数十分後、リョーマが風呂から出てきた。
「料理できたよ〜〜〜。」
「・・・これが作ったのか?」
テーブルに並べられた和食の数々。焼き魚に煮物、味噌汁に真っ白いご飯。
「もち。これでも一人暮らししてたから。」
見た目はがさつな男に見えるのにと呟きながらリョーマは椅子に腰をかけた。
「俺の手料理だ。心して食え。」
「・・・・いただきます。」
そう言うと味噌汁を一口口に含んだ。
「ど?美味いか?」
「・・・・・・・・・」
お椀から口を離し、固まるリョーマ。
「美味くなかった?」
「・・・・・メッチャ美味い。何これ?マジでが作ったのか?信じらんない。料亭の味みたいな。」
一気に言うリョーマには微笑んだ。
「よかった。『不味い』とか言われたらどうしようかと思った・・・」
そう言うとは立ち上がり、キッチンに向った。
「は食わないの?」
「俺は良いや。腹減ってねぇし。」
「ふ〜〜ん・・・」
そう言うとリョーマは凄い勢いで食べ始めた。
「・・・・雨降りそう・・・」
不意に窓の外を見たリョーマは呟いた。
「マジ?明日の部活どうなるんだよ・・・ι」
グランドが雨で整備が出来ないと、体育館での練習を余儀なくさせる。
「ま、大丈夫じゃないの?多分。」
ご飯を食べながらリョーマは呟いた。
「別に良いけどさ・・・体育館の練習で・・・」
が言いかけた瞬間、窓の外が光った。数秒も経たない内に大きな轟音が鳴った。
「雷・・・近い所に落ちたみたいだな・・・・」
の返答を待っていたが、何も言ってこない彼女を不審に思い、リョーマはキッチンへ向った。
「?どうした?」
彼女はしゃがみ込み、両肩を抑え小刻みに震えていた。
「・・・」
「こないで!!!!」
近付こうとしたリョーマはビックリした表情で足を止めた。
「大丈夫・・・だから・・・何でも・・・無い・・・から・・・」
の声は確かに震えていた。そんな彼女に関わらず、また雷は鳴った。更に身を小さくする。
「嫌・・・嫌だ・・・」
「?」
やはり心配なのか、リョーマはに近付いた。その瞬間、また外が光り轟音が鳴り響いた。
「リョー・・・マぁ・・・」
彼の名を呼ぶと、はリョーマに抱き付いた。
「・・・!!」
「暫く・・・・このままで・・・いさせて・・・・後で・・・話すから・・・」
泣きじゃくるの頭を撫で、彼女を安心させようとするリョーマ。
「ありがとう・・・」
ふっと力が抜けたように、は倒れこんだ。
「!!」
咄嗟に片腕で彼女を抱える。
「・・・・寝てる?」
既に寝息を立てている彼女を見て、リョーマは溜め息を吐いた。
「全く・・・仕様がないな・・・」
を抱きかかえると、そのまま彼女の自室へ向った。
ベットへを寝かせ、リョーマも自室へ向おうと立ち上がったが、に服の裾を握られ動けなくなった。
「・・・?起きてんのか?」
「ごめん・・・リョーマ・・・少しだけ傍に居て・・・」
震える声で言われ、リョーマは諦めたようにベットの淵に腰を降ろした。
「ありがとう・・・」
力無く微笑む。
「少しぐらいなら構わないよ。」
そう言いながらの頭を撫でながら微笑んだ。嬉しそうに目を細める。
「リョーマ・・・さっき俺、一人暮らししてるって言っただろう?」
「あぁ、言ってたね。」
「雷が苦手なのも理由があるんだ・・・」
は天井を見ながらポツリと話し始めた。
「俺がまだ小さい頃・・・」
――雷の日・・・だったっけ・・・
俺はリビングの片隅で小さくなってた・・・
リビングの中央には切り刻まれた母親と父親・・・
目の前には包丁を持った人・・・
雷の光で、それが誰だか解かった・・・――
「俺は・・・両親が殺されるのを見てるしか出来なかった・・・」
の頬に一筋の涙が流れた。
「俺の両親を・・・殺したのは・・・実の・・・兄だった・・・」
――昨日まではあんなに優しい兄だったのに・・・
凶変したように両親を殺した・・・――
「そして・・・兄貴は・・・俺まで・・・殺そうと・・・した・・・」
――俺に向って振りかざされる包丁・・・
咄嗟に俺は、兄貴に背を向けた・・・――
「今でも・・・俺の背中に残ってる・・・この傷跡は・・・一生・・・消えない・・・」
――首筋から腰まで伸びた傷・・・消そうにも消えない・・・――
「やっと忘れかけてたのに・・・何でかな?また思い出しちゃった・・・」
「・・・」
リョーマはに覆い被さるように抱き締めた。
「リョ、リョーマ・・・?」
「強がる必要なんてないんじゃない?苦しくなったら吐き出せばいい。」
「・・・ありがとう・・・リョーマ・・・」
暫く泣いた後、泣きつかれたのか、は眠ってしまった。
「・・・おやすみ・・・・・・」
そう言い残し、立ち上がろうとした。
「え・・・?」
に手を捕まれ、部屋を出れなくなっていた。
「・・・・マジですか・・・ι」
額に汗をかき、仕方なくまたベットに座った。
「ま・・・いいけど・・・」
そう言ったリョーマの表情は何処となく嬉しそうだった。
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