と出逢ってから一ヶ月の時が過ぎた。エドとの距離も段々と縮まっていった。


第四章『雨』


エドは学校からの帰り道、本屋に寄っていた。雑誌コーナーでたむろって居る二人の女子の会話が耳に入った。


「ねぇねぇ、Tearの新曲聞いた?」


「聞いた聞いた。何か心打たれるって感じ?」


「好きな人に向けて歌いたい曲だよね。」


「でもさ、Tearの書く詩ってさ誰かに宛ててる物だよね。」


『誰か』と言う単語にエドは反応した。


「あ、このページ!!」


「何々?」


「Tearがノンスリーブ着てる。」


「珍しいね。何時も袖のある物なのに。」


「左肩に刺青みたいなのがあるよ。」


「本当だ。だから袖のあるもの着てたのかな?」


「ま、いいや。買って帰ろう。」


そう言うと女子は雑誌を持ってその場を去っていった。エドは女子が持っていた雑誌を手に取り、が乗っているページを開いた。


「・・・!!この刺青!!」


見覚えがあるのか、雑誌を食い入るような目で見つめた。


「ウロボロスの刺青・・・新曲の歌詞が載ってる・・・」


そのまま、歌詞の載っている項目に目を向けた。


『雨の日は何だか寂しくなる・・・
誰か傍に居て欲しい
でも 誰でも良い訳じゃない
私の傍に居て欲しいのは・・・

雨は何時になったら止むのだろう?
今すぐに止んで欲しい・・・

独りで居るのが辛くて
泣いてしまいたい日もある
泣ければ気が楽になるかもしれない・・・
でも 今は泣けない

雨は何時になれば止むのだろう?
何時までも降り続く雨・・・

きっと何時か この雨が安らぎに変わる日を
待ってる
安心して一緒に居られる人に逢いたいから
温もりをくれる人に逢いたいから

今日も雨に打たれながら
私を包んでくれる人を待っている・・・』


「エド先輩。」


「うわ!!」


急に後ろから呼ばれ驚くエド。


「そんなに驚かなくてもいいじゃない・・・」


。」


「あ。それ、今日発売の雑誌!!しかも私のページ開いてるし・・・」


「え・・・いや・・・刺青があるんだなぁって・・・」


エドは慌てて雑誌を元の場所に戻す。


「・・・見覚えがあったんでしょう?」


「全然。ある訳無いじゃん。」


エドの顔はどう見ても隠し事をしている。は更に問い掛けた。


「錬金術の歴史の本持ってたよね?それに同じ物が書いてあった・・・違いますか?」


「・・・そんでそう思う訳?」


「普通ならありえないで済みますけど・・・先輩前にこう言ってましたよね?『ホムンクルスが実在するか?』って。」


「・・・・・・」


「長話になってしまいそうですから・・・何処かに寄りませんか?今日はオフだから。」


「あぁ・・・」


エドとは近くの喫茶店に入ることにした。


「で、実の所はどうなんだ?」


「私がホムンクルスかって事ですか?実際そうだとしても軽がると言いません。」


溜め息を吐きながら彼女は言った。


「だろうな・・・ま、いいけど・・・」


「良さそうな顔には見えないけど?」


「そうか?」


少し睨むような目つきでを見た。


「ちょっとトイレに行って来ますね。」


「あぁ。」


が立ち上がろうとした時、腕がコップに当たり落としてしまった。


「あ、割れちゃった・・・ι」


「・・・ドジ。」


しゃがみ込み、は破片を拾い始めた。すぐに店員も駆けつけてきた。


「っ・・・!!」


ガラスを触った時、の指が少しだけ切れた。


?大丈夫か?」


「平気。破片も片付いたし、トイレ行ってきます。」


駆け込むようにトイレに向う


「・・・久々に怪我したな・・・もう治ってるし・・・」


自分の指をマジマジと見ながら呟いた。


「ま、平気かな?」


そう言うと、トイレを出て席に戻った。


「怪我大丈夫か?」


「大した事無いですよ。」


笑顔で言う


「・・・ちょっと見せてみろ。」


「いや、本当に大丈夫だから・・・」


「いいから!!」


の手首を掴み、強引に引き寄せた。


「・・・治ってる?」


「・・・・・・・」


「どう言う事か説明してくれるよな?並みの人間じゃ此処まで治癒能力が早いはず無いんだからな。」


「・・・解かった。話すから・・・家に来てくれる?」


真剣な声でエドに言う


「・・・あぁ。」


エドは短い返事を返した。
喫茶店を出て、二人は彼女の家に向った。

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