「チャン・・・此処って?」
悟浄の言葉を聞かずに、は洞窟に入っていった。
「三蔵、どうします?」
「・・・追うぞ。」
三蔵の一言で、の後を追うように洞窟に入った。
(近くにいる・・・)
彼女の歩く足が、段々とスピードを上げた。最終的には洞窟を走りぬけた。
少し遅れて入った三蔵一行の目に、蒼い光が見えた。
「出口か?」
「じゃないと思いますよ・・・」
一番に光の正体に近付いた悟空は目を疑った。
「何だよ・・・これ・・・」
「・・・・・・・」
三蔵、八戒、悟浄も声には出さないが、驚いた表情をしている。彼等の目の前にあったのは大きな水晶。その中に蒼い髪の少女が居た。
は何も言わず、水晶に近付いた。
「今まで待たせて・・・ゴメンネ・・・」
水晶を抱くようには腕を伸ばした。
「『に使えし風の聖霊よ、新たなる主、の名の元に封印をとく。今、我に神の力を与えよ。』」
がそう言い終わると、辺り一面光に包まれた。三蔵達は眩しさの余り目を瞑った。
光が止み、さっきあった水晶は無く、変わりに少女が立っていた。
「・・・様?」
「風深・・・久しぶり。」
「様〜〜〜!!!」
風深と呼ばれた少女は勢いよくに抱き付いた。
「今まで一人にしててごめんね・・・」
は少女の頭を優しく撫でた。
「様・・・随分とお姿がお変わりになりましたね。」
「えぇ・・・まぁ・・・ね・・・んじゃ、風深。よろしくね?」
「はい!!」
「おい・・・・・・」
会話がわからない三蔵はに話し掛けた。
「あ、三蔵。後にして。妖怪の気配が近付いてるから。」
「様、いいですか?」
「えぇ。」
が返事をすると風深は彼女から離れ、呪文を唱え始めた。
「『の生まれ変わりに、我風深の名の元に神の力を与えたまえ。』」
今度はが光に包まれた。徐々に変わってゆくの姿。
「やっぱりこっちの方が良いや。」
光から抜けたの姿は、さっきまでと違い、腰まで届く銀髪に深紅の左眼と太陽を思わせる金色の右目を持っていた。
「さてっと・・・行くぞ。風深。」
さっきまでとは違う鋭い瞳で風深に言った。
「はい。様。」
彼女は返事を返すと、剣にその身を変えた。
「三蔵達は休んでても良いから。私一人で十分。」
そう言い、すぐ近くにある洞窟の出口を見ると妖怪の大群が押し寄せていた。
「マジでチャン一人でやるつも?」
「僕達も行きましょう、三蔵。・・・三蔵?」
ただ立っているだけの三蔵。八戒の言葉にも三蔵は動かない。
「・・・何処までできるか、見ててやるよ。闘神、太子。」
「何だ。知ってたんだ。流石、玄奘三蔵法師。」
そう言い残すと、双剣に姿を変えた風深を手に持ち、妖怪の大群に向っていった。
次々と襲ってくる妖怪をは薙ぎ倒してゆく。
「スゲー・・・何なんだよ・・・彼奴・・・」
悟浄は驚きを隠せないでいた。先日会った娘が微笑みながら剣を振るっているのだから。
「はい。終了。」
ものの5分で200もあろう妖怪の大群を全滅した。
「風深。ありがとう。」
「様の為ですから。」
剣から人形に変わった風深は深々とお辞儀をした。
「それでは、私はこれで。」
「何時も悪いな。」
「いえ。」
人形であった風深は、次の瞬間には消えていた。そして、彼女が居た場所には一枚の羽衣があった。
「守ってくれてありがとうな。風深。」
「さん。」
羽衣を身に纏ったとき、八戒がに話し掛けた。
「貴女は一体何者なんですか?只の女性とは思えないんですが・・・」
「闘神太子、。私の昔の名前。」
「闘神ってなんだ?」
聞き慣れない言葉なのか、悟空がに聞いた。
「神は無殺生を基本としているの。でも、その中でも殺生を許された者が居た。それが闘神太子。」
冷たい言葉で言い放った。
「詳しい話は宿屋でするとしよう。」
そういうと、先に歩いていってしまった。後を追うように4人も着いていった。
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