一ヶ月後、は作曲をしていた。


「・・・これが最後の曲になるかな・・・」


そう言ってペンを置き、自分の書いた詩を見つめた。


「後は、これに合わせた曲作りだね。」


携帯を取り出し、事務所に電話をかけた。


「Tearです。新しい曲が出来たので、打ち合わせしたいんですけど・・・
それと、大事なお話が・・・」


その曲が出来上がったのは更に3週間後だった。


第六章『Thank You & Good bye』


その頃エドは、何度か前世の夢を見ていた。


『よ☆鋼の錬金術師。相変わらず小さいねぇ・・・』


『小さい言うんじゃねぇ!!』


『そんなに気にしてるんなら、牛乳飲めば?』


『俺は牛乳が嫌いなんだよ!!』


『そんなに怒らないでよ。何?カルシウム不足?小魚あげようか?』


『だぁ〜〜〜!!手前ぇは!!』


『あはははは。やっぱ面白いね〜〜。焔が鋼で遊ぶのも頷ける。』


『俺はおもちゃじゃねぇ〜〜〜!!!』




――これは・・・東方司令部・・・か?――




『焔が君の護衛で旅に同行しろってさ。』


『はぁ?お前が?』


『そう。まったく、ついてないよ・・・』


『だったらついてくんなよ。』


『上司命令。これは絶対だから。それとも、私がいると邪魔?』


『・・・邪魔。』


『うわ、酷!!そこまできっぱり言わなくても・・・』


『・・・・・・』


『何顔赤くしてんの?』


『な・・・なんでもねぇよ!!』


『そうかぁ?茹でタコみたいだよ?』


『う・・・煩るせぇ!!』


『照れちゃってvV可愛いなぁvV』


『だぁ〜〜〜!!抱きつくな!!』


『ま、これから宜しくね。鋼の錬金術師さんvV』


『・・・・・・・・あぁ。』




――が旅に同行してから、何時も楽しかったよな・・・――




。』


『ん?何?』


『・・・頼むから別に部屋取ってくれよ・・・ι』


『えぇ〜〜〜。何で?面倒臭いじゃん。』


『良いから!!』


『そんなに怒鳴らなくても・・・別に襲われるわけでも無いんだからさぁ・・・』


『年頃の男に向って言う台詞か?』


『あぁ、確かに身長低くても思春期だからねぇ。』


『身長は関係ねぇだろ!!兎に角、別に部屋を取れ!!』


『・・・別に良いけど・・・淋しくなったらこっちに来るから〜〜〜vV』


『絶対来るな!!』




――この日だったよな・・・が夜苦手だって知ったのは・・・――




『・・・鋼。』


『ん?どうしたんだよ?こんな夜遅くに・・・』


『ごめん・・・少しだけ傍に居て・・・』


『は?』


『夜に独りで居るの・・・駄目なんだ・・・』


・・・』




――彼奴の頬に伝う涙が嫌で、俺は抱き締めた。――




『鋼・・・?』


『今度から、俺が傍に居る。だから泣くな・・・』


『ごめんね・・・』


『別に・・・気にしてねぇよ・・・』




――それから俺は彼奴と付き合うようになった。――




気が付けば頬を伝う涙。それを鬱陶しそうにエドは拭った。


「・・・・・・」


頭の中をグルグルと回る記憶。


「俺は憶えていたんだ・・・全てを・・・でも・・・忘れたフリをしていたんだ・・・」


自身では気付いていた。全てを。だが、また出逢ったとしても、を置いて先に死んでしまう。
その事がエドにとって最も恐れている事。


・・・ごめん・・・」


ベットの中で膝を抱え、エドは呟いた。




「兄さん!!」


慌しく部屋のドアが開いた。


「何だよ・・・アル?」


「早く!!テレビつけて!!」


「は?」


「良いから早く!!」


アルに言われるまま、エドは部屋にあるテレビをつけた。


「チャンネル違う!!」


アルはリモコンを手に持ち、番組を変えた。


「これ・・・」


テレビに映ったのはの新曲だった。



『貴方を探しつづけて
彷徨い続けて
やっと見つけたけれど
けれど・・・

もうこれ以上 此処にはいられない
もうこれ以上 貴方と話せない
私は 私の居るべき所に帰ります

貴方を見つけたけれど
全てを教えたけど
貴方は何も覚えていなかった
私の事も・・・

もうこれ以上 此処にはいられない
もうこれ以上 貴方と会えない
私は 私の居るべき場所へ還ります

私の事を思い出さなくてもいい
ただ 貴方と逢えた それだけで充分
これ以上何も望まない
貴方は 貴方の思うように生きて
ただ それだけでいい・・・

ごめんね
貴方との約束 守れなかった
けど 貴方と過ごした日々は忘れない
何十年 何百年経っても
私は貴方の事を忘れない』


『Tearさんはこの曲を最後に、姿を消しました。
事務所の方にも問い合わせしたところ『行き先は不明』との解答が返って来ました。』


「行き先不明・・・」




――私の居るべき場所へ・・・――




何かに気付いたのか、エドはベットから立ち上がった。


「アル!!俺のパスポート何処だ!?」


「え・・・?」


「早くしろ!!」


叫びながらエドはトランクに荷物を入れ始めた。


「何処に行くの・・・?」


「彼奴の・・・の所だ!!」


「でも、行き先不明って・・・兄さんはわかるの?」


「あぁ、彼奴の歌には全て意味があったんだ。
だとするなら・・・あそこしかない。
アルも支度しろ!」


アルの方を見て言ったが、アルは何もせずに佇んでいた。


「・・・アル?」


「僕は此処に居るよ。兄さんだけで行ってきなよ。」


「何言って・・・」


「この姿じゃどの道表には出れないでしょう?」


そう言って自分の鎧を指差す。


「駄目だ。お前も一緒だ。」


「兄さん・・・?」


「ちょっとお前には酷かもしれねぇけどな・・・」


取り出したのは大きな箱。


「兄さんもしかして・・・」


「そのもしかして。
仕様がねぇだろ!!これしか思いつかないんだから!!」


「解かったよ・・・」


アルは渋々箱の中に入った。


「荷物扱いされるとは・・・」


「悪ぃな。」


荷物を纏め、エドとアルは空港へ向った。




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