「ただいま。」


「あ、お帰り。リョーマ。」


はエプロン姿でリョーマに近付いた。


「何やってんの?」


「南次郎さん達出かけちゃって、夜まで帰ってこないから俺が料理してんの。」


言い終わるとは食事の支度をする為、またキッチンに戻った。


「あ、リョーマ。お風呂沸いてるから先に入っちゃいな。」


「わかった。」


GAME4: 記憶


数十分後、リョーマが風呂から出てきた。


「料理できたよ〜〜〜。」


「・・・これが作ったのか?」


テーブルに並べられた和食の数々。焼き魚に煮物、味噌汁に真っ白いご飯。


「もち。これでも一人暮らししてたから。」


見た目はがさつな男に見えるのにと呟きながらリョーマは椅子に腰をかけた。


「俺の手料理だ。心して食え。」


「・・・・いただきます。」


そう言うと味噌汁を一口口に含んだ。


「ど?美味いか?」


「・・・・・・・・・」


お椀から口を離し、固まるリョーマ。


「美味くなかった?」


「・・・・・メッチャ美味い。何これ?マジでが作ったのか?信じらんない。料亭の味みたいな。」


一気に言うリョーマには微笑んだ。


「よかった。『不味い』とか言われたらどうしようかと思った・・・」


そう言うとは立ち上がり、キッチンに向った。


は食わないの?」


「俺は良いや。腹減ってねぇし。」


「ふ〜〜ん・・・」


そう言うとリョーマは凄い勢いで食べ始めた。


「・・・・雨降りそう・・・」


不意に窓の外を見たリョーマは呟いた。


「マジ?明日の部活どうなるんだよ・・・ι」


グランドが雨で整備が出来ないと、体育館での練習を余儀なくさせる。


「ま、大丈夫じゃないの?多分。」


ご飯を食べながらリョーマは呟いた。


「別に良いけどさ・・・体育館の練習で・・・」


が言いかけた瞬間、窓の外が光った。数秒も経たない内に大きな轟音が鳴った。


「雷・・・近い所に落ちたみたいだな・・・・」


の返答を待っていたが、何も言ってこない彼女を不審に思い、リョーマはキッチンへ向った。


?どうした?」


彼女はしゃがみ込み、両肩を抑え小刻みに震えていた。


・・・」


「こないで!!!!」


近付こうとしたリョーマはビックリした表情で足を止めた。


「大丈夫・・・だから・・・何でも・・・無い・・・から・・・」


の声は確かに震えていた。そんな彼女に関わらず、また雷は鳴った。更に身を小さくする


「嫌・・・嫌だ・・・」


?」


やはり心配なのか、リョーマはに近付いた。その瞬間、また外が光り轟音が鳴り響いた。


「リョー・・・マぁ・・・」


彼の名を呼ぶと、はリョーマに抱き付いた。


・・・!!」


「暫く・・・・このままで・・・いさせて・・・・後で・・・話すから・・・」


泣きじゃくるの頭を撫で、彼女を安心させようとするリョーマ。


「ありがとう・・・」


ふっと力が抜けたように、は倒れこんだ。


!!」


咄嗟に片腕で彼女を抱える。


「・・・・寝てる?」


既に寝息を立てている彼女を見て、リョーマは溜め息を吐いた。


「全く・・・仕様がないな・・・」


を抱きかかえると、そのまま彼女の自室へ向った。




ベットへを寝かせ、リョーマも自室へ向おうと立ち上がったが、に服の裾を握られ動けなくなった。


・・・?起きてんのか?」


「ごめん・・・リョーマ・・・少しだけ傍に居て・・・」


震える声で言われ、リョーマは諦めたようにベットの淵に腰を降ろした。


「ありがとう・・・」


力無く微笑む


「少しぐらいなら構わないよ。」


そう言いながらの頭を撫でながら微笑んだ。嬉しそうに目を細める


「リョーマ・・・さっき俺、一人暮らししてるって言っただろう?」


「あぁ、言ってたね。」


「雷が苦手なのも理由があるんだ・・・」


は天井を見ながらポツリと話し始めた。


「俺がまだ小さい頃・・・」




――雷の日・・・だったっけ・・・


俺はリビングの片隅で小さくなってた・・・


リビングの中央には切り刻まれた母親と父親・・・


目の前には包丁を持った人・・・


雷の光で、それが誰だか解かった・・・――




「俺は・・・両親が殺されるのを見てるしか出来なかった・・・」


の頬に一筋の涙が流れた。


「俺の両親を・・・殺したのは・・・実の・・・兄だった・・・」




――昨日まではあんなに優しい兄だったのに・・・


凶変したように両親を殺した・・・――




「そして・・・兄貴は・・・俺まで・・・殺そうと・・・した・・・」




――俺に向って振りかざされる包丁・・・


咄嗟に俺は、兄貴に背を向けた・・・――




「今でも・・・俺の背中に残ってる・・・この傷跡は・・・一生・・・消えない・・・」




――首筋から腰まで伸びた傷・・・消そうにも消えない・・・――




「やっと忘れかけてたのに・・・何でかな?また思い出しちゃった・・・」


・・・」


リョーマはに覆い被さるように抱き締めた。


「リョ、リョーマ・・・?」


「強がる必要なんてないんじゃない?苦しくなったら吐き出せばいい。」


「・・・ありがとう・・・リョーマ・・・」


暫く泣いた後、泣きつかれたのか、は眠ってしまった。


「・・・おやすみ・・・・・・」


そう言い残し、立ち上がろうとした。


「え・・・?」


に手を捕まれ、部屋を出れなくなっていた。


「・・・・マジですか・・・ι」


額に汗をかき、仕方なくまたベットに座った。


「ま・・・いいけど・・・」


そう言ったリョーマの表情は何処となく嬉しそうだった。




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