次の日の朝、達は病院に出かけた。
「エリシア、すっかりウィンリィちゃんに懐いちゃったね。」
「妹が出来たみたいで嬉しい。エリシアちゃん可愛いし。」
「だろだろ?ほら、これ昨日撮ったエリシアちゃんの・・・」
「パパ、仕事は?」
病院内を歩きながらは聞いた。
「勿論、行くに決まってんだろう?
あ、エドと話してからな。」
「世話焼きだよなぁ・・・パパって・・・」
ハァ〜〜っと長い溜め息を吐く。
「あはははは・・・」
そんなを見て苦笑するウィンリィ。
「あ、ロス少尉。今日和。」
「どうも。」
「以上はないか?」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
「それはよかった。」
一気に仕事モードに入る。
「ヒューズさん。って仕事中何時もこんな感じなんですか?」
「あぁ。彼奴は仕事とプライベートをきっちり分けるタイプだからな。」
「さ、入るとするか・・・」
「僕は好きでこんな身体になったんじゃない!!」
第十五章『兄弟の絆』
がドアノブに手を掛け、開いた瞬間中からアルの叫び声が聞こえた。
「・・・・・・好きで・・・・・・こんな身体になったんじゃない・・・・・・・」
達は何も言えず、扉の前で固まってしまった。
「あ・・・・・・悪かったよ・・・・・」
バツが悪そうな顔をしながらエドは言った。
「そうだよな・・・こうなったのも俺の所為だもんな・・・だから一日でも早くアルを元に戻してやりたいよ・・・」
「本当に元の身体に戻れるって保証は?」
「絶対に戻してやるから、俺を信じろよ!」
「『信じろ』って!!
この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ!!!
錬金術において人間は肉体と精神と霊魂の三つから成ると言うけど!!
それを実験で証明した人が居たかい?!
『記憶』だって突き詰めればあだの『情報』でしかない・・・・
人工的に構築する事も可能なはずだ。」
「お前・・・何言って・・・」
「・・・兄さん前に怖くて言えない事があるって言ってたよね?
それはもしかして僕の魂も記憶も本当は偽者で全部でっちあげた偽者だったって事じゃないのかい?
ねぇ兄さん!アルフォンス・エルリックという人間が本当に存在してたって証明はどうやって?!
そうだよ・・・ウィンリィもばっちゃんも皆で僕を騙してるって事もありえるじゃないか!!
どうなんだよ兄さん!!」
「アル!!!」
――ガン!!!!!
が叫ぶのと同時に、エドは机を叩いた。
「・・・・・・ずっと・・・それを溜め込んできたのか・・・?」
エドは俯いていて、表情が読み取れない。
「言いたい事はそれで全部か・・・?」
俯いたまま、エドは言った。アルは静かに頷いた。
「そっか・・・」
ようやく顔を上げたエドは、悲しげな表情をしていた。
ベッドから立ち上がり、エドは病室から出て行った。
「エド!!」
急いでエドを追おうとするウィンリィ。
「・・・かやろう・・・」
は俯き、肩を震わせていた。
「え・・・?」
「馬鹿野郎!!!!」
の怒声が病室に響き渡った。
「・・・?」
顔を上げたの目には涙が溜まっていた。
「手前ぇ等の兄弟の絆ってそんなもんなのかよ!!
旅をしてからお前はエドの何を見てきたんだ?!!
何で・・・何で兄貴を信じようとしないんだよ!!!!!」
そう言うと、はエドを追うように病室を出て行った。
「!!!
バカーーーーー!!!!!!」
そんな声と、凄い音が聞こえは振り返ったが、直ぐに前を見て、エドを追った。
「エド・・・」
「・・・どうしたんだ?」
泣いているを見て、エドは駆け寄った。
「何かヤダ・・・エドの気持ちも知らないで、アルがあんな事言うの・・・許せない・・・」
「仕様がないさ・・・言わなかったのは俺の方なんだから。」
「でも!!」
が言葉を紡ごうとした時、屋上の扉が開いた。
「アル・・・」
「兄・・・」
「そういえば。」
アルが言葉を発し様とした時、エドが口を開いた。
「暫く組み手やってないから身体が鈍って来たな。」
「へ?」
エドの言葉を聞いて、は屋上の扉の方へ歩き出した。
「ウィンリィちゃん・・・」
「・・・」
屋上へと続く階段に、ヒューズとウィンリィが居た。
「目、赤い・・・」
「もね。」
「あの兄弟の所為だ。」
キッパリと言い切ったにウィンリィは微笑した。
「私も。本当に世話が焼けるよね。」
「全くだ・・・
っと、向こうは一区切りついたみたいだな・・・」
そう言っては黒い笑みを浮べ歩き出した。
「?」
「ちょっとしたお仕置きだ。」
スーっと息を吸い込み、は思いっきり叫んだ。
「一区切りついたのは良いけど、俺の事も忘れんじゃねぇぞーーー!!!」
そして走り出した。
「お前等、今からみっちりしごいてやる!!!!」
「何でだよ!!!」
「ウィンリィちゃんを泣かせた罰だ!!!」
「ちょっと待ってよ!!!!」
「問答無用!!!」
叫びながら二人を投げ飛ばす。
「って不思議ですね・・・
兄弟を・・・兄を大事にしてるみたいで・・・」
「生い立ちが生い立ちだからな。
彼奴の所も兄妹二人きりで、互いに信じあってるからな。
ま、より絆を深めた事件もあったから余計だろう。」
「事件・・・?」
ヒューズの言葉に首を傾げるウィンリィ。
「あぁ。人体錬成の事はから聞いてるだろう?
危ない状況だったを助けたのが兄貴って事さ。
今までは軍になった兄を嫌ってたんだけどな。」
「そうなんですか・・・」
「パパ、余計な事は話さないの。」
「のわ!!!」
急にに話し掛けられ、驚くヒューズ。
「お・・・お前何時から・・・?」
「・・・手加減してくれよ・・・俺一応は怪我人なんだぜ・・・」
「女性を泣かせといて何を言う。
俺に投げ飛ばされたくなかったらこれ以上、ウィンリィちゃんを悲しませるな!!」
「・・・俺・・・彼氏だよな・・・?」
疑問に思った事をボソッと呟くエド。
「俺は女性を泣かせる男は誰であろうと許さないタチなの。」
「・・・・・・・・ι」
冷や汗をかくエド。
「ま、いいや。
ウィンリィちゃんちょっと良いか?」
は手招きした。
「え・・・うん。」
「さぁ、男共は病室に帰った、帰った。」
「へいへい。行くぞ、アル。」
「うん。」
そう言い残すと、エド達は病室に帰っていった。
屋上に出たとウィンリィ。
「何?。」
「パパから途中まで聞いたと思うけどさ・・・
昨日言ってたつまらない話。」
軍服のポケットから煙草を取り出し、一本口に咥えた。
「つまらない、俺の過去話。
ウィンリィちゃんには話すよ。心配掛けたくないからね。」
ポツリポツリとは語りだした。
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