病室に戻ったウィンリィと。
ウィンリィはエドの用事で一旦席を外した。
「で、こいつに蹴られた後はもう覚えてない。」
「エドを運んで来た少年だな。」
エドの書いた落書き・・・もとい似顔絵を見ては言った。
「魂のみの守護者・・・貴重な人柱・・・生かされている・・・エンヴィーなる者・・・
マルコー氏曰く東部内乱でも石は使われていた・・・」
「ウロボロスの入れ墨に賢者の石の錬成陣・・・」
「ただの石の実験にしては謎が多いですな。」
「これ以上調べようにも今や研究所は瓦礫の山だしな・・・」
頭を捻る五人。何も行き詰まり、悩んでいた。
「軍法会議所で犯罪者リストでも漁れば何か出てくるかもしれねぇな。」
「我輩はマルコー氏の下で石の研究に携わっていたと思われる者達を調べてみましょう。」
「私はどうすればいい?」
「お前は・・・会議所にある仕事をシェスカと片せ。」
「やっぱり・・・」
落ち込んだ。その時、病室のドアが開いた。
「失礼するよ。」
「「「「「キング・ブラッドレイ大総統!!」」」」」
第十七章『死別』
突然の訪問者に五人は声を荒げた。
「あぁ、静かに。そのままでよろしい。」
「はっ・・・」
「大総統閣下、何故このような所に・・・」
各々大総統に頭を下げた。
「何故って・・・お見舞い。
メロンは嫌いかね?」
「あ、どうも。」
素直に受け取るエド。
「じゃなくて!!」
「上層部を色々と調べているようだな。アームストロング少佐。マスタング中佐。」
「はっ!?あ・・・いやその・・・」
「何故その事を・・・?」
とアームストロングは冷や汗をかきながら言った。
「私の情報網を甘く見るな。
そして、エドワード・エルリック君。
『賢者の石』だね?」
その言葉を聞いたエドの表情が強張った。
「何処まで知った?場合によっては・・・」
何とも言えない威圧感に、皆は固まった。
「冗談だ。そう構えずとも良い!」
「は?」
急に笑い出した大総統にエドは呆気に取られた。
「軍内部で不穏な動きがある事は私も知っていてな。
どうにかしたいと思っている。だが・・・」
大総統は机に乗っている名簿を手に取った。
「あ・・・それは・・・」
「ほう・・・賢者の石の研究をしていた者の名簿だな。よく調べたものだ。
この者達全員行方不明になっているぞ。」
「!!」
「第五研究所が崩壊する数日前にな。
敵は常に我々の先をいっておる。
そして私の情報網をもってしても、その大きさも目的も
何処まで敵の手が入り込んでいるのかも掴めていないのが現状だ。」
「つまり、探りを入れるのはかなり危険である・・・と?」
「うむ。
ヒューズ中佐、マスタング中佐、アームストロング少佐、エルリック兄弟。
君達は信用に足る人物と判断した。
そして君達の身の安全の為に命令する。
これ以上この犬に首を突っ込む事も、これを口外する事も許さん!!
誰が敵か味方かもわからぬこの状態で、何人も信用してはならん!
軍内部、全て敵だと思い、謹んで行動せよ!だが!!」
一旦言葉を切り、大総統は笑顔になった。
「時が来たら君達には存分に働いてもらうので覚悟して置くように。」
「は・・・はっ!!」
、アームストロング、ヒューズは一斉に敬礼をした。
「閣下―――!!」
「大総統閣下はいずこーーー!!」
「む!いかん!煩い部下が追ってきた!!」
表の方から聞こえる声に大総統の身体が強張った。
「仕事をこっそり抜け出して来たのでな!私は帰る!」
そう言って窓から出て行った。
「また会う事もあろう。では、さらば。」
高笑いをしながら去る大総統。その後ろ姿をポカーンと見つめる五人。
「あれ?どうしたの皆。外の二人も固まってるし。」
入るやいなや、ウィンリィは汗だくになる五人を目にした。
「いや・・・嵐が通り過ぎた・・・」
「寿命が縮まった・・・」
心臓辺りを押さえ蹲る。
「頼まれた汽車の切符買ってきたよ。」
「お、サンキュー。」
「何だ、忙しない。怪我も治りきってなかろうな。」
「何時までもこんな消毒液臭い所に篭ってられっか!
明日には中央を出るぞ!」
「今度は何処に行くんだ?ダブリス?」
「どこそれ?」
ウィンリィが持ってる切符を覗くヒューズ。
「えっとね。」
ウィンリィの質問に答えようと、アルは地図を取り出した。
「南部の真中辺り。」
「あーーー!!!」
急にウィンリィが声を上げ、アルはビックリした。
「ここ!ダブリスの手前!!」
「ラッシュバレー?何かあるの?」
「機械鎧技師の聖地、ラッシュバレー!!
一度行ってみたかったのーーーvV」
目を輝かせるウィンリィ。それを見て呆れるエルリック兄弟。
「連れてって、連れてって、連れてって、連れてけ!」
「一人で行け。そんな所。」
「誰が旅の費用払うのよ!」
「俺にたかる気か!!」
「エド・・・切符は何枚買ったんだ?」
傍で聞いていたが口を開いた。
「ん・・・三枚。」
「なら、ウィンリィちゃんを連れてけ。」
「は?」
「俺は此処に残らなきゃいけないし・・・
一回東方にも戻らなきゃいけない。」
「しょーがねぇなぁ・・・」
「やったーーーvV」
の説得に折れたのか、エドは渋々OKした。
「リゼンブールにすぐ帰るつもりだったけど予定変更!
ばっちゃんに電話してくるね!」
そう言ってウィンリィは病室から出て行った。
「元気だなぁ。」
「うん。いい嫁さんになるぞ。
うちの嫁さんほどじゃないけどな。」
ヒューズはエドの肩に手を置き言った。
「俺に言うな!!そしてさり気にのろけんな!!」
「うん。確かに良いお嫁さんになるよ。」
「まで・・・・」
の言葉に落ち込むエド。
「でも、本当にいいのか?」
「何が?」
ヒューズに声を掛けられ、は彼の顔を見上げた。
「俺の仕事はどうにでもなる。今からでも・・・」
「だって・・・師匠に会いたくないんだもん・・・」
冷や汗を垂らしながらは言った。
「イズミさん、優しいじゃないか。」
「確かに優しいけど・・・」
「何?ってセンセイと知り合いなのか?」
「一応はエド達の姉弟子・・・」
「へ・・・」
はエドの反応に苦笑した。
「殺されない程度に頑張れ。」
そう言ってはエドとアルの肩を叩いた。
「・・・無茶言うな・・・」
イズミの元を出てから一度も立ち寄っていないエドとアル。
二人はガタガタと震えだした。
「ま、こっちが一息ついたらダブリスに行くから。」
「あぁ・・・」
次の日、エルリック兄弟とウィンリィはラッシュバレーに向って旅立った。
その日の夜、とヒューズは軍法会議所に居た。
「シェスカ・・・大丈夫か・・・?」
「駄目です・・・」
山のような仕事にシェスカは項垂れていた。
「リオールの暴動?」
「あぁ、レト教とかいう新興宗教だったか?
住民を騙してたやつだったな。」
は紅茶を啜りながら言った。
「それがやっと治まったらしいですよ。」
「あ、本当だ。」
ヒューズは新聞を見ながら言った。
「あーあ、やだねぇ死者多数だとよ。
イシュバールやら暴動やら東部も大変だな。」
「・・・ι」
は何も言えず黙り込んだ。
「東部だけじゃないですよ。北も西も暴動だ国境線だと急に賑やかになって。
そのうち国家転覆するんじゃないですかね?」
冗談交じりに言った言葉に反応し、ヒューズは急に立ち上がった。」
「中佐?何処に行くんだ?」
「昔の記録を調べに書庫に行って来る!」
残れた三人は首を傾げていた。
「・・・私も中佐の所に行って来る。後は頼んだぞ。」
「あ、はい。」
はヒューズの後を追うように部屋を出て行った。
「・・・ん?」
が書庫に行く途中、通信室からヒューズが出てきた。
「中佐・・・?」
ヒューズが段々と遠くなっていく。
はその後ろ姿を見て絶句した。
「マース!!その傷はどうしたのだ!?」
「何でもねぇ!!」
そう言ったヒューズの右肩は血に塗れていた。
「早く治療を!!」
「大丈夫だ!!お前は此処に居ろ!!」
ヒューズに言われ、はその場に固まった。
「マスタング中佐・・・」
「一体・・・何があったんだ・・・?」
はボー然とヒューズの後ろ姿を見ていた。
「・・・マースは誰かに連絡したのか?」
「いえ・・・誰にも・・・」
「後を追ってくる。」
そう言っては走り出した。
「たく・・・何処に居るんだよ・・・パパは・・・」
そう言って街中をうろつく。
の前に見えたのは一つの電話ボックス。
「居た。」
ヒューズを見つけ、は全力でヒューズの元に走った。
「え・・・?」
くづれるように倒れるヒューズ。そしてその先に見えたのは
「ママ・・・?」
グレイシアが銃を持っている姿だった。
次の瞬間、ロスの姿に変わり、何処かへ歩いて行ってしまった。
「パパ!!」
兎に角ヒューズの元に向った。
「・・・っ!!パ・・・パ・・・」
そこには血塗れで倒れるヒューズ。
「パパ・・・パパ!!!」
ヒューズの身体を揺すり、必死に叫ぶ。
「っ!!マース!!目を開けろ!!マース!!!」
何の反応を示さないヒューズ。
はヒューズから手を離した。
『か!?何があった!?』
垂れ下がる受話器からロイの声がした。
「お兄ちゃん・・・パパ・・・が・・・」
『ヒューズがどうした!?』
「誰かに・・・殺・・・された・・・」
『な・・・!!
はそこから動くな!!
中央に電話して人を呼ぶ!!』
「解かっ・・・た・・・」
はそっと受話器を放し、ヒューズの傍で泣き崩れた。
数分後、中央の軍人がの元に来た。
は泣いていて、何も喋れなかった。
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