『何があっても、お前を守っていく。
それが、け・・・・・・ん大将との約束だからな。』
『・・・い・・・う、ありがとう。
貴方だけね、い・・・んじの私の事を気に掛けるのは。』
所々聞き取れない・・・
碧・・・長髪の女は誰なんや・・・?
開けた目の色は・・・太陽を思わせる程の金色・・・
『でもね・・・い・・・う。私は罪を犯したといって、下界に転生されるの。
そしたら、貴方の事も忘れるのかな?
け・・・・・・の事も、忘れちゃうのかな?』
『そんな悲しい顔をするな。
私は、貴女が私の事を忘れてもずっと傍に居る。
観世音様に、頼んでおいた。』
観世音・・・あの神様の事か・・・?
『姿形が変わろうと、私は貴女の傍に居る。』
『ありがとう・・・』
「水萍・・・。」
口から漏れた言葉。
誰の名前かはわからない。
でも・・・確かに俺はこの名前を知ってる・・・
「涙・・・?」
俺の頬を伝うのは涙。
泣いたのなんて何年ぶりなんやろ・・・
「一体・・・アレは誰や・・・?」
俺はあの姉さんから貰った剣を握った。
何処か懐かしく・・・手に馴染む・・・
俺は・・・この剣を見た事あるんちゃうんか?
「。何ボーとしてんだ?」
声のする方に目を向ける。
そこには支度を済ませた悟浄が煙草をふかしていた。
「いや・・・何でもない・・・」
「訛り・・・抜けてねぇぞ。」
呆れ顔で俺のデコを突っつく。
「んな、1日2日でどうにかなる訳ないやん。」
そう、悪戯っぽく笑う俺。
少しでも直そうと思ってるんやけど・・・
直らんのが現実。
「んで・・・水萍って誰だ?
お前のダチか?」
「あぁ・・・寝言聞いてたんだ。」
「アレは寝言じゃねぇだろ。」
確かに・・・起きてから言うたもんな・・・
「俺も知らん。誰の名前かも・・・
それに俺、ダチなんて居なかったし。」
寧ろ、ダチなんて作れる環境やなかったしな。
「ま、起きたならさっさと支度しろ。」
「支度・・・?」
悟浄に言われ俺は頭を傾げた。
「お前なぁ・・・
服買いに行くんだろ?」
あ、そうやった。って・・・
「朝飯は?」
「んなもん、とっくに食った。
今何時だと思ってるんだ?」
悟浄に言われ、俺は自分の腕時計を見た。
「・・・マジで?」
時計は12時を指していた。
「出発は明日って八戒が言ってたから、今日中に買い込めば大丈夫だろうよ。」
「・・・何で起こさなかったん?」
「お前がスヤスヤと気持ち良さそうに寝てたから。」
・・・さいですか。
「昼飯食ってから行くか?」
「悟浄はどうすん?」
「俺は・・・町で適当に食えば良いって考えてるけど・・・」
「それに便乗。」
「ォィォィ・・・」
悟浄の呆れ顔が面白くて思わず笑った。
「んな笑うなよ。
ほら、行くぞ。」
「あ、待ってぇな!!」
急いでベッドから身を起こし、悟浄の後を追う。
「っと・・・お前、一応剣だけは持ってけよ?」
「何で?」
「何でって・・・何時妖怪が襲ってくるかわからねぇだろ?」
そう言う事か・・・
長剣って持ちにくいんよ〜〜〜。
とか思いつつ、ズボンのベルトの隙間に押し込んだ。
「ついでにコレ入れるのも買わないと・・・」
「だな。
んじゃ、ちゃっちゃと済ませますか。」
「おう。」
こうして俺等は町に繰り出した。
のはいいものの・・・
「コレお前に似合うんじゃないか?」
そう言って悟浄が手に持っていたのは女物のスカート。
「コレで戦えと?」
「おうよ。」
止めてくれ・・・(汗
「女らしい格好は俺には似合わない。」
「んな事ねぇだろ?」
「似合わねぇよ!!」
服屋で口喧嘩。
やっとの事で悟浄をメンズ服を扱ってる服屋に連れ込んだ。
「やっぱ、こっちの方が落ち着く・・・」
「根っからの男だな・・・お前は・・・」
「別に良いだろう?」
悟浄と話してると、自然に標準語に戻る。
元々、関東出身の俺には標準語に戻すのは簡単な事だった。
適当に服を漁り、ようやく一息ついたのは夕方だった。
俺等は休憩を兼ねて、喫茶店に寄った。
「結構遅くまで掛かったな・・・」
「悟浄が余計なもん見るから・・・」
「女に女物の服を勧めて悪いか?」
「悪い。」
俺の言葉に落ち込んだ悟浄。
ちょっと面白いかも。
「んだよ・・・つまんねーな・・・」
つまんなくて結構。
俺は女モンなんか着る気は無い。
「つーか、スカートが嫌いなだけ。」
俺の足なんて目に毒。
「そうか?」
「そう。」
取り合えず、一息ついて俺等は宿屋に戻った。
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