宿屋に着き、三蔵達はに詳しい話を聞いた。


「私は神と妖怪の間に生まれた禁忌の子なんだ。前世もそうだった・・・」


ベッドに腰をかけながらポツリとは話し始めた。


「私は物心ついた時から檻の中に居た。両手足に枷を付けられて。


第十二章『昔の話?』


――薄暗い牢屋の中、訳も解からず私はそこに居た。
只一つわかった事は、私は下賎の者。汚れた子供だって事。
ある日、牢屋の扉が開いた。
『天帝がお呼びだ。』
一人の兵士が私にそう言った。
枷を外さず、私はその人に着いていった。
着いた部屋はとても広くて、目の前に天帝と思われるじいさんが座っていた。
その隣に嫌な笑顔を浮べた爺と、小さい子供。
『今日からそなたに闘神となるべく、訓練をしてもらう。』
そうか・・・私も人形になるんだ・・・そう思った。


私は戦う為に生まれて来た人形。――



「これが前世の話。解かった?」


「解かりましたが・・・」


八戒の顔が困惑の色に変わった。


「別に気にしてないよ?んな昔の事。」


「何故前世の記憶がお前にはあるんだ?」


三蔵はを見つめながら言った。


「勿論、そうなるように転生したから。私はジジィ達の思惑に付き合う道理無いから。自分で転生した。」


きっぱりと言い切る


「・・・・・・来ちゃったか・・・」


がそう言った瞬間、部屋の中央が光りだした。


「観世、早すぎるんじゃない?」


「仕様がねぇだろ・・・。」


目の前に現れたのは自称、自愛と慈悲の象徴の天下の観世音菩薩。


「上に見つかりそうだぞ・・・」


「わかてっるって・・・全く・・・面倒なジジィどもだよ・・・」


頭を抱え、溜め息を吐く


「これを付けろ。」


「何?これ?」


「俺様が作ってやった、神力制御装置。これで手前ぇの居場所もわからねぇだろ。」


そう言って観世音が差し出したのは一つのブレスレット。


「えぇ〜〜〜、折角元の姿に戻れたのに・・・また金髪?」


「我慢しろ・・・姿が違けりゃ彼奴等もわからねぇだろ・・・」


「わかったよぉ・・・観世がそう言うなら・・・」


渋々ではあるが、は素直に受け取り、右腕にブレスレットをはめた。瞬間、の姿が変わった。


「あれ?金髪じゃない・・・?」


短くなっていない自分の髪を持ち、は呟いた。


「しかも赤いし・・・どう言う事?観世?」


「神の力は封じたが、妖怪の血は流れてるからな。赤い髪と瞳になるんだ・・・」


ま、そうなるようにしたのは俺だけどな。と呟く観世。


「・・・悟浄とおそろい・・・」


半分涙混じりの声を発する


「俺とおそろじゃ不満な訳?チャン?」


「メッチャ不満。」


「酷い・・・ι」


大げさに落ち込む悟浄を横目には観世音を見た。


「ま、とりあえず、さんきゅ。観世。」


「俺に出来ることはこれぐらいだからな・・・」


一瞬、悲しげな表情を見せる観世音だが、次の瞬間、真剣な表情になった。


、気をつけろよ。」


「観世・・・?」


「玄奘三蔵。を頼んだ。」


「は?何で俺が・・・」


三蔵が言った時には既に観世音の姿はなかった。


「観世・・・」


「あの神様は何考えてるんだかさっぱりわかりませんねぇ・・・」


溜め息混じりに発せられた八戒の言葉。


「昔からだし。ちっとも変わってないや。はいはい、今日はこの辺でお開きにしよう。私疲れたし。」


両手を叩きながらは言った。


「そうですね・・・そうしますか。」


「三蔵、次の出発何時?」


「・・・明日だ。しっかり起きろよ?。手前ぇは昔から寝起きが・・・」


「解かってるって。じゃぁね。皆。」


そう言い残し、は部屋を出て行った。


「三蔵・・・さん寝起きが悪いんですか?僕、起こしに行きましたけど何とも・・・」


「・・・知らない方が身の為だ・・・ι」


過去に何をされたのか、三蔵は冷や汗をかきながら言った。



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