はアルの横に腰をかけた。


は兄さんと一緒に居ないの?」


「ん・・・いや、ちょっと居ずらいからさ・・・」


近くにあった備え付けの灰皿を引き寄せ、一本煙草を咥えた。


「あれ?煙草吸ってたっけ?」


「極々たまーに。」


ポケットからライターを取り出し、火をつける。


「あれだな・・・」


「ん?」


「いや・・・幼馴染って良いなぁって思ったんだ・・・
なんかさ・・・あの二人の間に俺は入っちゃいけないような感じになるんだ・・・」


紫煙を吐きながらは呟いた。


「やっぱり・・・エドには俺より・・・」


・・・」


落ち込んだ表情のを見て、何も言えなくなるアル。


「お、。どうしたんだ?」


目の前から現れたのは、ウィンリィを引き摺るヒューズだった。


「あ、パパ。それとウィンリィさん。どうしたんだ?」


「今から家に帰るんだが、お前も来るか?」


「でも・・・」


心配そうな表情でアルを見つめる。


「あ、僕の事は気にしなくて良いよ。」


「それじゃ・・・エドの事頼むな。」


「うん。」


そう言って、はヒューズの後についてった。


「ウィンリィさんはパパの家に泊まるんですか?」


「そう言う事になっちゃいました・・・」


「そうそう、それに今日は俺の娘の誕生日だからな!」


目を輝かせながら言うヒューズ。


「マジで!!色々ゴタゴタしてたからすっかり忘れてたぁぁぁぁぁ!!!」


頭を抱え蹲る


「よし!今から誕生日プレゼントを買いに行こう!!!」


「乗った!!」


「っちょっと!!ヒューズさん?さん?」


ウィンリィの手を二人で引っ張り買い物へ向う。




ヒューズ家に着き、玄関のチャイムを鳴らす。


「パパ、お姉ちゃんお帰りー。」


「あら、可愛いお客さん。」


エリシアが姿を現した途端、抱き締めるヒューズ。


「エリシアちゃん、会いたかったよ〜〜〜〜vV」


「エリシア〜〜〜ただいま〜〜〜vV」


親馬鹿&シスコン再び。
そんな二人を見て呆れるウィンリィ。


「前に話したろ。ほら、エルリック兄弟の。」


「ええ」


「あれの幼馴染のウィンリィちゃん。
泊まる所探してるみたいだから連れてきた。」


「誘拐の間違いじゃ・・・」


ボソッと呟く。彼女の言葉はさらっと流された。


「妻のグレイシアと、娘のエリシアだ。」


「お世話になります。」


「初めまして。ゆっくりしていってね。」


エリシアと話そうと、ウィンリィは屈んだ。


「エリシアちゃん、今いくつ?」


「ふた・・・・」


指を二本立てて言おうとしたが、エリシアは途中で思い出したのか、指を一本やした。


「みっちゅ!」


「「「や〜〜〜ん、かわいい〜〜〜〜vV」」」


声を挙げる三人。
ヒューズとを見て呆れるグレイシア。


「でも、いいんですか?私なんかが娘さんの誕生日に御呼ばれして・・・」


「祝い事は皆で分け合ったほうが楽しいだろう?
ようこそ、ヒューズ家へ。」


「よっしゃ、ママ〜〜。俺も何か手伝うよ〜〜〜。」


腕まくりをしながら家の中に入る


「その前に着替えてきなさい。軍服のままで料理するの?」


「あ・・・ι」


直帰という事を思い出したのか、は急いで着替え始めた。




料理も並び始め、い色々なお客さんが集まったヒューズ家。


「エリシアちゃん、お誕生日おめでと〜〜〜!!」


楽しそうな皆の顔を見て、も笑顔になった。


「皆楽しそうだな。」


「笑顔が一番。だろ?」


の隣にヒューズは立った。


「ま、そうだな。」


「パパ!パパがくれたねずみさん、動かないよう。」


「あれー?不良品だったかな?」


「エリシアちゃん、ちょっと見せてくれる?」


そう言ってウィンリィはエリシアから人形を受け取った。


「やっぱり、歯車が外れてる。
はい。」


「わぁ!!すごいすごーい!!」


直った人形を見つめ、歓喜を上げるエリシア。


「ほー。器用なもんだな。」


「おもちゃのお医者さんだ!」


輝く眼差しをウィンリィに向けるエリシア。


「あはは、違うけど似たようなものね。」


「パパ・・・俺部屋に戻るね。」


「え・・・あぁ。」


そう言って、は二階へと登っていた。


「ふぅ・・・」


下の賑やかな声を聞きながら窓辺に立った。
グラスに入ったお酒を一口含みながら月明かりを見つめた。


「今日は月が綺麗だな・・・」


暫く月を見上げていると、ドアの方から声が聞こえた。


「あの・・・さん?入っても良いですか?」


「ウィンリィさん・・・どうぞ。」


が返答すると控え気味にドアが開いた。


「どうしたんですか?」


笑顔でウィンリィを見つめる


「ちょっと話がしたくて・・・」


「良いですよ。」


備え付けられている椅子に腰を掛けた。
暫しの無言。


「ウィンリィさん・・・」


「あ、ウィンリィでいいですよ。それと敬語も・・・
さんの素じゃないですよね?」


年上の人に敬語を使われるのがなれないのか、ウィンリィは言った。


「よく素じゃないって解かったね。」


「解かりますよ。エドと話してる姿を見たら、誰だって。」


「じゃぁ、ウィンリィちゃんって呼ばせて貰うよ。
ウィンリィちゃんも俺に敬語なんて使わなくていいから。」


「そうですか・・・?」


「うん。俺、軍以外の人に敬語使われるとどうも落ち着かなくて・・・」


そう言いながらは頭を掻いた。


「じゃぁ・・・そうする。」


「是非そうして。」


 微笑しながらはウィンリィを見た。


は・・・人を殺した事はあるの・・・?」


ウィンリィは昔、リザに聞いた事をにも聞いた。


「・・・ないよ。一度も。」


「え・・・?」


驚きの表情でを見るウィンリィ。


「軍人なのに何故?って顔だね。」


「いや・・・」


は立ち上がり、窓際に立った。


「殺した事はないけど、撃った事はある。」


「恐く・・・ないんですか?」


「・・・恐かったよ・・・最初は。でもやらなきゃいけない事があるから。」


真っ直ぐにウィンリィを見つめて話す


「やらなきゃいけない事?」


「あぁ。守るべき人が居るから。
俺はその為に引き金を引き続ける。
昔も今も、これからも。」


「・・・リザさんと同じ事を言うんだね。」


昔、リザが言った事と同じ事を言ったにウィンリィは微笑した。


「リザ姉と・・・?」


「うん。同じ事。何かに似てるね。」


「そうかなぁ・・・」


複雑な顔をしながらは言った。


「そうだよ。なんか、が羨ましいな・・・」


「何で?」


「真っ直ぐに自分を持ってる人だからさ・・・
それに・・・エドの事も・・・」


「俺はウィンリィちゃんの方が羨ましい。」


「え・・?」


そう言うと窓際から離れ、再び椅子に腰を掛けた。


「機械鎧の整備はウィンリィちゃんにしか出来ないだろ?
それに、幼馴染ってのも。」


「でも・・・彼奴何も言ってくれないから・・・」


悲しい顔で俯くウィンリィ。


「大切な人だからこそ何も言いたくないんだよ。心配掛けたくないしね。」


第五研究所の事を思い出し、苦笑しながら言った。


「そういや・・・俺の機械鎧も見てみるか?」


「え・・・?」


「いや、整備師なら興味あるかなぁ〜って思ってさ。どうする?」


「本当ですか!?是非!!」


さっきとは打って変って目を輝かせるウィンリィ。


「やっぱり可愛い子は笑ってる方が良いよ。」


「・・・って・・・男っぽい・・・」


「女性を誉めるのは基本中の基本だろ?」


やはりロイ似の
そんなウィンリィの言葉を気にせずに、上着を脱いだ。


「うわ〜〜〜vV凄いvV何処で作ったの?」


「中央にあるんだけど・・・今度行って見る?」


「うん!!」


目を輝かせるウィンリィにもまた、笑顔になった。


「でも・・・どうして機械鎧つけてるの?」


の機械鎧をいじりながらウィンリィは聞いた。


「・・・エドに聞いてないの?」


「うん。」


「昔・・・人体錬成をしたんだ・・・」


は天井を見上げ、呟いた。


も・・・?」


「そう。失敗してね・・・見事に持っていかれたよ・・・」


「ごめん・・・変な事聞いて・・・」


機械鎧から手を離し、ウィンリィは俯いた。


「別に気にしてないよ。これで良いと思ってるし。」


ウィンリィの頭を撫でながらは言った。


「失敗したからこそ得た物もあったから。」


「得た物・・・?」


「ん〜〜・・・つまんない昔話になるから此処まで。
明日も病院に行くんだろ?
こっちに来るまで疲れてんだから身体休めなきゃ。」


「うん・・・」


そう言うと、ウィンリィは立ち上りドアの方へ向った。


「ウィンリィちゃんは笑ってた方が良いよ。可愛いんだから。」


「何気に・・・タラシだよね・・・って・・・」


苦笑しながらウィンリィは言った。


「そうかな?でも、本音だよ。
女性には明るく居てもらいたいから。」


微笑みながらは言った。更に苦笑するウィンリィ。


「まぁ・・・いいか。
おやすみなさい。」


「おやすみ。」


ウィンリィが出て行くと、はベットに横たわった。


「やっぱり・・・俺って変なのかな・・・?」


女性を口説く時点でおかしいです。


「まぁ、いいや。俺もさっさと寝よう。」


そう言うと、ベットの中へ入った。




NEXT
13 15